「不安障害」は行動を学習することで改善?HSPがおちりやすい「不安」と「恐怖」について解説
こんにちは、精神科医しょうです。
不安障害には、突然強い不安を感じ発作が起こる「パニック障害」や人前での失敗が極度に不安になる「社交不安障害」、特定のものに対して強い恐怖を感じる「限局性恐怖症」、強い発作ではなく不安感が持続し、心身に悪影響を及ぼす「全般不安症」など、さまざまな病があります。
発症の引き金になっている原因は、はっきりとは分かっておらず、主なものとしては「環境的要因」「脳の働きによるもの」「性格的要因」「遺伝的要因」などが考えられています。
人は誰でも些細なことで、不安を抱くことがありますが、通常は四六時中心配していることはあまりなく、時間が経過すれば自然と意識しなくなるものです。
しかし、病を発症してしまう人の多くは常に心配や不安を抱き続け、心身に影響が出てしまいます。
今回は心配でたまらなくなる病「不安障害」について取り上げたいと思います。
「不安障害」の原因について
先述しましたが、不安障害を発症する原因ははっきりとは解明されておらず、一つの原因だけではなく、複合的な要因が重なり合い発症すると考えられています。
不安障害はうつ病やその他と病を併発して発症することも多く、さまざまな症状を抱えたり治療期間が長引いたりしてしまうこともあります。
また、本人には病気であるという認識が薄いため医療機関を受診しない人が多いことも病を進行させてしまう原因の一つです。
たとえば、社交不安障害の場合は、人前で話すことに極度の緊張をしてしまうというだけで、医療機関受診にはなかなかつながりにくいこともあります。
しかし、気持ちだけでは克服できないことも多く、恐怖を乗り越えることは難しいため、症状によっては薬物療法やカウンセリング等を通じて改善していくことがポイントとなります。
HSPにとっての「不安障害」とは?
人一倍、不安や恐怖を抱きやすいHSPは何らかの「不安障害」を発症しやすいと言っても過言ではありません。
HSPにおいても気質や性格、環境、脳機能によるものなど、発症要因は複数あると考えられます。
HSPが特に抱きやすい不安には、次のようなものがあげられます。
- 対人関係
- 将来のこと
精神医学では、対象のハッキリとしない漠然とした恐れの感情を「不安」、対象のハッキリした恐れの感情を「恐怖」と区別しています。
HSPがネガティブな感情を抱きやすい「対人関係」はどちらかというと「恐怖」に近いものがあるのかもしれません。
また、現時点で考えていてもどうしょうもない「将来のこと」については、漠然としていることが多いため「不安」と言えるでしょう。
HSPの中には、不安や恐怖を探してしまうクセが付いている方もいるかと思いますので、ネガティブな発想や考えが思い浮かんだ時は、可能な限り楽しみにしていることや成功している自分の姿を思い浮かべたりして、気持ちを切り替えてみましょう。
どうしても切り替えが難しい場合は、解決策を考えてみると、心が軽くなるかもしれません。
適応行動を「学習」することで症状を改善
不安障害を発症してしまった場合には、表れている症状や行動を修正していく必要があります。
数ある中の治療法の一つに不適応行動を修正する「行動療法」があります。
「行動療法」は人間の行動は「学習」することで症状の軽減を目指すことができるという考えが基礎になっていますので、適応行動を学習する、不適応な行動に対して学び直すことで心の回復にもつながるとされています。
どのような方法があるのか代表的なものを紹介したいと思います。
・レスポンデント条件付け
レスポンデントとは「反応する、応じる」という意味です。
いわゆる条件反応で、日本人の場合は梅干を見ただけで唾液が出ますが、今まで梅干しを食べたことがない外国人は唾液が出ません。
このようなレスポンデント条件付けを応用した方法で行われる行動療法としては、恐怖や不安を感じる場面をイメージさせリラックスした状態を作り出せるように訓練する方法や、不安や恐怖を起こす刺激に危険のない範囲で直面し、繰り返すことで不安を減少させる方法などがあります。
・オペラント条件付け
オペラントとは「自発的な」という意味です。
自発的な行動により、結果が伴うことでその行動が定着したり消失したりする現象です。
たとえば、レバーを押すとエサが出る箱の中にネズミを入れ、レバーを押してエサを出す行動を学習させるとネズミは自発的にレバーを押すようになります。
オペラント条件付けを応用した行動療法としては、子どもが好ましい行動をした時にシールを渡し、集まるとご褒美をあげるというような方法などがあります。
これとは逆に、ある行動を止めさせたい時にはその行動をしている間は反応せずにいると、特定の行動が徐々に減少していくと考えられます。
これらの行動療法を取り入れることで、不安や恐怖を和らげ、心身の回復につながると考えられています。
まとめ
今回は「不安障害」について取り上げてみました。
今行っている「行動」を学習するという視点に触れてみましたが、いかがだったでしょうか?
もちろん、一人で行うことは危険を伴う恐れもありますので、必ず専門家と相談しながら進めるようにしてくださいね。
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