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【その褒め方逆効果かも?】褒め方のポイントやコツを現役心理士ママが解説

えふママ*心理士臨床心理士・公認心理師

こんにちは!現役心理士ママのえふです。

今回は、前回に引き続き『褒め方のポイントやコツ』について、①褒めるタイミング ②具体的な褒め方 ③逆効果の褒め方 の3回に分けて解説させていただきます。

前回の記事では、“②具体的な褒め方”について、以下の4つをお話しさせていただきました。

  1. 子どもの行動を実況する
  2. 子どもと関連させる
  3. 親の気持ちを伝える
  4. (補足)質問をしてみる

(具体的な内容については、前回の記事をご参照ください)

今回は ③逆効果の褒め方 についてお話しします。

【この褒め言葉言っていませんか?】

皆さん、褒めるときどんな風に褒めていますか?

「すごい!」「頭いい!」「上手!」とばかり褒めていませんか?当てはまる人は少し注意が必要です。

大前提として、褒めることは“自分への自信”“チャレンジ精神”を育むためにとても大切です。ですが、実は逆効果になる褒め方があります。

逆効果になる褒め方”とはなんでしょうか。それはこの3つです。

  1. 能力・性格・結果だけ褒める
  2. 漠然と褒める
  3. 比較して褒める

それぞれ理由を説明していきます。

※最後に、私が最も大切だと感じていることを書いていますので、ぜひそこまで読んでくださると嬉しいです。

【NG褒め方1:能力・性格・結果だけ褒める】

例えば…「頭がいいね」「いい子ね」「上手!」という褒め言葉。

「頭がいいね」や「上手!」など能力や結果だけを褒めると、子どもは“頭が良くなくてはいけない”、“上手にできなくてはいけない”と思うようになります。

そうすると、「失敗したら褒めてもらえないかもしれない…」と、難しいこと・新しいことにチャレンジしなくなる可能性があります。

例えば、勉強中に難しい問題が出てきた場面。

“この問題難しそう…”
  ↓
“もし間違えたら「頭いいね」と褒めてもらえない”
  ↓
“解くのをやめておこう”

という風に考えて、チャレンジしなくなる可能性があります。これが怖いのは、このような思考を意識的だけではなく、無意識的に行ってしまうことです。

また、“結果=自分の価値”と考えるようになってしまうため、“結果が出なかった=自分の価値はない”という【結果主義】になってしまいます。

それと似たようなことが怒るのが「いい子だね」という褒め言葉です。「いい子だね」と言い過ぎると、"いい子でいなければならない""いい子でいないと褒めてもらえない"と、周りの目や評価を気にし過ぎる子になりやすい可能性があります。

このように、能力・性格・結果だけを褒めると、以下のようになる可能性があります。

・チャレンジをしなくなる
・結果主義になってしまう
・周りの評価を気にし過ぎてしまう

【NG褒め方2:漠然と褒める】

それはズバリ、「すごい!」という褒め言葉。

「すごい」と褒められ続けると、自分がどうして褒められているのかが分からないため、自信が育まれなくなる可能性があります。

児童発達学の研究者である島村華子先生は著書の中で「すごい」など、漠然と褒めることを『おざなりほめ』とおっしゃっています。

(参考:島村華子監修 てらいまき漫画 『モンテッソーリ教育の研究者に学ぶ子育てがぐっとラクになる「言葉がけ」のコツ 2021  株式会社KADOKAWA)

また、島村先生はこの著書の中で、『おざなりほめ』を繰り返していると、ほめられ依存になる可能性があると説明しています。

「すごい」と褒められ続けると、なぜ自分が褒められているかわからず、自信が持てないため、“「すごい」と褒められない=自分は褒められる価値がない”と考えるようになり、行動の基準が“褒められるか・褒められないか”になってしまうのです。

そのため、褒められないと「どうして褒めてくれないの!?」と不機嫌になったり不安になったりします。もしくは、本来は好きで行動していたものが、“褒めてくれないならしたくない”と、意欲や興味を失ってしまうこともあります。

私もついつい「すごいね!」と褒めてしまいますが、そのときに「すごいね」と言った後に「〇〇したんだね」と子どもがしたことを実況することを心がけています。

例えば、この間、2歳になったばかりの娘が、私に「見て!」とクレヨンのピンク色でたくさんのぐるぐるを描いた絵を見せてきました。それを見て、「わー!すごいね!ピンク色でたくさんグルグル描いたね!」と返しました。

私は、「すごいね」と褒めること自体は悪くないと思っています。その後に“なぜすごいと思ったのか”という理由を付け加えると、「すごい」という褒め言葉は『おざなりほめ』ではなくなると思っています。

【NG褒め方3:比較して褒める】

例えば…「〇〇ちゃんよりピアノが上手ね」など、誰かと比較して褒めること。

これを繰り返していると、常に誰か比較対象がいないと自信が持てない状態になってしまうだけでなく、“この人は自分より偉いからお世辞を言っておこう”や“この人は自分より貧乏だから無視していいや”など、人によって態度を変える人になってしまう可能性があります。

また、常に誰かと比較して、その人よりも上に立とうとするため、満足することができません。

例えば、テストの点数を誰かと比較して満足を得ようとした場合。

「テストの点数がクラスで1番だった」

「学年では5番目だった…。自分はダメだ」

「次のテストは頑張って学年で1番だった!」

「全国では150番だった…。自分はダメだ」

また、この【比較して褒める】という褒め方を兄弟同士で行ってしまうと、“きょうだい間葛藤”を引き起こしてしまい、兄弟に対して劣等感や嫌悪感を抱くようになってしまいます。

そのため、褒めるときには「Aちゃんよりすごいね」「お兄ちゃんよりできたね」など、誰かと比較せずに、「〇〇ができたね」とその子自身の頑張りだけを褒めるように意識してください。

【まとめ:言われて嬉しい褒め言葉5選】

以上、“逆効果な褒め方”について説明しました。

ここまで聞いて「じゃあもう二度とその褒め言葉使いません!」と思った方もいるかもしれませんね。ですが、そう思う必要はありません。

紹介した言葉「頭いい」「上手」「すごい」以外の言葉も使えば大丈夫です。色んな場面で使える【言われて嬉しい褒め言葉5選】を紹介します。

【言われて嬉しい褒め言葉5選】

  1. 素敵
  2. かわいい
  3. かっこいい
  4. 丁寧だね
  5. 頑張ったね

ぜひこれらの言葉を使って、褒め言葉のレパートリーを増やしていきましょう。

【さいごに:1番大切なこと】

褒めるときに1番大切なことは“あなたのことが大切だよ”“あなたのことが大好きだよ”という気持ちが伝わることです。どういうことかと言うと、どんなに素敵な褒め言葉を伝えても、気持ちが伝わらなければ意味がありません

子どもに気持ちをどのように伝えるのかと言うと、以下の3つです。

  1. 子どもと目を合わせる
  2. 子どもの名前を呼ぶ
  3. 子どもの行動を見る

1と2の行動(目を合わせる・名前を呼ぶ)は、子どもが”自分のことを大切にしてくれている”と感じることができる行動です。私たちも話すときに、目も合わせてくれないし、名前も呼ばす「おい」なんて呼んでくる人はイヤですよね。

また、これまで説明した「すごい」「上手」などの言葉は、子どもの行動を見ていなくても言える言葉なのです。子どもが何の絵を描いたのか分からなくても「すごい」という言葉は言えてしまいます。ですが、前回の記事で説明したように、子どものことを実況したり、子どもと関連させたりする言葉は、子どもの行動を見ていないと出てこない言葉なのです。

忙しい日々の中で子どもの行動をずっと見ておくことは難しいでしょう。実際、私も家事や仕事の傍ら、娘のことをずっと見ておくことはできません。ですが、娘が「見て」と言ってきたときは、可能な限り家事や仕事の手を止めて子どもの行動を実況したり質問したりしています。

また、褒めるのは特別なことではなく、子どもの日常の動作を実況したりすることも”褒めること”なのです。「ズボン履けたね」「おはようって言ってくれてありがとう」そんな言葉でいいのです。

“5分だけ”などわずかな時間でいいですので、子どもの行動を見る時間を確保するようにしてみていただけたら嬉しいです。

以上、逆効果になる褒め方について解説しました。

ぜひこれまでの記事を通して、みなさんがお子さんをたくさん褒めてくださるようになることを願っております。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

今回の記事が皆さんのお役に立ちますように…。

臨床心理士・公認心理師

\子育ての「困った」解決のヒントを発信/現在、1児の母として子育てをしながら働く、現役心理士です。これまで多くの未就学児~小学生のお子さんと保護者の方の支援に携わってきました(行政、医療、福祉などの領域で勤務し、年齢や診断の有無に関わらず多くの方々に関らせていただきました)。育児に困ったママパパの心が少しでも軽くなるお手伝いができればいいなと思い情報発信をしていきます。【保有資格】臨床心理士、公認心理師、学会認定の資格2種

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