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【久留米市】久留米の音楽シーンを支える、とあるスタジオの物語

フカイエヒロルライター、エディター、クリエイター(久留米市)

久留米と言えばラーメン?焼き鳥?

いやいや、忘れてはいけないのが「音楽」です。

久留米出身のミュージシャンと言えば、鮎川誠(シーナ&ザ・ロケッツ)、石橋凌、松田聖子、チェッカーズ、マオ(シド)、家入レオ、植田真梨恵などが有名どころでしょうか。

久留米には多くのミュージシャンを輩出してきた土壌があり、その土壌を形成する要素として音楽スタジオがあります。

その1つが「ウエストポイント」、通称“ウエポン”です。

今回は、多くのバンドマンたちに愛され続けている“ウエポン”の現オーナー・ユーキャン氏に話を伺いました。

“ウエポン”とユーキャン氏の出会い

1987年、聖マリア病院近くの梅満町に“ウエポン”が誕生しました。

当時の“ウエポン”は練習スタジオ、レコーディングスタジオ、ライブハウスを兼ねた施設。

学生時代にバンドをしていた私もよく利用するスタジオの1つでした。

現オーナーであるユーキャン氏が“ウエポン”に出入りするようになったのは2003年頃だそうです。

「専門学校の友だちが“ウエポン”に行ってて、主催ライブのPA手伝いとして呼ばれたのが最初ですね。そうして通っているうちに、録音をまかされるようになりました」。

その後、2008年に“ウエポン”の店長になったユーキャン氏。

人懐っこく、面倒見も良い人柄で、多くのバンドマンたちに親しまれる名物店長でした。

しかし、2012年、“ウエポン”に激震が走ります。

“ウエポン”の名を残したい!

前“ウエポン”から引き継いだ扉。たくさん貼られたバンドのステッカーは“ウエポン”の歴史そのものだ。
前“ウエポン”から引き継いだ扉。たくさん貼られたバンドのステッカーは“ウエポン”の歴史そのものだ。

2012年7月、ユーキャン氏は前オーナーから“ウエポン”の閉店を告げられました。

当時のヒットチャートを振り返ると、アイドルやダンスグループの楽曲が多く、バンドはほとんど入っていない“バンド氷河期”。

様々な事情があっての決断だったと思いますが、こうした背景も影響していたのかもしれません。

閉店の話を聞いたユーキャン氏は、その日のうちに友人に相談。

「すぐに『“ウエポン”をやろう』『“ウエポン”を残したい』と思って、居抜きでスタジオができる物件を探し始めました」。

開業にあたって、前オーナーから独自に店名を付けることも勧められましたが、「“ウエポン”の名前に意味がある」と考え、店名を引き継ぐ許可をもらったのだそうです。

「現役バンドはもちろん、これまで通ってくれていたバンドマンたちが戻って来れる場所を残したかったんです」。

「今通っているバンドを待たせたくない」との思いから、とにかく最短でのオープンを目指して奔走した結果、前“ウエポン”の閉店から約1週間後の2012年8月26日、現在の“ウエポン”が誕生しました。

“ウエポン”が醸成する久留米の音楽シーン

スタジオは2室。音響環境の改善のため、近々内装工事を予定しているのだそう。
スタジオは2室。音響環境の改善のため、近々内装工事を予定しているのだそう。

新生“ウエポン”は、ライブスペースはなくなったものの、大きな鏡を設置してダンススタジオとしても利用できるようにしたり、写真・動画用の照明、背景を用意して撮影スペースとして利用できるようにしたりと、日々進化を続けています。

コロナ禍を経て、機材のレンタルや音響の仕事なども増えてきているそうです。

まだまだバンド人口が回復したとは言えない状況ですが、“ウエポン”とユーキャン氏を慕うバンドが練習やレコーディングに訪れています。

最近でも2つのバンドがレーベルとの契約を獲得し、もうすぐデビューすると嬉しそうに語ってくれました。

「レコーディングに来たバンドには、できるだけのアドバイスもしています。レコーディングをするってことは、やっぱりそれだけやる気があるということだと思うので。地方に住んでいても頑張ってればチャンスはある。そのチャンスを掴みたい子たちの力になれればと思っています」。

看板も前“ウエポン”から引き継いだが、老朽化のため新調。デザインはそのまま流用している。
看板も前“ウエポン”から引き継いだが、老朽化のため新調。デザインはそのまま流用している。

そして、今週10月22日(日)には、4年ぶりとなる主催イベント『BEAT LAND』を開催します。

「『BEAT LAND』は“ウエポン”の主催イベントとして、以前は月2回ほどのペースで開催していました。移転後も数回実施していましたが、今は積極的にブッキングを行っているライブハウスが他にあるので、バンドが『ライブをやりたい!』と言ってきたら、それに応えてブッキングするスタイルになっていますね」。

「今回の『BEAT LAND』は、コンテストでしか演奏経験がない高校生バンドや、趣味として楽しまれているオヤジバンドが出演します。バンドの刺激になるように、ガッツリ活動しているようなバンドもブッキングしていますが、『音楽・ライブを楽しむ場』『ライブハウスでライブをする経験』を提供するという意味合いが強くなってるかもしれないです」。

そんな今回の『BEAT LAND』の舞台は「久留米ウエポン」。

かつての“ウエポン”で育ったバンド・FULL MONTYのナオキ氏が運営しているライブハウスです。

ここにも“ウエポン”の遺伝子が受け継がれています。

プロ志向から趣味の音楽まで、久留米の音楽シーンを豊かにすべく、“ウエポン”は今日も奮闘しています。

ウエストポイント
【住所】久留米市東合川8-10-32
【電話番号】0942-65-8248
【予約受付時間】12:00~22:00
【定休日】無
【駐車場】有
【Instagram】https://www.instagram.com/kurume_westpoint/
【X(Twitter)】https://twitter.com/KurumeWestPoint

BEAT LAND
【日時】2023年10月22日(日) 開場15:30
【場所】久留米ウエポン(久留米市六ツ門町1-17 第18上野ビル4F)
【料金】チケット(前売1,400円・当日2,000円)+1ドリンク(600円)
【お問い合わせ】ウエストポイント(0942-65-8248)

ライター、エディター、クリエイター(久留米市)

各種印刷物のほか、ホームページや動画の制作、SNS運用サポートなどを行っています。 グルメだけではない、久留米の魅力を発信していきます。

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