ショートフィルム

伝説のバングラデシュ初女性サーファー「ナシマ」が、サーフボードを手放した理由

Bijon

映像作家

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<バングラデシュ初の女性サーファー・ナシマの葛藤>

イスラム教徒が88%を占めるバングラデシュで、初の女性サーファーとなった10代の女の子がいた。かつては、外国人だけがサーフィンをしていたバングラデシュ最大の保養地であるコックスバザールで、物売りをしていた少女ナシマ・アクテルは、ある日偶然出会ったサーフィンで頭角を現していく。自由の象徴として世界中のメディアの注目の的になった彼女に降りかかった悲劇とは……。

幼い頃から家計を支えるために、物売りとして育ったナシマが、サーフィンに出会ったのは、12歳のとき。外国人旅行者から教わり、すぐに頭角を現すと、ナシマは次から次へとサーフィンの大会で優勝し、バングラデシュ初の女性サーファーとしてのアイコンとなった。彼女はこれまでに4度国内で優勝。彼女の活躍は自由を象徴するものだった。しかし、ある時、そのすべての栄光が消え失せてしまったのである。いったい彼女に何が起きたのか? 

<貝殻を売る少女たち>

彼女の伝説は、コックスバザールで暮らす10代の少女たちに知れ渡っている。途切れることなく続く世界最長の砂浜に打ちつける美しい波を乗りこなそうと奮闘する地元の少女たちは経済的に貧しい層の出身が多い。一家の生活をその小さな肩に背負っている者も多く、海で集めた貝殻を市場で売っていた。社会的な制約や宗教的な壁にさらされ、「サーフィンをするような者は、嫁のもらい手がなくなる」という印象を社会から植え付けられている。女性が男性と一緒にサーフィンをすることは禁じられ、服装の決まりを破るものには軽蔑の眼差しが向けられる。

しかし、地元のサーフィンクラブの助けを借り、少女たちはナシマの背中をおって今ではビッグウェーブに乗るまでになった。サーフィンで生計を立て、家族を養っている者もいるほどだ。彼女たちのサーフィンでの活動はスポーツの枠を超え、抑圧的な伝統社会との闘い、さらには人間としての尊厳を守るムーブメントとなった。

<妻、母、そしてサーファーとして生きる夢>

この作品では、サーフィンをやめた後のナシマ・アクテルを追っている。結婚から2年が経ち、母親になったナシマは、友人やサーフィンとは距離を置いた生活を送っていた。夫がナシマの友人たちを好まず、疑いや嫉妬の目を向けてきたからだ。ナシマとサーフィンをしてきた友人たちとは太い絆で結ばれている。7歳の時からビーチで貝殻のアクセサリーを共に売って暮らしてきたのだ。夫への愛とサーフィンへの情熱との間で板挟みになりながら、彼女はつらい生活を送っていた。経済的に苦しくなるにつれ、夫は徐々に暴力を振るうようになった。そしてナシマは家を出て、離婚を求める決意をした。

自由を手に入れたナシマは再び友人たちと過ごすようになる。全国チャンピオンになるべく、サーフィンも再開。そして、いよいよ待ちに待った日。再起をかけた全国大会の初日がやってきた。彼女は久しぶりに、大勢の観客の見守る前でサーフィンを行う。しかし大会の終盤、ビーチに現れた夫にサーフィンをやめるよう説得され、彼女は夫とともに家に戻ってしまう。自由の象徴とされた彼女でさえ、型にはめようとする伝統的な社会の大きな力には勝てなかった。

現在ナシマは2人の子を持つ母親として専業主婦をしている。彼女がいなくなった後もここではサーフィンが行われているが、今でもナシマの心の片隅には、コックスバザールのビーチでサーフボードに乗って波乗りをしている自分がいる。

クレジット

Original title: "Nasima"
Directors: Bijon & Arif

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