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亡き母との最初で最後の片づけ。押し入れはお母さんそのものだった。

藤原友子小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

お正月が終わり、主人のお母さんが亡くなりました。大切な人との別れが突然やってきたのです。

家に残されたのは、お母さんのモノでした。

主人のお母さんは、田舎暮らし。家の畑で野菜を作り、旬の野菜を中心に料理し漬物を漬け、とにかくよく台所に立つ人でした。

また、季節に合わせ、衣類や寝具、床の間や玄関の飾りを入れ替える暮らしは、私にとっては、本当に新鮮で、結婚してから五感で四季を感じながら過ごす素晴らしさを知りました。

通夜の日、お母さんの棺に入れる洋服を妹と探すために、洋服がかかっている押し入れを開けたら、そこにはお母さんらしい、オレンジ系・水色系の華やかな明るい服が並んでいました。

それを見たときに、私は「うわ~!お母さんの色だ!お母さんだ」と思ったのです。

と言っても、その押し入れは2年ほど前に私が、お母さんと一緒に整えた当時のまま。

その頃はもう、入院はしていたけど、外泊をした時に、初めてお母さんから片づけを手伝って欲しいと言われ一緒に行ったのです。

お母さんの願いが詰まった、最初で最後の片づけ

でも片づけるといっても、私は、捨てることからはじめないし、捨てることは強制しません。

お母さんの場合は、退院したら「また友達とお出かけしたい」というのが一番の願いだったので、

友達とお出かけするときに、着ていきたい服を選んで、残す!と決めて、押し入れの洋服を片っ端から取り出し、一枚ずつ手にし、鏡の前で一緒に考えました。

お母さんの服は、もともとオレンジ系の服が多く、オレンジを着ると、顔色がパッと明るくなることに気づき、明るい色系の服を一緒に選び残していきました。

洋服を一枚一枚洋服を手に取って見ると

これは、柄があんまり好きじゃない
これは、お友達に褒められた服、
これは、毛玉がたくさんできたなあ
これは、もう小さいかもしれない

たくさんあるけど、洋服は一枚ずつ違うことに気づき、願いを叶えるのに必要な服を選びます。

思い出話をしながら、大好きな友達とのお出かけで着たい服を選ぶ時間は、とてもゆったり流れていきました。

しかし残念ながら、お母さんは自分で選んだ服を着て、再びお出かけをする願いを叶えることができませんでした。

残されたモノは、その人そのもの

「またお出かけをする」という願いは叶わなかったけど、押し入れの中は、お母さんが選んだ服ばかり。

お母さんはいないけど、お母さんの選んだ服が並ぶ押し入れは、お母さんそのものでした。

暮らしは、その人が選んだモノでできている、と私はいつも思っていますが、改めて感じた瞬間です。

ぐちゃぐちゃな服が押し入れに突っ込まれているだけだったら、どれがお母さんの大切な服かわかりません。

しかし今回、棺に入れる服は妹(お母さんの長女)が押し入れの洋服の中から選んでくれました。

それは、主人(お母さんの長男)が中学生の頃、初めてお母さんに買ったプレゼントの服。

お母さんが大切な服として残し、妹がすぐにその服の存在に気づき、棺に納めることができたのです。

残されたモノは、その人そのものです。手触りや匂いなどから、その人を感じるのです。

私は、最後に残された家族が「お母さんの大切なモノを知ることができた」ことに、少しだけ貢献できたのではないかと思い胸が熱くなりました。

「選ぶ」繰り返しが「生前整理」や「終活」になる

数年前に、知人が

親が亡くなり、家に片づけに行ったけど、大量のモノがあり、どれが大切なモノなのか全くわからなかった・・・。

と言っていました。

キレイに整えること、使いやすくすることは、とても大事なことです。とくに年齢を重ねてくると、散らかった家では転んでケガをすることもあるため、命を守るためにも整えることは重要ですが、やはりその人らしさの部分も大切です。

生前整理、終活という言葉があります。

私は、わざわざ行うものではなく、その人が本当に必要なモノを選び、残していく積み重ねが「生前整理」や「終活」になると思っています。

モノが増えると、つい「捨てる」に目が向きがちですし、そうしないとどうしようもならない現実も多々あります。

でも、自分が選んだモノが自分の暮らしを作り、それがやがて自分の人生を作ることになります。

「捨てる」ではなく「選ぶ」を意識することで、その人の思いや願いが詰まった、今の自分を大切にした片づけになるのです。

その人が選んだモノに触れる時が、その人らしさを知る瞬間

まだお母さんの家の片づけが残っています。きっと季節を感じ、家族や仲間にいつも囲まれて笑顔で過ごしたお母さんを感じることができる時間になるでしょう。

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選ぶ暮らしラボ 藤原友子(ふじわらゆうこ) 

1975年生まれ 大分県在住 結婚後片づけを始める。長男との片づけバトルでモノを「選ぶ」ことの重要性に気づき、モノや暮らしを「自分軸で選べる人」を増やすために活動中。

二男二女の母で「いつもキレイではないが、すぐに片づく家」で暮らしている。著書『片づけられない主婦と片づけ嫌いの子どもを180度変える本』

小中高4人の母/すぐ片づく暮らし

片づけのプロとして活動を始めたのに、自分の家は「片づけても、また散らかってしまう」という矛盾に悩む。家が散らかってしまうことを隠そうとしていたが、「いつもキレイじゃなくてもいい。何かあったときにすぐに片づく家にしておけばいい」と開き直り新たなメソッドを確立。 いつもキレイにしなくちゃいけない、もっと頑張らなくちゃいけない、そんなプレッシャーから解放され、もっと自由に、その人らしく生きるお手伝いを「片づけ」を通して行っている。著書『片づけられない主婦と片づけ嫌いの子どもを180度変える本』(マガジンランド)

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