ショートフィルム

自分の性を生きるヴィヴィアン佐藤さんのヘッドドレス〜「らしさ」にとらわれないあなた本来の姿とは? 

深田志穂

ビジュアルジャーナリスト

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まるで黒い蝶が舞っているようなアイライナー、満点の星空のようにきらめく青いリップスティック、カラフルなウィッグ(かつら)の上に乗っている巨大なヘッドドレス。初めて会う人は、ヴィヴィアン佐藤とは何者なのか、と興味を持たずにはいられないだろう。アーティスト、非建築家、文筆家、映画評論家、ドラァグクイーンなど、様々な顔を持つヴィヴィアンさんは、独自の奇抜ないでたちで、他人が型にはめようと押し付ける男らしさや女らしさ、あらゆる「らしさ」を超越してきた。そのスタイルで象徴的なのが、本人が「頭上建築」と呼ぶヘッドドレスである。

 ヴィヴィアンさんがヘッドドレスを作り始めたのは、約25年前にさかのぼる。大学時代にたまたまゲイバーのアルバイトを見つけ、そこで出会った人々の生き方に魅せられたことが転機となった。「男らしさ」や「女らしさ」に違和感を感じて飛び込んだゲイバー、ニューハーフクラブの世界だったが、やがてそこで求められる「ゲイらしさ」や「ニューハーフらしさ」にも居心地の悪さを感じるようになった。自分が本当にやりたいことはなんだろう……。そんな折に、ヴィヴィアンさんの名付け親であり、元祖ドラァグクイーンであったニューハーフクラブのママが背中を押してくれたのが、「らしさ」にとらわれない表現方法だった。「かつらも1つだけではなく、5つも6つも被って(頭を)大きくするとか、飛び超えるようなものをやるっていうことを教えてもらったような気がしますね。」ヴィヴィアンさんはやがて、あらゆるマテリアルを使った巨大なヘッドドレスを作り始めた。そして「ヘッドドレスは自分より自分らしいもの。中身の自分をちょっとだけ(外に)せりだしたもの」と感じるようになっていった。
 
 ヴィヴィアンさんの自宅を訪れると、文学・芸術から科学まで多種多様なジャンルの本が所狭と並び、話をすれば、その造詣の深さに唸らされる。多岐にわたる分野で活躍する今でも、そのエキセントリックな格好から、聞かれる質問は決まって3つあるという。

いつから始めたのか
何がきっかけで始めたのか
今までの交際相手はどんな人達だったのか

「みんな何か幼少期にトラウマがあったりとか、何か事件があったりって思いたいし、思わないと納得できない。だけどまあ特にそういうのはないんですよ」。ジャンルを超越したヴィヴィアンさんを、人はそれでもなんとか型にはめて理解をしようとしているのかもしれない。ヴィヴィアンさんは、質問した人に応じて、その人がわかりやすいような回答を用意しているそうだ。質問される内容で、質問者のものの見方が透けて見えてしまうのだろう。「世の中勘違いでできてると思いますよ」とつぶやいた。

「ヘッドドレスは被ってこれになるっていうことではなくて、本来の自分に戻る行為なんです」とヴィヴィアンさんは言う。そんなことを少しでも感じてもらえたら、と数年前からヘッドドレスのワークショップを一般人向けに行ってきた。これまでおよそ300人が参加してきた。参加者は、自由気ままにヘッドドレスを形作る時間を通して、自分と向き合い、何かを発見したり、感じたり、楽しんだりしてきた。参加者それぞれの作品を見ると、各人の意外な中身が少し覗けるようで興味深い。

「男らしさ」「女らしさ」「LGBTらしさ」……。私たちは様々な「らしさ」を無意識に感じながら生きている。ヴィヴィアンさんのワークショップは、本来の自分に向き合うこと、そしてジャンルや「らしさ」から自分を解放することの大切さを教えてくれるような気がする。

受賞歴

世界報道写真大賞マルチメディア賞受賞、エミー賞ノミネート、The Visa d'or - Daily Press Award at Visa pour l'Image Perpignan、
PDN Story Tellers Grand Prize、The Howard G. Buffett Fund for Women Journalists - Internatioanl Women's Media Foundation 他。

クレジット

深田志穂 Shiho Fukada

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