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都会の秘境「鶴見線」は鶴見駅ホームから見どころ満載だった

ぼっちのazumiさんマニアックひとり旅ライター

鶴見線といえば、「国道駅」や「海芝浦駅」といったちょっと変わった駅を有する都会の秘境線です。その名の通り、始発駅はJRの「鶴見駅」。JR京浜東北線や京急線から鶴見線に乗り換えるところから、秘境線の旅は始まります。

そんな、鶴見線を楽しみに来る人はだれもが通る鶴見駅。しかし私は気づいてしまいました。

みんな、鶴見駅の鶴見線ホームを見逃している!!!

どのブログを見ても、紹介されているのはたいてい「鶴見駅の先」の話です。かくいう私も、何度も鶴見線に訪れていながら、鶴見駅をじっくりみたことはありませんでした。

今回はそんな、「意外と見逃している鶴見駅の鶴見線ホーム」をご紹介します。

鶴見駅には境界がある

にぎわう改札
にぎわう改札

鶴見線を知らない人が初めて鶴見駅を見たら、けっこう栄えた明るい駅という印象をもつのではないでしょうか。実際、土日のお昼にこれだけ改札前はにぎわい、駅ビル商業施設の「CIAL鶴見」も混雑していました。

カラフルな幾何学模様でかわいいトイレ案内
カラフルな幾何学模様でかわいいトイレ案内

ここまでは至って普通の都会の駅。横浜市内にある駅だと言われたら、まさにイメージ通りのハイカラ具合です。

……さて、きらきらした改札を背にして進みましょう。

黒ゾーンから秘境へ
黒ゾーンから秘境へ

ここ!!これが「きらきら鶴見駅」「秘境鶴見駅」の境界線です。

昔は同じJR駅内にもかかわらず、改札があったんですよね。そのころはもっと「別の駅」感があって面白かったんですが、これはこれで「知らないうちに魔界に入った」感があって趣深いです。

改札からここまで階段なし。地続きでいきなりホームというのも珍しい。
改札からここまで階段なし。地続きでいきなりホームというのも珍しい。

いざ、鶴見線ホームを観察

本記事の主役はあくまで鶴見駅の鶴見線ホーム。いよいよ本題に入りましょう。

ホーム全体はこんな感じ。秘境線にしては意外に広々としています。そして屋根もあるのがうれしいです。そもそも鶴見線は鶴見の工業地帯沿いで働く人々のためにあるので、鶴見駅から各駅へ出発していく労働者のことを思えば、このくらいの設備は当然なのでしょう。しかしよくよく見るとあちこちに古さと哀愁が漂っていて、鶴見線らしさがそこにあります。

「担架」の看板は、新しいものと古いものが掛かっています。古い方は旧字体でしょうか。さび付いてまっ茶色です。

ホームの奥へ進むと……

なんだ???こんな階段あったっけ??

これまで何度も鶴見線探訪をしてきましたが、ホームに階段があったことに一度も気づいていませんでした。今日は晴天だからか、この先がイヤに真っ暗に感じます……。行ってみましょう。

なかに入れば案外暗くない
なかに入れば案外暗くない

あちこちに禁煙の張り紙
あちこちに禁煙の張り紙

ボロボロにはがれた壁
ボロボロにはがれた壁

やたら「禁煙」アピールのすごい通路を抜けると、反対側のホームにでました。そんなにここでこっそりタバコを吸う人が多いのだろうか……。

反対側のホームから鶴見線の先を望む
反対側のホームから鶴見線の先を望む

いつも片方のホームのみ電車が発着している印象でしたが、反対側のホームはラッシュ時などに使われているんでしょうか。私が行っているのは土日の昼間なので、当然使われることもなく、反対側にわざわざ行く人なんて誰もいませんでした。

反対側のホームに来てまず目に飛び込んだのが「つるっく」。2022年の10月にデビューしたばかりの鶴見駅キャラクターらしいです。こんなに古びた鶴見線の、誰もいないほうのホームに、生まれて0年目の新キャラクターが貼られているなんて。アンマッチにもほどがありすぎて素敵です。

つるっくの下にあるのは木造のベンチ。おそらく昭和のころからあるのでしょうか。最近では見ない腰掛けの低さです。古すぎてガタが来ているのか、テープで補強してあります。

端っこに腰かけてみました。「みしいっ……」と鈍い音がしたので、おそるおそる体重の半分くらいを乗せています。やはり普通のベンチと比べてかなり低い。足が余ります。昭和から平均身長が伸びて、だんだん世の中の椅子が高くなってきているのでしょうか。

ベンチの先にはこれまた古く、大きな時計が掛かっています。しかも、ただの時計ではなく、戦時中に鶴見にいた朝鮮人の帰国事業にあたり贈られたという歴史的なもののようです。「皆さんお元気で」というメッセージはなんだか暖かい。苦労はあっただろうけど、それでも鶴見は素敵な街だったのかもしれないと思わせてくれます。

時計の先には、きれいな年表が貼られています。なんと鶴見線は2010年で80周年!ってことは、2020年の時点でもう90周年じゃん!更新はしないのでしょうか。7年後には100周年。楽しみです。この年表、もっとたくさんの人がいる入口側のホームに置けばいいのになと思いました。

年表を読み込むと、女性専用車があったり、時差通勤のモデル地区となったりと、現代の通勤電車のベースがすでに昭和の時代でできていたことを感じさせます。当時はなかなか先進的な路線だったんじゃないでしょうか。

また、「海水浴場前駅」があったんですね。行ってみたかったなあ海水浴。

ホームにはもうめずらしい、掲示板もおいてあります。

新しい画鋲もあれば、昭和から埋まっていそうな古びた画鋲もありました。

ホームの奥には線路の起点と事務所が。

あれ……ここ反対側のホームに渡れるな!?

左:人の多い改札側ホーム、右:電車のほぼ止まらない奥のホーム
左:人の多い改札側ホーム、右:電車のほぼ止まらない奥のホーム

なんだ、こっちからぐるっと回れたんですね。どおりで階段のほうを使って反対側のホームに渡る人がいないはずでした。

事務所の前にはたくさんの観葉植物が。駅員さんの趣味?
事務所の前にはたくさんの観葉植物が。駅員さんの趣味?

そうして鶴見駅をぐるりと一周し、いつものホームから鶴見線の旅へ向かいました。

大好きな鶴見線のはずなのに、一度も見たことがなかった鶴見駅。はじめて行った反対側のホームは、見るべき価値のあるレトロスポットでした。

もしあなたが鶴見線探訪をするなら、ぜひその始発駅である「鶴見線鶴見駅」も見ていってください。始発駅から雰囲気は十分なはずですよ。

マニアックひとり旅ライター

ひとり旅、ひとり散歩が好きなライターです。観光ガイドに乗っていないような裏スポットや、日常では通り過ぎてしまうようなニッチな場所によく出没します。「知らなかった、自分も行ってみたい」と思ってもらえるような情報をお届けします!

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