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太平洋クラブ御殿場コースの評価が高い理由

野洲明ゴルフ活動家

実際にプレーしてみて良かったゴルフ場ランキング1位

2022年5月14日号の週刊ダイヤモンドが独自に行った調査による、ゴルフ場支配人266人、読者・ウェブ回答者673人の計939人からの回答をまとめた「ゴルフ場ランキング」が発表された。そこで太平洋クラブ御殿場コースが「実際にプレーしてみて良かったランキング」1位に輝いた。

日本全国にある名コースを抑えて1位に輝いた理由はどこにあるのだろうか。“トーナメント開催コース”は他にもあり、どこも名コース。その中で1位に輝いたのには、御殿場コースというよりも太平洋クラブ全体に理由がありそうだ。

太平洋クラブの評価が高い理由

太平洋クラブは全国に18のコースがある。その総来場者は約67万3000人で、売り上げは約88億3000万円だった。それが2021年はコース数は変わらずに、来場者数が約83万2000人、売り上げが123億6000万円になった。

ここまで売り上げを伸ばしたのは、2012年に経営破綻し民事再生手続きをした太平洋クラブをパチスロのマルハンが買収をしたことが大きなきっかけになった。

マルハンで築き上げられたサービスマインドを各セクションに落とし込むだけでなく、太平洋クラブの代名詞でもある御殿場コースのコースメンテナンスのノウハウを全国のコースでより高い水準で共有したのだ。

意外に思われるかもしれませんけれど、コース管理で手間がかかるのはグリーンよりもむしろバンカーです。バンカーの砂をきれいに掃いておくと、ゴルフ場はしまって見えます。京都のお寺の石庭みたいな役割がある。

グリーンの仕上げで技術と経験がいるのはコースに18個あるグリーンのすべてを同じ速さ、硬さに合わせること。たとえば、男子トーナメントでは14フィートというのがいちばん速い値ですけれど、そして、他のグリーンが13フィートだとしたら、誤差を0.5フィート以内に合わせなくてはならない。ただし、14フィート以上にはしません。
プロの感覚だと、1フィート違うとパットの感覚が狂います。そこで、13.5から14にするために、ローラーをかけ、グリーンの刈り込みの高さを0.2ミリ単位で調整して、全ホールきっちり測定して、速さと硬さを合わせます。

私はグリーンキーパーの命は手だと考えています。たとえば、手のひらで芝を触ります。芝の上がザラザラしていると、ボールははねる。手のひらで触って、つるつるであればボールははねない。グリーンの面がきれいに出てるかどうか、それは触ってみないとわかりません。
普段からグリーンの面を感じるのは見た目、匂い、触った感じです。機械でチェックしたりするのが、現代のグリーンキーパーの姿みたいなところがあるんですけど、結局、自分の手で触って感じてみないとわからないことなんです。

このように各コースのグリーンキーパーが、野地秩嘉著「名門再生 太平洋クラブ物語」内で語っているように、職人的な経験と技術によって成立しているのが太平洋クラブなのだ。

11月10日三井住友VISA太平洋マスターズが開幕

男子プロゴルフツアーでは毎年秋に三井住友VISA太平洋マスターズが開催される。昨年の同大会の最終日最終組では、最終18番ホールのグリーン横のビーチバンカーで観客が沸くシーンがあった。優勝争いからは後退していた選手だったが、ビーチバンカーから見事なショットをしてみせたのだ。

御殿場コースのグリーンキーパーは言う。

ビーチバンカーのメンテナンスは水を抜いてから砂の高さを取り直します。砂が少なければ足し、多ければ取る。砂全体を同じ高さにしてからまた水を入れるという作業になるんです。そうして、ボールの上部3分の1が出るくらいにする。私たちは通常でもその状態をなるべく維持するようにしています。普通の営業でも、御殿場の18番のビーチバンカーから球を打ちたいというお客さまがいらっしゃいます。みなさん、子どもみたいになって水の中のボールを打ちます。それを見ていたら、『よし』って気分になりますよ。

三井住VISA太平洋マスターズは明日11月10日に開幕する。今年も18番ホールで、特別なシーンが太平洋クラブ御殿場コースを舞台に見られるかもしれない。今回は50周年記念大会で全日無料で観戦できるようだ。出場選手のプレーを見るためだけでなく、芸術的な御殿場コースの雰囲気に包まれに行ってみてはいかがだろうか。

三井住友VISA太平洋マスターズ公式サイト:https://msvt-masters.jp/

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ゴルフ活動家

スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとに、論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。

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