Yahoo!ニュース

クラフトビールのHazyMania、日替わりママの新城サカバー店主・土倉康平さん【武蔵小杉の素敵人】

Ash俳優・吟遊詩人(川崎市)

こんばんは!

武蔵小杉を中心に、川崎市内のトレンド&カルチャー情報をほぼ毎日更新しています、俳優のAshです。いつか酒場放浪記のプロデューサーに見つかって、琵琶を弾き歌いながら酒場をめぐる番組に出演するのが夢!(笑)

人情のまち・川崎の楽しいイベントや素敵なお店の情報が気になる方は、ぜひフォロー&チェックして下さいね♪

さて、最近「新城サカバー」および、セシーズイシイフェスについてご紹介したところ、結構な反響をいただきましたので、今回はみなさまが気になっている日替わりママの店「新城サカバー」や、元住吉のクラフトビールバー「Hazy Mania」を手がける、土倉康平さんのことをご紹介したいと思います。

以下の記事は、全てのモテたい人に贈る「モテ男のレシピ」というタイトルで東急スクエアさんの媒体「この街大スキ武蔵小杉」に以前書かせていただいたものです。今年10周年を迎えた東急スクエア武蔵小杉が手がけるこちらの媒体も、地域密着の素晴らしい取り組みをたくさんしているので、是非チェックしていただけると嬉しいです。

この街大好き武蔵小杉(東急スクエア)

中原おうちごはん主宰の土倉康平さん

2020年4月。コロナショックによる街のロックダウンがあり、人々は家に篭ることを余儀なくされ、飲食店は大きな打撃を受けました。

厳しい状況に対応するためにテイクアウトを始めるお店も多かったですが、その情報がなかなか利用したい人のところまで届きません。自分自身、もどかしい思いをしたという土倉さんは、SNSの力を借りて「武蔵小杉・元住吉・新丸子のテイクアウトできるお店と繋がるコミュニティ」を立ち上げます。

そのコミュニティはたちまち、2000人を超える人々が参加する大きなコミュニティとなりました。(現在そのコミュニティは「中原おうちごはん」と名前を変え、4600人が情報を交換し合うコミュニティとして成長中です。)

「つっちー」という愛称で、きめ細かい気配りをしながらコミュニティを運営する姿が評判を呼び、地元の飲食店を経営する方々からも、利用する方々からも注目され、一躍武蔵小杉エリアの時の人となったのでした。

その後、デジタル情報を手に入れられない人のために、コミュニティの有志と区役所との協働によって紙のテイクアウトマップを製作したり、市長との井戸端会議に呼ばれて意見交換をしたりと、その活動の場が地域へと広がっていきます。

明治大学のラグビー部で鍛えられた不屈の精神

そんな土倉さんは、明治大学のラグビー部出身という筋金入りの体育会系。ただの体育会ではなく、明大ラグビー部といえば、広い国立競技場を超満員にする名門の名門、生半可な気持ちで所属できるような部活ではありません。

「あの4年間でヤバいメンタルを手に入れました」といたずらっぽく振り返ります。「社会人になった後も、何がきても怖くないんですよ。肉体的にも、精神的にも辛いと思うことがない。」

きっと想像を絶する過酷な練習、厳しい上下関係にも耐え、今があるのでしょう。

しかし、鋼の肉体とメンタルを所有すると豪語する土倉さんに、実際に会ったことがある人はわかると思いますが、一般的に思い描く体育会男子のイメージよりも、だいぶ穏やかで社交的なのです。体格には当然恵まれていますが、人を威圧しない柔らかさがあります。

つい「どういう経緯を経ると、こういう人が育つのだろう」という興味がわいて、幼少期のことから根掘り葉掘り聞きだし、語っていただきました。

天国と地獄を味わう

「川崎市多摩区に生まれ、生田で育ちました。 一人っ子だけど、聞き分けが良くて反抗期がなかったと母が言ってました。幼稚園の頃は足がすごく速かったから第一回目のモテ期でしたね。みんなお嫁さんになりたいと言ってくれました。」

サービス精神満載でお話をしてくれた土倉さん photo by:岩田耕平
サービス精神満載でお話をしてくれた土倉さん photo by:岩田耕平

いきなりモテの話がきました。サービス精神旺盛です。(笑)

「小四まではサッカーをしていて、運動会でもスターだったんですが、とんでもない転校生が来て、すべての栄光を奪われました。悔しかったけれど、運動が好きな子ども同士気も合って、仲良くしていましたよ。一緒にテレビの運動会番組に出ました。中学校では陸上部でした。女の子がかわいかったから。」

ラグビー部時代の土倉さん
ラグビー部時代の土倉さん

その後、小学生の時に観た「スクールウォーズ」で憧れたラグビーをするために、明大附属中野高校に進みます。月曜以外は全部練習、土日は朝から夕方まで。「彼女ができても会えないのですぐに振られてしまいました」というトーンが「副キャプテンだったのですが、3年生の時は都大会の決勝で敗れて花園に行けなかったんです」というのと同じくらい、悔しさがにじみ出ていて、よっぽどだったんだな… としみじみ伝わります。

その後、いよいよ大学に進み、花のラグビー部で活躍する時が…と思いきや! 

「びっくりしましたよ。高校生ラグビーでトップだった日本代表選手が3人とも、明治に入学してきました。ああ、これはもう4年間レギュラーはないんだと悟りました。人間としてモノが違うということが、一瞬でわかる。」

レギュラーになれないラグビー部をやめることも考えた土倉さん。しかし…

「明治のラグビー部はすごくモテるんですよ。(笑)」

ニヤリと笑って、その一言で学生時代を総括。寮生活の制約、厳しい練習、そのあとにある楽しいコンパ。天国と地獄がいつも一緒にありました。商学部に進んでいたこともあり、大学の授業も持ち前の社交性と頭脳プレイでしっかりこなし、前代未聞と言われた就職氷河期にもかかわらず、当時話題になっていたゲーム製作会社へグラウンディング。面接で常務に気に入られて、その場で内定が出てしまった、というおまけつきです。

「でも、会社の所在地が中心地から遠かったので、いつもコンパに遅刻するんです。結果モテない時代がきちゃいました。」

お決まりの軽口をはさみつつ、ビジネスパーソンとしての怒涛の快進撃物語が始まります。

ゲームの宣伝はバグの話で盛り上げ、広告作りも「おもてなし」

新入社員の時にはビジネスの流れを勉強し、2年目には広報・宣伝系の部署へ。コンパで鍛えた話術が評価され、テレビ番組で自社ゲームを紹介する担当を振られます。

TVK制作の音楽バラエティ「saku saku」に出演すると、バトルシステムの話はつまらないだろうと、変なアイテムを使ったり、バグを延々と紹介したりするなど、独自の視点での話がディレクターに気に入られて、レギュラー出演者となります。当時、saku saku はまだ読者モデルとして登場したばかりだった木村カエラさんがMCを務め、番組としても人気が出てきた頃だったので、カエラさんとやりとりをする「つっちー」の姿を覚えている人もいるかもしれませんね。

「楽しかったんですが、こんなに楽しいだけの仕事をしていていいのか? と疑問が湧いてきました。もう少し、自分自身を試して成長しなければいけないと思い、転職を決めました」

新しい業種はアパレルに特化した広告代理店でした。そこで営業をやったことが、自分自身のキャリアの中では特に学びが多かったといいます。

「雑誌の広告を売るわけです。ただの紙を、多い時で2億円売ったんですよ。もちろんシェアの取り合いが発生していて、タイアップ記事とか、他の会社もやっていることをやっていたら勝ち抜けない」

その時土倉さんがとった戦略は、まさしく世の中の全ての男性に(いや、男女どちらにも)いますぐメモしてほしい「モテの極意」でした。

土倉さんは、プレスに同行する各社の担当者ひとりひとりを喜ばせたのです。冬の早朝に海辺でというロケだったら、温かい飲み物を用意して自分の車で迎えに行く。クリスマスやバレンタインなど、イベントシーズンの撮影だったら、担当者へもちょっとしたギフトを準備する。そのプレゼントのコツは「これ素敵だな、でも自分では買わないな」とみんなが思うようなものを選ぶのがいいんだそう。

多くの候補の中で、この人と仕事をしたい、と思われて、選ばれるための努力を怠らない。こうしてみると、それは土倉さんが幼少期から自然にやっていたことかもしれません。人が喜んでくれることを喜ぶ「おもてなし」の心、それが「おモテ」に成るための真髄だったのですね。

もっと喜ばせたい…「センスを右手、ロジックを左手に」

このような仕事を通じ、さまざまな企業と付き合ううちに、自分のもつ強みをいかに言語化して伝えられるか、ということを考えるようになりました。確固たるマーケティング戦略をもって事業をする側に惹かれ、29歳で再転職。再びエンタメの現場に戻ります。今度は、オンラインゲームのマーケッターとして働くことに。

そこでも、事前登録者が47万人を超え、業界で伝説となる「フライングゲットガチャ」をリリースするなど、経験を活かして華々しく爪痕を残す土倉さん。そのガチャも基本は「ユーザーにどうしたら喜んでもらえるか」ということが発想のきっかけになっているのだから、真性の「喜ばせ屋」と言っていいでしょう。

その会社で執行役員まで務め、経営のノウハウも学ぶことができたという土倉さんは、円満に会社を退社すると、2019年9月、自分の会社「SALT」を設立します。

SALTの社名について説明する土倉さん photo by:岩田耕平
SALTの社名について説明する土倉さん photo by:岩田耕平

社名の「SALT」は人間にとって根源的に必要な「塩」を意味すると同時に、「Sence And Logical Thinking」の頭文字である、ということで、初めて知った時には「いい名前ですねえ」と思わず言ってしまったほど。

アート作品を創る時にも、センスだけでは完成しないことがままあります。どうして自分にこれが必要だったのか、なぜ今これを創るのか、なぜ、こういう表現になったのか。自分自身に問いかけ、言葉にすることが必要だと常々考えていたので、センスに溢れていながら、ロジカルな「土倉節」には、感服することしきりでした。

「まずは本質が何か、ということ。それから、人でも物でもそうなんですが、強みを見つけることです。魅力と言い換えてもいいですね。それを最大限に引き出すためのコンサルティングをして、最後はセンスで実現する。そんな会社です。」

今まで仕事をしてきた都内ではなく、生まれ育った川崎で企業をしたのには、自分自身をロジカルに見つめた結果でもあったといいます。

「企業は結局グローバルで戦えるか、さもなくば徹底してローカルかの二択なんですよ。自分は英語も得意じゃないし、それならローカルで頑張る方が面白そうじゃないかと。川崎に住んでいる割には友達が地元にいなかったので、ローカルなコミュニティを作ってみたいという思いはいつもありましたね」

クラフトビールとキャンプ

そんなことを考えながら、川崎で企業をして、一年も立たないうちに前述の通りのコロナ禍となりました。土倉さんにとっては、思い描いていたローカルコミュニティを今こそ、という思いもあったのでしょう。スピーディかつセンスのある「中原おうちごはん」コミュニティが出来上がり、今でも盛り上がっているのは前述の通りです。

地域の中で仕事をし、コミュニティを運営する中で、大切なのは、自分を「タグ付け」して、「このことならこの人に」と覚えてもらうことだといいます。

土倉さんの「タグ」はクラフトビールとキャンプ。どちらも昨今、武蔵小杉界隈ですごく流行っており、早めに目をつけていたところにセンスを感じずにはいられません。

「もともとB.B.Q.が好きだったので、キャンプには興味がありました。自分のタグをキャンプにしよう、と決めてセールでグッズを大人買いしました」

土倉さんの愛用テントはノルディスクのコットンテント(しかもそれを大小2張に、スノーピークのテントを1張と、合計3張所有)。これらはグランピングサイトにあるような「映えるテント」で、まさに「タグ付け」を意識したお買い物です。

クラフトビールも自分を「タグ付け」できるものとして選択 photo by:岩田耕平
クラフトビールも自分を「タグ付け」できるものとして選択 photo by:岩田耕平

「クラフトビールの方は、もともと自分でお酒を作ることに興味があったんです。最初は泡盛を作れないかと考えて、いろいろな酒蔵を調べていたんですが、その過程で下北沢のバーでクラフトビールを飲んだ時に、スタイルがいっぱいあるのがいいと思いました」

その時はまだ、自分のSNSではクラフトビールの発信をしている人がいなかったので、少なくとも自分の界隈ではパイオニアになれる、と考えました。この考え方は実は、マーケティングではとても大切な考え方なんですね。エリアを絞って、発信すること

土倉さんと話すうちに教えてもらった付け焼き刃の知識ですが、マーケティングはまず、知ってもらうことが大切。そのために発信するので、自分が発信する時に苦にならないもの、楽しいものをタグに選ぶことが重要だそうです。

中原おうちごはんのコミュニティが短期で盛り上がったのも、武蔵小杉エリアという狭いエリアに限定して、テーマもテイクアウトに絞ったことが大きかったんですね。

コミュニティの中で夢を叶えていく秘訣

土倉さんに出会ったばかりの頃「プライベートキャンプ場を作りたいんです」と言われ、土地を買うのかな? そもそもキャンプ場なんて個人で作れるものなの? と思った覚えがあります。 それをなんと、土倉さんは1年半くらいの間に実現してしまいました。

先日、取材も兼ねてお邪魔させてもらったのですが、それが本当に使いやすくて、おしゃれでびっくり。地域で出会った方がたまたま伊豆高原に遊休状態の土地を持っていたこともラッキーだったのですが、トレーラーハウスを手に入れて、それをベースに水や電気などを整備して、SNSを利用して貸し出しのシステムを作り、運用に漕ぎ着けるという一連の仕事に関しては、まるで魔法使いの所業を聴いているようでした。

土倉さんの運営するプライベートキャンプ場「IZUKOGEN BASE」
土倉さんの運営するプライベートキャンプ場「IZUKOGEN BASE」

ビールの方でもその動きからは目が離せません。

元住吉にある「木月キッチン」は、私の記事でも何度か紹介している、美味しいご飯を出してくれる素敵なお店ですが、店主さんが足を痛めてしまい、毎日お店を開けられなくなっていました。そのあいてしまった時間である金曜日に、土倉さんはクラフトビールをセレクトして、みんなで飲むことができるコミュニティバー「Hazy Mania」を2022年11月にオープン

コミュニティの中には利酒師やソムリエがいて、とっておきの日本酒や日本ワインを仕入れてくれて、隔週の金曜日というレア感も伴って、毎回大盛況になっています。このようにして、身近な人の「困った」を助けることで、自分自身のやりたかったことを叶えていくのが、土倉さんの凄いところです。

クラフトビールバー「Hazy Mania」
クラフトビールバー「Hazy Mania」

「コロナ禍で始まったコミュニティだからオンラインで話すことに慣れているけれど、リアルに会える場がやっぱり必要だと思うんですよ。コミュニティのいいところは、みんなが発信者になってくれること。会って、体験して、楽しかったらそれを発信してくれるから、集客もいらない」

ついに、夢だったオリジナルクラフトビールの制作にも乗り出しました。先日のHazy Mania」で出資者を募り始めたら、いいペースで賛同者が集まっています。この分だと、春くらいにはみんなで作ったオリジナルのクラフトビールを飲むことができるのかな? こうしてワクワクしながら待つのも、コミュニティならではのお酒の楽しみ方ですね。

発信して、行動。その繰り返しですよ。そうすれば、面白そうだと思った人はどんどん集まって手を貸してくれるし、自分も楽しいんです。 次にしたいことですか? 飲食店っていうのは、利益率がどうしても低いんですよね。コミュニティで付加価値をつけて、飲食店の利益率をあげられるような実験もしてみたいな」

土倉さんはまた、コミュニティの中で新たな夢を見て、語ることに余念がありません。

夢を叶えるには「発信して、行動するのみ」という土倉さん photo by:岩田耕平
夢を叶えるには「発信して、行動するのみ」という土倉さん photo by:岩田耕平

「本音を言えば、コロナには少し感謝しているんです。あれがあったおかげで、地域にみんなの居場所を作ることに本気で乗り出せました。オンラインでのミーティングが一般化してくれたこともありがたいし、リアルで会うことの大事さも比べ物にならないほど腹落ちしています。もう、前の様式には戻れないし、戻りたくない。」

そう言って笑う土倉さんの本質は、どんなに強いライバルが現れても、争うのではなく、相手を支えて共に進んだり、逆境を楽しんで飛躍したりしてきた、幼少期や学生時代のものと変わっていない気がします。それは一貫して人を惹きつけ、一緒に何かをしたいと思わせる人間的な魅力を醸成し、ついにはウイズコロナの時代における、新たなヒーロー像となり、地域にモテの、いや、「おもてなし」の連鎖を生み出しているのです。

(2023年1月15日掲載)

Hazy Mania1周年イベントがあります

さて、上記の記事でもご紹介した木月キッチンの間借りバー「Hazy Mania」がこのたびめでたく1周年となります。

土倉さんは最近、ホルモンふたごのアンバサダーにも就任したらしく、それにちなんだイベントも入っています。

ほんとうに、常に新しいことにチャレンジしていて脱帽ですね。

そんな土倉さんに会いたいと思われた方は、ぜひ28日の18時半から、木月キッチンで行われているHazyManiaに行ってみてください。 

お初でも、「コミュ力お化け」の土倉さんが、しっかり対応してくれますよ。

HazyMania
住所:木月キッチン(川崎市中原区木月2-3-15)
開催日:第二、第四火曜日
時間;18時30分〜21時30分

また、先日プレオープンが大盛況だった新城サカバーは、12月上旬より本格始動の予定で鋭意準備中だそうです。

順調にいけば、私も12月7日にママとして立てれば、といろいろ用意していますので、ぜひこちらもチェックしておいてくださいね。

新城サカバー
住所:川崎市中原区上新城2-7-5 セシーズイシイ23 C-111
アクセス:JR南武線 武蔵新城駅より徒歩2分
公式インスタグラム:新城サカバー

俳優・吟遊詩人(川崎市)

琵琶を弾き歌う俳優です。世界80都市を旅した結果、日本文化を愛しています。旅と出会いと美味しいお酒がインスピレーションの源。MCアマビエちゃんはアマエビちゃんにメタモルフォーゼ。フラットで差別のない目線で記事をお届けしたいと思っています。Stay tuned!

Ashの最近の記事