【川崎市川崎区】老舗人形工房でいただくかき氷=「けずり氷」に教わる、余すところあるがゆえの美しさ
本日は、生憎の雨でしたがみなさまいかがお過ごしでしたか?
こういう日、琵琶の弦は湿気をはらんで少し伸びてしまうのですが、そういうときこそ「稽古のし時」、楽器の音の良さを自分の力量と勘違いしないでストイックに音を探り当てていく作業ができます。
稽古前の午前中にお邪魔した人形工房はやしやさんでも、とっても素敵なインスピレーションをいただいたので、ぜひシェアしたいと思います。みなさまが気になっている「けずり氷」の情報とともに!
人形工房で、かき氷
先日、Facebookに美味しそうなかき氷の写真が流れてきて、ああ、もうそんな時期か、美味しそうだなあ…食べに行きたいなあ、と眺めていました。しかし、よくよく読むと、そこには「人形工房」の文字が。
人形工房で、かき氷!?
いったいどういうことなのか、気になって矢も盾もたまらず、取材の申し込みをさせていただきました。
訪れたのは雨の土曜日。
天候もあって、すいていたのでゆっくりお話を伺うことができました。
大正12年創業のお人形やさん
人形工房はやしやさんは、大正12年創業の歴史あるお人形屋さんです。もともとは市役所通りに店を構え、お人形の小売として始まったそうなのですが、三代目にあたる小林誠さんが店を受け継ぎ、人形作りから手がける人形工房と形を変えて営まれています。
こちらが、三代目当主・小林誠さん。
自らお人形を作るようになった経緯をお話しいただきました。
「大学生くらいのときには、まだお店を継ぐことは漠然と捉えていたんですが、卒業後にお店に入って実際に働いてみると、自分は売ることよりも作ることの方が向いていると思うようになりました。お店でお世話になっている職人さんのところで一から人形作りを学びました。」
神は細部に宿る
日本の伝統工芸は、たいてい分業なのだそうですが、小林さんはお人形の顔まわりを担当するのだそう。「瞳を入れるときはいちばん気を遣います」とおっしゃっていました。
結髪師さんが結ったお人形の髪の部分とご自身があつらえた冠についても説明をしていただきました。この髻(もとどり)の細かい部分、見てください。
「男雛の冠は、掛緒(冠を固定するひものこと)で固定されているものが多いですよね。でももともとは、髻は冠を固定するために結ったもので、その形を再現してあります」
手の部分も、持笏(じしゃく)と言われる実際に笏(しゃく)を持つ手を再現してありました。量産品だと男雛と女雛の手を兼用して作ってしまうところもあるらしいのですが、こういうところに、本物の美しさが現れるのだ、と改めて思わせていただきました。まさに、神は細部に宿る。
ゆっくりと、とても丁寧にお人形のことを説明してくださる小林さん。
とても話がわかりやすくて「なるほど」と思うことばかりでした。
男の子の節句に飾る兜も
「最近は名のある戦国武将の鎧かぶとが人気ですよね。でも実は、その頃になると戦いも弓矢以外のものから守るために、性能を上げる必要があるので、見た目はあまり美しくなくなってきます。それに比べて鎌倉時代のものは、大将が自分の威勢を見せつけるために身に纏ったものなので、造作が美しいんですよ」
はやしやさんに置いてある鎧、かぶとはほとんどが、鎌倉時代のものをモチーフに作られていました。確かに、紐の色合い、使われている布地の絵柄、鍬形のフォルムまで、文句のつけようがない美しさ。
最近は、マンション住まいで飾る場所もないからと、子供が生まれても雛人形や鎧兜を買わない家も増えていますね。でも、もともとどうして人形や兜を飾っていたのか、その意味を小林さんは伝えていきたいといいます。
「節句には、現代の人たちが忘れかけている大切な学びがたくさんあります。人形を大切にする気持ちは、ものを大切に扱うマインドを育ててくれますし、実際に手をかけて作られた工芸品に触れて、それを飾るという特別な時間を、子どもたちにも体験してほしいと思います」
本当に、その通りですね。
日本の季節ごとの行事を子どもの成長とともに味わう、節句をきちんとお祝いすることは、子どもにとっては新鮮な学びであり、大人にとってはこれまでの人生で取りこぼしてきたかもしれないものを拾い、見つめ直す大切な時間となるのだと改めて感じました。
初正月用の羽子板も豊富に
「初正月」と言われて、ん?なにそれ、と思う方も多いと思います。私も実際、お祝いしてきませんでした。江戸時代までは、個人の誕生日を祝う習慣はなく、お正月にみんな一斉に歳をとったのですね。
初正月は子どもにとって初めての誕生日という意味合いもあり、また新生児の生存率が今に比べると格段に低かったこともあり、よくぞ2歳になるまで育ってくれた(数え年だったので、生まれた日=1歳、初めての正月に2歳になると数えた)という思いでお祝いしたのです。
男の子には破魔弓を、女の子には羽子板を贈る習慣がありました。
歌舞伎の「三姫」のひとり、八重垣姫の羽子板も。(女の子いないけど…欲しい!!)
歴史の物語をモチーフにしたものが多く、琵琶弾きのわたしの心を激しくくすぐってくるものばかり。
ほんと、お人形は日本の季節を直に感じられるもので、今更だけど羽子板をお正月に飾ってみたいな、と思いました。
夏場の「けずり氷(ひ)のはやしや」
さて、そんなはやしやさんが、どうしてかき氷を?
「人形は冬〜春にかけての季節商品です。夏場は製作期間になっているのですが、その間にも人形のことを知ってもらうのに良いのではと、人形店を営むグループで声がけがあり、提供することになりました」
確かに、一見ぜんぜん関係ないように思えますが、おなじ「和」の季節を味わう商品で、それぞれの良さを引き立て合えるものですね。これは、すごいアイディア!
かき氷、とは呼ばずに「けずり氷(ひ)」と呼びます。これは、清少納言の枕草子に出てくる言葉なのだそう。
はやしやさんでは、昨年から提供を始めているそうですが、徐々に知られ始めて人気に火がつく兆しがあります。小林さんは「ゆったりと提供できて、お人形をみてもらう余裕もあるのが理想です」とおっしゃっていました。本日私が小林さんから聞いたような話を、かき氷を目当てに来た方も聞けるといいな、と私も思います。
バオバブの氷
本日私がいただいたのは、こちら。
その名も「余白の美」!
メニューには通常メニュー(ミルク、いちごミルク、抹茶ミルク、白みつミルク、トロピカル)の他に、1日10食限定の「厳選スーパーフード使用 グレードアップバージョン」があり、これはそちらのメニューになります。
限定メニューは他にモリンガ、抹茶、ミルク使用の「氷庭の枯山水」と、アサイー、いちご、フランボワーズ、ミルク使用の「酔芙蓉」がありました。
もう、ネーミングが素敵すぎる…。
わたしが「余白の美」を選んだのは、自分自身の演技と演奏にいま、一番必要なものだったからです。がむしゃらに稽古して、力を篭めることはできる。でも、その力を抜いたときにふっとそこに立ち現れる美しさ、なにもないところにこそ表出するエネルギー、そいういったものを今、追求しているところでした。
小林さんのたたずまいにも、こちらのけずり氷の潔い白さにも、それがあった。
このただ白く見える氷の奥深さは、言葉では言い表せません。ぜひ実際に味わってほしいと思います。(特に食べていくに従って変わっていく味、最後に現れる驚きなど。)
なんだか、ほんとうに大切なものを教わった日でした。
小林さん、どうもありがとうございました!!余白の美しさを私がもっと表現できるようになったら、お店で琵琶を弾かせてくださいね。
けずり氷については、真夏になったらもう一度書くよ!
次は「氷庭の枯山水」や「酔芙蓉」も食べにきます!
読んでくださってるみなさま、けずり氷の詳細なレポートは、また盛夏になりましたら、お出しさせていただきます。どうぞお楽しみに!それまで待てないよ!って方は、以下のFacebookページから「けずり氷のはやしや」さんにアクセスして、ぜひ食べに行ってみてくださいね!
人形工房はやしや
住所:川崎市川崎区新川通3-10
電話番号: 044-222-4835
営業時間:10時~18時
アクセス:JR川崎駅より徒歩12分
公式HP:http://www.ningyo-hayashiya.com
(けずり氷のはやしやについてはhttps://www.facebook.com/hayashiya.shounagon.G )をチェックしてください