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【目黒区】映画「線は、僕を描く」が本日公開。その世界観を存分に楽しめるホテル雅叙園東京の展示会へ

Chikuwa地域ニュースサイト号外NETライター(東京都目黒区)

本日、2022年10月21日(金)から公開される横浜流星さん主演の 映画「線は、僕を描く」。横浜流星さん演じる、大学生の青山霜介はアルバイト先の絵画展設営現場で、水墨画に出会います。

(画像提供:ホテル雅叙園東京)
(画像提供:ホテル雅叙園東京)

深い悲しみの中にあった霜介は、巨匠・篠田湖山に声をかけられ【水墨画】を学び始めることになるのですが・・・というストーリー。監督は「ちはやふる」でメガホンを取った小泉徳宏監督で、原作はご自身でも水墨画を描く砥上裕將(とがみ ひろまさ)さんです。

(画像提供:ホテル雅叙園東京)
(画像提供:ホテル雅叙園東京)

そしてこの水墨画の世界と映画のワンシーンを体感できる魅力的な展示会「線は、僕を描く at 百段階段~色彩空間で観る水墨画の世界~」が、ホテル雅叙園東京で10月1日(土)からスタートしています。

豪華絢爛、きらびやかな色彩空間で、白と黒の水墨画が鮮やかに浮かび上がる

(C)砥上 裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」制作委員会
(C)砥上 裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」制作委員会

ホテル雅叙園東京の東京都指定有形文化財「百段階段」は、1935年(昭和10年)に建てられた旧・目黒雅叙園3号館に当たります。破格の豪華さといわれた宴会場7部屋を99段の長い階段廊下で繋いだ建物で、当時の一流画家や名工が創り上げた美の世界。

色彩豊か、豪華絢爛な文化財「百段階段」を舞台に、白と黒というモノクロの線が織りなす水墨画が置かれたとき、どんな風に化学反応を起こすのでしょうか。さっそく展示会に足を運んできました!

一筆に魂を込め、命を吹き込む水墨画の世界

最初のお部屋である「十畝(じっぽ)の間」では「水墨画の世界」がテーマ。水墨画の歴史や道具、技法などを紹介しています。

写真向かって左から「遠山雪」「寒山拾得」「江邊楼閣図」
写真向かって左から「遠山雪」「寒山拾得」「江邊楼閣図」

上の写真は江戸~明治期に活躍した画家の名作を展示。写真向かって左が下村観山(しもむらかんざん)「遠山雪」、中央が狩野芳崖(かのうほうがい)「寒山拾得」、右が橋本雅邦(はしもとがほう)「江邊楼閣図」です。

水墨画とはすべて下書きなしの一筆描き。やり直しがきかないため、墨との闘いといわれています。

墨を重ねると色が濁るため、水墨画ならではの透明感を表現するには、一筆一筆が勝負なのだそうです。

ガラス越しではなく巨匠の作品を間近に鑑賞できる機会はめったにありません。びっくりするほど繊細に表情豊かに描かれている水墨画の世界を始めて目の当たりにして、感激してしまいました。

実は黒だけではない墨の色、道具や技法に感銘を受けました

水墨画といえば白と黒の世界と単純に思いがちですが、実は墨をする硯や墨の原料によって微妙に色が異なるのだそうです。

墨の色は煤の粒子が光を反射することで見えるもので、煤の粒子の大きさで見える色が異なるのだとか。粒子が大きいと青く見えるそうで、小さくなるほど紫、赤、茶に見えます。

墨の粒子の大きさは硯ですった時に決まるものなので、硯を使い分けて色のバリエーションを出すこともあるのだとか。一級品といわれる虫の化石が入った「端渓硯(たんけいけん)」という硯も展示されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

筆と墨の使い分けだけで生まれる芸術(アート)「水墨画」

筆に墨をつけて描くといっても、筆の動かし方や墨をどのようにつけるのかによってもさまざまな表現が生まれます。

上の写真は「元隈」「方隈」「先隈」「両隈」「内脈」という5つの技法を紹介したもの。一筆で立体的に見せたり、奥行き感や物の濃淡などを鮮やかに浮かび上がらせるためにこのような工夫があるというのを初めて知りました。

また「摺筆」「刷筆」「直筆」「側筆」「潤筆」「渇筆」「割り筆」「心字点」という筆使いでより表現が豊かになります。

水墨画は「減筆」といって細かく描かないことで対象物を鮮やかに浮かび上がらせるのが特徴。観る人の想像力をかきたてるような空間を活かした描き方が魅力となっています

「勇鷹図」小林東雲
「勇鷹図」小林東雲

映画で水墨画の監修もされた小林東雲さんが、そのテクニックをわかりやすく表現した作品を今回の展示会で観ることができるので、そちらも合わせてチェックしてみてくださいね。

ちなみに「十畝の間」には映画「線は、僕を描く」で役者さんたちが使用した硯や筆、落款印も展示されています。ファンの方は必見です。

「漁樵の間」では映画のワンシーンを追体験、水墨画の基本を紹介

清原伽耶さん演じる篠田千暎(ちあき)作「竹」
清原伽耶さん演じる篠田千暎(ちあき)作「竹」

文化財「百段階段」の中で最も煌びやかな「漁樵(ぎょしょう)の間」では、映画「僕は、線を描く」の中で発足した「水墨画サークル」の作品を展示。水墨画の基本である「四君子」を描いた作品を展示しています。

四君子とは「梅」「蘭」「竹」「菊」4種類の植物。水墨画では、梅(力強く、すがすがしい表現)、蘭(しなやかで、やさしい表現)、竹(たおやかで、張りがある表現)、菊(気高く、かぐわしい表現)という基本的な筆使いが凝縮されており、これらを学ぶことで基本技法を習得することができるそうです。

原作者である砥上裕將さんの作品「クレマチス」
原作者である砥上裕將さんの作品「クレマチス」

そして「線は、僕を描く」の原作者である砥上裕將(とがみひろまさ)さんが描いた水墨画も床の間に展示されていました。作品の中では砥上さんご自身が水墨画を描く上で大切に思ってきたことがたくさん表現されています。

映画だけではなく原作にも触れ、水墨画の魅力や奥深さを感じ取ってみてはいかがでしょうか。

映画を観てから訪れても、観る前に訪れてもワクワク感が膨らむ「草丘の間」の展示

「草丘の間」では、「師の教え」というテーマで映画のキーになる作品を展示。青山霜介演じる横浜流星さんが、師匠となる篠田湖山(しのだこざん/三浦友和さん)との出会いシーンで登場する作品などをみることができます。

江口洋介さんご自身の手形が押された作品
江口洋介さんご自身の手形が押された作品

湖山の一番弟子である江口洋介さん演じる篠田湖峰が描いた「龍図」に落款代わりに押されている手形は、江口さんご自身のものだそうですよ。

そんなところにも注目してみてくださいね。

原作「線は、僕を描く」の世界に没入できる「静水の間」「星光の間」

映画の原作となった砥上裕將さんの作品「線は、僕を描く(講談社文庫)」は、2020年「本屋大賞」3位、2019年TBS「王様のブランチ」BOOK大賞を受賞。映画化される前から砥上さんのファンという方も多いのでは?

「静水の間」「星光の間」では、原作本や装丁、ご自身が描いた水墨画、マンガ化された作品などが展示されています。

砥上さんの「線は、僕を描く」は韓国や台湾でも出版されているとのこと。海外版の本も展示されていました。

いまそこに湖山が座っていたかのような、臨場感あふれるアトリエが再現された「清方の間」

「湖山のアトリエ」を再現
「湖山のアトリエ」を再現

「清方の間」の見どころは劇中にたびたび登場する「湖山のアトリエ」をこだわり抜いて再現した展示。小林東雲さんご協力のもと、愛用品なども貸出しているそうです。

湖山がさっきまでそこに座っていたかのような、息遣いや筆使いが感じられる臨場感あふれる展示となっています。

そしてこちらのお部屋には映画のストーリーで重要な作品も展示。映画を見た後にもぜひ立ち寄って、ご覧いただくとより一層楽しめるのではないでしょうか。

観た人はまた映画が観たくなる、「線は、僕を描く」の世界

(C)砥上 裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会
(C)砥上 裕將/講談社 (C)2022映画「線は、僕を描く」製作委員会

文化財「百段階段」の一番上にある「頂上の間」では、映画の予告編、メイキング映像、yamaによる主題歌のMVを上映。小林東雲さんが横浜流星さんを描いた特製掛け軸も展示されています。

映画のエンディングに登場する水墨画、出演者たちの落款印も特別展示。まさに映画の世界観にたっぷりひたれる内容となっています。

お部屋の中央には特別企画「短冊は、僕を描く」として、自分のなりたい未来、なりたい想いを短冊に描いて掲示できるようなコーナーも。

ぜひ皆さんも心に思い描いた決意や夢を一筆に込めてみてはいかがでしょうか。

今回、これだけの水墨画を間近にみたのは初めて。墨と筆で描き出す深淵な世界と静謐ながらダイナミックで雄弁な表現にすっかり魅了されてしまいました。

内覧会でおじゃました際、小林東雲さんのチャーミングなお人柄と、巧みなガイドにすっかり惹き込まれ、自分でも水墨画が描きたくなったぐらいです。

皆さんもぜひ「線は、僕を描くat百段階段〜色彩空間で観る水墨画の世界〜」に足を運び、水墨画と映画の世界を堪能してみてはいかがでしょうか。

「線は、僕を描くat百段階段〜色彩空間で観る水墨画の世界〜」開催概要
【開催期間】10月1日(土)から11月27日(日)、11時~18時(最終入館17時30分)※会期中無休
【開催会場】ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
※入場チケットは「ホテル雅叙園東京」のホームページから購入可能

■取材協力
ホテル雅叙園東京

地域ニュースサイト号外NETライター(東京都目黒区)

コピーライターからWebライターへ転身。アロマセラピスト・整体師としても時々活動しています。趣味はカンフー(八卦掌・長拳)と古代史。目黒区の魅力やおもしろいところを発信していきます。取り上げて欲しい目黒の穴場や情報もぜひお寄せください!

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