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【目黒区】「くさや」ってどんな味? 八丈島の島料理が楽しめる「源八船頭 中目黒店」で新メニューを実食

Chikuwa地域ニュースサイト号外NETライター(東京都目黒区)

皆さん、伊豆七島が東京都であるということを御存じでしたでしょうか。静岡県じゃないの、と思っている方も意外に多い様子。

それもそのはず、伊豆七島が東京都に移管されたのは1878年(明治11年)のこと。それまでは静岡県の管轄下にありました。

伊豆七島の中でも八丈島といえば、時代劇に出てくる罪人が流される島、もしくは(年がバレますが)山上たつひこさんの漫画「がきデカ」に出てくる「八丈島のキョン」というイメージしかなかった私。
仕事で以前、小笠原諸島・父島に行ったことがあるのに、伊豆七島にはどの島にも行ったことがありません。

「中目黒アリーナ」2階にある「源八船頭 中目黒店」
「中目黒アリーナ」2階にある「源八船頭 中目黒店」

今回、中目黒にある八丈島郷土料理「源八船頭 中目黒店」がメディア向けにお披露目食事会を開催。

3月から新メニューもスタートするということで、そちらをメインに試食させていただいてきました。

普段はなかなか食べる機会のない八丈島の郷土料理をいただいてきたのでご紹介していきましょう。

「源八船頭」は小岩が本店の老舗居酒屋

「源八船頭」の先代(画像提供:株式会社源八船頭)
「源八船頭」の先代(画像提供:株式会社源八船頭)

「源八船頭」は創業1980年。八丈島出身の先代夫婦が上京し、小岩でお店をスタートさせました。
5年ほど前に現在のオーナーがお店を引き継ぎ、八丈島の島の恵みを本場さながらに楽しめる希少な場所として2023年4月、中目黒に出店されたそうです。

お店の場所は中目黒駅から徒歩約1分。「中目黒アリーナ」の2階になります。

八丈島の特産品といえば「明日葉」「くさや」「焼酎」など

海に囲まれた離島である八丈島。最も水揚げ量が多いのはトビウオで、春を告げるおめでたい魚として「八丈春とび」と呼ばれています。

この他、金目鯛・メダイ・カツオ・鮪・ムロアジなどもよく獲れる魚であり、ニオイがキツイ珍味として知られる干物「くさや」は、青むろあじやとびうおで作られる有名な特産品です。

「源八船頭 中目黒店」のフードメニュー
「源八船頭 中目黒店」のフードメニュー

また「明日葉」は健康野菜として有名。別名「八丈草」とも呼ばれ、独特の苦みを持つセリ科の多年草です。

「今日新芽を摘んでも、翌日にはまた新しい芽が出てくる」といわれるほど生命力が強いことがその名の由来とされています(引用元:八丈島観光協会より)。

また、薩摩焼酎をルーツに持つという八丈島の島焼酎はあまり島外へ出回らないため大変希少。現在、焼酎を造っている蔵元が4軒あり、芋、麦、麦と芋のブレンドなど、各蔵元オリジナルの自慢の本格焼酎を製造しているそうです。

「源八船頭 中目黒店」のドリンクメニュー
「源八船頭 中目黒店」のドリンクメニュー

東京都とはいえ、離島ゆえに交通手段が限られる八丈島。独自に育まれてきた食文化・郷土料理を都内で気軽に体験できるお店はそう多くありません。

健康食材として有名な明日葉やニオイがキツイとして有名な「くさや」の存在は知ってはいるけれど食べたことはない、という方も多いのでは?
私もその1人です。

今回は3月からお店で提供をスタートさせる以下の新メニューを含め、名物の島寿司も試食させていただきました。

  • 長田商店のくさやとクリームチーズ
  • 明日葉のピリ辛にんにく炒め
  • 桜海老と明日葉のかき揚げ
  • 北海ダコと明日葉の酢味噌あえ
  • 島寿司

いったいどんな味なのか、八丈島の「食」をたくみに取り入れた「源八船頭」の魅力についてダイジェストでご紹介していきましょう。

わさびではなく、からしで頂くのが特徴、八丈島定番の「島寿司」

八丈島の郷土料理といえばやっぱり島寿司。元々は船で漁に出る際、鮮度を保つためにつくられたといわれています。

近海で獲れた旬の魚介類を醤油ベースのタレでヅケにし、わさびではなくカラシで食べるのが島のスタイル。島でわさびが栽培できなかったために、カラシで代用していたそうです。

お店でいただいた島寿司は4貫握った「ちょいと島寿司」というメニュー。普段使用しているお魚はマグロ、カジキ、ブリ(もしくはさわら)、メダイなどです。

メダイはなかなか手に入らないそうなので、市場に入荷したらすかさず抑えているとおっしゃっていました。

こちらの島寿司、やや甘めの味付けです。タレが甘いのかと思ったら、酢飯が甘いのだそう。

関西のシャリも甘めですが、八丈島はそれ以上に甘い。その分、ヅケのタレをしょっぱく仕上げて上手にバランスをとっていました。

わさびではなくカラシ、というのがまた新鮮。1つのお料理として完成されたおいしい一品になっていました。

爽やかな明日葉の苦味がよく合う「北海ダコと明日葉の酢味噌あえ」

北海タコと明日葉の酢味噌和え
北海タコと明日葉の酢味噌和え

3月の新メニュー、一品目は「北海ダコと明日葉の酢味噌あえ」。歯ごたえがありつつも身がやわらかい北海ダコと、爽やかな香りとほのかな苦みがおいしい明日葉を味噌のコクと酸味、甘味でバランスよく仕上げた一品です。

島寿司に使う魚を含め料理人さん自らが市場に足を運び、自分の目利きで仕入れを行っているとのこと。明日葉は八丈島の栽培農家・千葉さんと年間契約し、新鮮なものを毎日仕入れているそうです。

千葉さんの明日葉は茎が太く、しっかりしているのが特徴。栄養価を維持するため、同じ畑での輪作は避けて、丁寧に育てているそうです。

明日葉は苦くて食べにくいのでは、と思われるかもしれませんが、まったくそのようなことはなく、お酒のアテに最高です。明日葉のイメージががらりと変わりました。

八丈島のものは匂いが控えめで食べやすいと評判「長田商店のくさやとクリームチーズ」

長田商店のくさやとクリームチーズ
長田商店のくさやとクリームチーズ

二品目は「長田商店のくさやとクリームチーズ」です。長田商店は1979年創業で現在の店主さんは二代目。

くさやは「くさや液」と呼ばれる調味料に漬け込んだ後、塩分や「くさや液」を水に漬けて抜き、天日干しか乾燥機で干物にしたものです。
くさやは一般の干物よりも塩分濃度が低いのですが、「くさや液」に含まれるくさや菌(乳酸菌の一種)のおかげで長期保存ができるのが特徴。

「くさや液」は島で貴重だった年貢の塩を節約するために生み出されたのではといわれています。
塩干を作る塩水を捨てずに繰り返し使い続けていたところ、魚のたんぱく質をもとに発酵が始まり、「くさや液」が完成されていったようです(参照元:長田商店ホームページより)。

「くさや液」はお店や家庭により独自のものとして進化。古ければ古いほどよいとされ、ぬか床と同じようなものではないかといわれています。

今回初めてくさやをいただきましたが、思っていたよりも香りはマイルドです。ちなみに八丈島のくさやは他の島で作られたものよりも、食べやすいといわれています。

同じ発酵食品であるクリームチーズとの相性も抜群。塩分は控えつつも、かみしめるたびに旨味が口の中に広がります。

チーズにも外皮を塩水やお酒で洗いながら熟成させるウォッシュタイプのものがあり、製造方法がちょっと似ていると思いました。こちらも匂いが強いですが、とてもおいしいので、発酵食品とは面白いものです。

栄養価が高く元気がでそうな組み合わせ「明日葉のピリ辛にんにく炒め」

明日葉のピリ辛ニンニク炒め
明日葉のピリ辛ニンニク炒め

続いて三品目は「明日葉のピリ辛ニンニク炒め」です。明日葉の茎は硬めですが、さっと下茹でしておくと灰汁が抜け、油で炒めることでさらにクセが抑えられて食べやすくなります。

やわらかな食感で甘味もあるにんにく芽と、硬めの食感でほろ苦い明日葉の組み合わせがバランスがよく、ピリ辛な味付けでまたお酒が進むこと間違いなしですね。

海老の風味が最高「桜海老と明日葉のかき揚げ」

桜海老と明日葉のかき揚げ
桜海老と明日葉のかき揚げ

最後、四品目にご紹介するのは「桜海老と明日葉のかき揚げ」です。せり科の野菜は苦手、という方ならこちらがいちばんのおすすめ。

山菜も天ぷらにすると苦味が抜けて食べやすくなるように、明日葉のおいしさを気軽に実感してもらえるメニューなのではないでしょうか。

添えられている塩は2種類でグリーンの塩は明日葉塩だそうです。

サクサクの食感と桜海老の甘味、明日葉のうま味。少しクセのある野菜はやっぱり油との相性が抜群だと感じます。

明日葉の天ぷら
明日葉の天ぷら

ちなみに上写真は「明日葉の天ぷら」通常メニューです。写真ではちょっとわかりにくいですがかなりの山盛り。

しかし、カラっと揚がっていたのでペロリと食べられてしまいそうでした。今回試食させていただいた新メニューは1人で何種類も試食できるよう、小さめのポーションでの提供でしたので、通常メニューはもう少し量が多くなります。

希少な「AO-CHU」も置いてあった「源八船頭 中目黒店」

流刑地だった八丈島。八丈島の焼酎はこの流罪の歴史とも関わりがあったそうです。

時は1853年、鹿児島の商人であった丹宗庄右ェ門(たんそう しょうえもん)が琉球との密貿易(抜け舟)の罪で八丈島に。この時、八丈島では雑穀を使ったどぶろくが飲まれていたそうです。

庄右ェ門は島でさつま芋を作っていたのを見て、実家から蒸留器を取り寄せ、島民に焼酎づくりを教えました。これが八丈島の焼酎造りの始まりでした(参照元:八丈興発株式会社ホームページより)。

当時お米が貴重だったことから麦麹を使う製法が根付き、麦麹で仕込む芋焼酎という珍しいスタイルが定着したのだとか。その後、さつま芋の栽培が減り、芋麦ブレンド焼酎や麦焼酎を造り始めて、3種類の焼酎があるという独自の文化を持っているそうです。

八丈島で最も古い酒造は八丈島酒造(1915年創業)で、「八重椿」「島流し」「江戸駐」などを製造。八丈興発は1947年創業で「情け嶋」を製造しています。

「ジョナリ―」「黒潮」「黄八丈」で知られているのは坂下酒造。「島の華」「潮梅」は樫立酒造です。

また、取材でおじゃました時は幻の焼酎(島酒)といわれる青ヶ島の「AO-CHU(あおちゅう)」もありました。つい先日、NHKの「新日本風土記」で紹介されていた「東京島酒、もう一杯」で、八丈島や青ヶ島での焼酎造りを拝見しました。

青ヶ島では原料となるイモも、発酵に使う微生物も島内から調達。蒸した大麦にオオタニワタリという熱帯植物をかぶせ、真っ黒な麹を作っていたのが印象的でした。

普段なかなか口にすることのない東京の島酒を楽しめる「源八船頭 中目黒店」。近いうちにぜひ、おじゃましたいと思います。

■取材協力

株式会社源八船頭

【店舗概要】

源八船頭 中目黒店Rettyページ
営業時間:月曜~木曜 16時~23時30分/金曜・土曜 16時~24時/日曜 17時~23時、
※ラストオーダーは閉店の1時間前
住所:東京都目黒区上目黒1-23-1 中目黒アリーナ 2F
問合せ先:03-3659-6636

地域ニュースサイト号外NETライター(東京都目黒区)

コピーライターからWebライターへ転身。アロマセラピスト・整体師としても時々活動しています。趣味はカンフー(八卦掌・長拳)と古代史。目黒区の魅力やおもしろいところを発信していきます。取り上げて欲しい目黒の穴場や情報もぜひお寄せください!

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