癖が直ると全体のバランスが一度崩れる 世界陸上銅メダリストも言う上達の過程で起こること【ゴルフ】
ゴルファーの多くが自身のスイングに何らかの課題を抱えている。スマホがあれば練習場でスイングを撮影してチェックできるため、自分なりの要改良点を把握しやすくなった。
明確に課題を抱えているゴルファーは、それを練習で直してスイングの進化させようとする。
ただ多くの場合、ここで問題が生じる。直そうとすると良いショットになる確率が下がる。
こうなった場合、選択肢は2つ。そのままスイング改良を続行するか、改良を一旦あきらめて元のスイングのままにするか。
改良点の見定めが的確であることが条件になるが、たとえショットいう結果に表れなくても、スイング改良を続行した方が良い。せっかく進化するきっかけを掴んだにも関わらず、それを自ら放棄してしまうのはもったいない。
スイングに関する新しい意識が体になじんでくると、以前よりもショットの精度や再現性が上がってくる。眼前の1球の‟結果”に翻弄されずに課題と向き合えるかが、上達に向けての大きなポイントになる。
より良いスイングと、良いショットは切り離して考える
スイングが良くなったら、その後すべてのショットが今までよりも良くなるかと言えば、そうではない。
スイングが良くなった場合、すぐにショットも良くなることもあるが、スイングが良くなるタイミングと、ショットが良くなるタイミングに時間差が生まれる場合もある。ショットが良くならない、ではなく、悪くなる場合だってある。
スイングが良くなることと、ショットが良くなることは‟イコール”ではないのだ。
だからスイングを改良するにはある程度の覚悟がいる。課題について理解、納得したのであれば、ショットが良くならなくても、仮に悪くなったとしても、「スイングの内容が良ければOK!」として、そのスイング改良や改良したスイングを継続したい。
世界陸上銅メダリスト為末大氏が語る‟癖”の特徴
2001年と2005年の世界陸上400メートルハードルで銅メダルを獲得した為末大氏の著書「熟達論」には以下の通り書かれている。
ゴルファー個々のベースになっているスイングのエラーは、悪い癖。それを良い癖に変えるのがスイングを良くするということだ。
ただ、為末氏も言っているように一つの局面の動きを変えるということは、全体の流れに影響を与える。その変化がスイング全体に対してすぐに良い影響を与える場合もあれば、すぐにはスイング全体がその変化に呼応しない場合もある。
為末氏はこうも言っている。
癖というのは無意識にしていることだから、癖を変えるというのは、根気強さがが必要。ただ、良い癖が無意識化された時、これまでに体感したことが無い世界が待っているはず。
良い癖を無意識に表現できるようになった時、ゴルフのとらえ方やゴルフ場の見え方が変わっているだろう。
どんな良いショットもエラーをエラーで補っている
そもそも、良いショットにもスイングエラーは生じている。エラーの調和、エラーとエラーの掛け算が見事にはまった時に良いショットになる。
これはツアー選手でも同じ。彼らが放つ最高のショットも基本的にはエラーをエラーで補っている。
ただツアー選手は、ベースになっているスイングのエラーの個数が少なく度合い小さい。よって、スイングのリズムやテンポが乱れ、エラーの調和が不完全でも、結果に表れるミスの度合いは最小限に抑えられる。
一方、一般ゴルファーはツアー選手に比べてエラーの個数が多く度合いが大きい。よって、エラーの調和をとることが難しく、リズムやテンポ次第で大ダフりやOBなど、ミスの度合いが大きなものになる。
上達のためにはベースになっているスイングのエラーをなくしていくしかない。悪い癖を良い癖に変えていく取り組みが不可欠なのだ。
悪い癖の数や度合いを抑えると、抑えられたが故に一時的にエラーの調和がとりづらくなり、良いショットになる確率が下がる場合がある。
それでも、スイングを撮るなどしてスイングの内容が良くなっていることが確認できれば、その取り組みを継続するべき。
ゴルフは「誰でもツアー選手みたいなショットを打てる時がある」のが楽しさの一つだが、一方、それが難しくしているとも言える。
スイングの良し悪しとショットの良し悪しは適度に切り離して考える。これが、長い目で見た時に効率良く上達するポイントになる。
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上達のプロセスは5段階 為末大 著「熟達論」(GOLFERS SUPPORT)