【目黒区】食べることの大切さを教えてくれる「フジコさんのちゃぶ台」のお弁当
武蔵小山の目黒本町にある複合ビル「ミチノサキ」。その4階にあるレンタルスペース「PARUTA(パルタ)」では、毎週水曜日のランチタイムに「フジコさんのちゃぶ台」がオープンします。
主宰するのは、滋食研究家の藤きみよさん。藤さんのつくるお弁当は、体にも心にも優しいバランスごはんです
野菜を始め、食材のおいしさをしっかりと引き出し、ていねいに作られたお弁当は、地元の方からもこよなく愛され、毎週予約だけで完売してしまうほど。今回は「フジコさんのちゃぶ台」の藤きみよさんにインタビュー!
藤さんが滋食研究家を名乗る理由、そして「バランスごはん」を始めたきっかけや、食に対する思いなどをお話いただきました。
50代でデザイナーから食のプロフェッショナルへ転身、きっかけはご両親の介護
藤きみよさんは静岡県出身で、現在は目黒区在住。もともとは食品関係のメーカーにお勤めされており、パッケージデザインや商品企画などを行っていました。
独立して個人事務所を立ち上げたのは40代の時。パッケージデザインだけではなくグラフィックデザイナーとしてパンフレットやチラシなど幅広く手掛け、活躍されていました。
順風満帆のように思えた藤さんのキャリアに影を落としたのがご両親の介護。まずはお母さまの糖尿病が悪化してしまいます。
通院のサポートや食事療法など、次第に介護に時間が取られるようになっていった藤さん。その後、お父様の介護も重なり、締め切りのあるデザイナーとしての仕事を続けるのが難しくなってしまいました。
ご家族が立て続けに体調を崩してしまったのは、「食べているものが悪かったから」からではないかと感じた藤さん。一念発起して栄養士の資格を取ろうと考え、なんと50代で女子栄養短期大学へ入学します。
「大学では主に西洋医学の考え方から健康や栄養について学んだので、東洋医学的な視点も欲しいと漢方についても学びました」と藤さん。
漢方上級スタイリストの資格も取得して、食について多角的にバランスよくアプローチできる知識や技術を身につけたそうです。
藤さんが探求するのは食の「地味な滋味」、だから「滋食研究家」
藤さんがご自身のことを「滋食研究家」とおっしゃっているのはなぜでしょうか?
「私が作るお弁当は「インスタ映え」ではなく「インスタ萎え」。その代わり、からだ(細胞)にすっとはいっていく、野菜たっぷりのバランスごはんです。
食生活から社会を健康に、を理念に、地味な滋味を探求しているので滋食研究家というわけです」と藤さん。
でも、私から見ると彩りもしっかりと考え抜かれた、自然の恵みがいっぱいのお弁当に見えます。インスタ萎えどころか、ワクワクするような光景ではないでしょうか。
「フジコさんのちゃぶ台」が誕生したきっかけは、ミチノサキオーナーとの出会い
そんな藤さんが「フジコさんのちゃぶ台」を始めたきっかけは、地元飲みをしていた時に知り合ったミチノサキオーナーからのお誘いだったそうです。
オーナーの奥さまが「西小山ラウンジ」というバーを経営されおり、日曜定休だったため、そこでランチのお店をやらないかと声をかけられ、スタートしたのが「フジコさんのちゃぶ台」でした。いまでいえば「シェアレストラン」ですね。
「フジコさんのちゃぶ台」は少しずつ口コミで広がり、西小山・武蔵小山周辺にお住まいの方々から支持を集めていきます。
自宅でご両親を介護しながら、食の大切さを伝えつつ、体にやさしいバランスごはんを作るお料理教室や、自宅2階でサロンを開き、一日一組限定の「ちゃぶ台(レストラン)」を開催してきました(現在はコロナ禍ということもあり休業中)。
「西小山ラウンジ」は藤さん以外にも様々な方に日替わり店主として貸し出し、日本酒バーや燻製バー、英会話教室などが行われ、地元の方々が気軽に交流できる場となっていきました。
舞台は「西小山ラウンジ」から「ミチノサキ」へ、ご近所交流はさらに広がります
その後、2020年3月に複合ビル「ミチノサキ」がオープン。西小山ラウンジで繋がった縁は、ミチノサキへと舞台を移します。
ミチノサキビル開業に合わせてオープニングイベントを行い、藤さんも腕を振るう予定でしたが、コロナ禍で中止に。翌年、12月25日(土)に第1回目の交流イベントとして「ご近所クリスマス会」を開催しました。
ミチノサキテナントの方々、オーナーとご縁を結んだ方、ご近所の方々などが集まり、賑やかな1日に。私もちゃっかりとお邪魔して、おいしいコーヒーや焼きマシュマロなどを堪能。
藤さんはイベント当日、4階PARUTAで「フジコさんのちゃぶ台~ほっこりおでん~」を提供。子どもから大人まで熱々のおでんで温まりました。
素材の味を活かしたやさしいお出汁で炊いたおでん。滋食研究家の藤さんらしい、優しくて心まで温まるおいしさでした。
「フジコさんのちゃぶ台」が提供するお弁当は「しみじみとおいしい」味わい
つい先日、私も「フジコさんのちゃぶ台」のお弁当を予約。武蔵小山のミチノサキまで取りに行ってきました。
写真ではなかなかわかりませんが、ともかくいろいろな種類の野菜がたっぷり使われています。自分でお料理してここまでの種類の野菜を使ったお弁当を作ることは、なかなかできません。
「食材はいつも20数種類ぐらいを使っています。味付けは5種類の麹調味料(塩・しょう油・たまねぎ・トマト・甘酒)をメインに使用。薄味がベースです。
その代わり飽きないように調理法(煮る・焼く・炒める・蒸すなど)を変え、味付けを変え、濃いめの味つけのものをアクセントとして入れています」と藤さん。
確かにどのお野菜も少しずつ違った食感・味わいで、気がつくともりもり食べてしまいました。
街のレストラン等で提供しているお料理の多くは味付けが主役で、素材本来が持つ魅力をなかなか感じることができません。藤さんのお弁当は野菜一つ一つの存在感がしっかりとあり、滋味深さが感じられる、まさにしみじみとおいしい味わいでした。
藤さんのこだわり、からだ(細胞)にすっと入っていき、健康をサポートしてくれる食事
藤さんのつくるお弁当、確かに野菜がメインですが、きちんとたんぱく質や炭水化物もしっかり摂れるバランスごはんになっています。
藤さんがこだわるのは「からだ(細胞)にすっと入っていき、健康をサポートしてくれる食べ物」。
実際にお弁当を食べてみて、しっかりとお腹に貯まり、腹もちがいいと感じます。でも、夜になるとお腹が空く。
実際に藤さんのお弁当を食べた方からも「消化が良く、お腹の調子も良くなる」と評判は上々だそうです。
最近、糖質制限でお米を食べないのが良いという風潮がありますが、藤さんのお弁当を食べてみて「ごはんも野菜だ」と感じました。
「糖質制限でごはんが悪者のようにいわれてしまいますが、お米だって土から生まれるもの。食べ過ぎが良くないだけで、いろんなものを少しずついっぱい食べれば良し。
一つだけ大好きなものが入っていれば、体も心も喜びます」と藤さん。
皆さんも一度食べたら、きっと藤さんのお弁当のとりこになってしまうこと間違いなしですよ。
目黒本町にあるシェア畑で自らも野菜作りに挑戦中
ミチノサキにもほど近い目黒本町にあるシェア畑。こちらは目黒区で初めてのオープンです。藤さんも現在、こちらで畑を借りて野菜づくりにチャレンジ中だそう。
「野菜づくりは初めてで借りている区画はたたみ1畳分ぐらいの広さ。しかし1人でやるとなると本当に大変だということを思い知らされました」と藤さん。
こちらの畑ではすべて無農薬・有機肥料にこだわり、野菜作りを行っています。2021年にオープンしたばかりなので土を耕すだけでも大変だったそう。
春夏秋までは順調に野菜を収穫できたそうですが、冬野菜がなんと全滅。農家さんの苦労が身に染みたといいます。
「野菜づくりをして感じたのは、生命力の強さです。きゅうりなどは1日10センチメートルも成長し、あっという間に収穫できるようになるんです。
昨年はトマトときゅうりが大豊作でお弁当にもたびたび登場しました」と藤さん。
藤さんが大切に育てた野菜が今年もお弁当にたくさん登場するかもしれません。楽しみですね!
コロナ禍で飲食店の営業が制約を受けたり、イベントが中止になる中で、細く長くよいご縁が続いているミチノサキと「フジコさんのちゃぶ台」。
藤さんの地味だけど滋養たっぷりのバランスごはん(お弁当)は、ミチノサキ4階「PARUTA(パルタ)」で毎週水曜日に数量限定で発売されます。このところ、事前予約で完売が続いていますので、食べたい方はお早めに予約しましょう。
藤さんのFacebookやInstagram、LINE(藤きみよで検索)などから予約できます。
新型コロナウイルス感染状況が落ち着いたら、「千葉や福島などで無農薬野菜を作っている農家さんとコラボして直売会やお料理教室をやりたい」とおっしゃっていましたので、そのときはぜひまた、取材でお邪魔したいと思います。
■取材協力
フジコさんのちゃぶ台(藤きみよさん)
【フジコさんのちゃぶ台・販売場所】
ミチノサキ4階・パルタ
営業時間:毎週水曜日、11時30分~13時
※売切れの場合は早めに終了する場合があります。
住所:東京都目黒区目黒本町 4-3-14
問合せ先:藤きみよさんのFacebook、Instagram