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【ウルトラマンの元カノは悪女だった?】元彼に裏切られた超人達が悪の女王になった理由とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)と申します。

特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、大学より「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて、日々活動をさせて頂いております。

さて、7月に入りましていよいよ2023年も後半戦に突入しました。

七夕や夏祭り、花火大会といった夏季恒例催事に向けて、期待に胸を膨らませる方々もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回のお話しのテーマは、「ラブストーリー」です。

みなさまも映画やテレビ番組、Web配信等にて、男女間の純愛模様を描いたラブストーリーをご覧になられた方も多いかと思います。

北海道 小樽天狗山にて(2013年 筆者撮影)
北海道 小樽天狗山にて(2013年 筆者撮影)

国産映画においても数々の名作が発表されており、例えば2000年代は『世界の中心で、愛をさけぶ(2004)』や『電車男(2005)』、『恋空(2007)』等が公開されました。

フジテレビ系で2005年から2006年まで放送されたテレビドラマ『電車男』のDVDBOX(筆者撮影)
フジテレビ系で2005年から2006年まで放送されたテレビドラマ『電車男』のDVDBOX(筆者撮影)

このように、ヒューマンドラマの定番としてもお馴染みのラブストーリー。

・・・しかしながら、これらのラブストーリーはあくまで人と人との関係を描いた物語。

もし、人間を遥かに超越した神様のような人達同士が愛し合い、恋に落ちたら・・・?

その恋がもし悲恋に終わり、憎しみに狂った女神が自分を裏切った彼氏を殺しにかかったら?

人間だけでなく、このような神々の恋愛や愛憎を描いた物語も人類は創造してきました。

例えば、ポリネシアの島々に伝わる神話に注目すると、ポリネシアの島々では四大神(カナロア、カーネ、クー、ロノ)を中心にたくさんの神々が崇められており、その中には神様同士が結婚して子どもを産んだ事例も数多ありました(※1)。しかしながら、神様も人間と同様に愛し合うだけでなく、愛憎や嫉妬を原因とした神様同士の争いも起きており、時には浮気相手を殺すというようなショッキングな出来事もあったようです。

戦いの神・クー。彼の妻であるヒナ・ヘレは、男性の生殖能力や日の出の象徴とされる(2014年筆者撮影)
戦いの神・クー。彼の妻であるヒナ・ヘレは、男性の生殖能力や日の出の象徴とされる(2014年筆者撮影)

Bishop Museum
住所:1525 Bernice St, Honolulu, HI 96817
メール:claudette@bishopmuseum.org
電話番号:808-847-3511
URL:https://www.bishopmuseum.org/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/(外部リンク)

ハワイの神話において最もポピュラーな存在である火山の女神・ペレも、ハワイの人々にとって畏怖の存在だけでなく、彼女自身も非常に嫉妬深く、自分に振り向かなかった男性を木に変えたり、お相手の女性を花に変えてしまったともいわれています(※2)。

ハワイ プルメリアの花(2018年 アウラニ・ディズニーリゾートで筆者撮影)
ハワイ プルメリアの花(2018年 アウラニ・ディズニーリゾートで筆者撮影)

アウラニ・ディズニー・リゾート & スパ コオリナ・ハワイ
・住所:92-1185 Ali'inui Dr, Kapolei, HI
・TEL:+1 866-443-4763
・公式サイト:https://www.disneyaulani.com/jp/(外部リンク)

そんなペレ自身も、妹(海の女神・ナーマカオカハイ)の旦那と浮気をしてしまい、自らの妹によって殺されるという悲劇的な最期を遂げています(その後ペレは霊となってキーラウエアのハレマウマウ・クレーターに住み着いたとされています)。

ハワイ州 オアフ島内、ビショップ博物館(2014年筆者撮影)
ハワイ州 オアフ島内、ビショップ博物館(2014年筆者撮影)

私もハワイでよくロングステイをしていたので、現地の博物館を訪れたり、書物を読んだりしていると、こうした神様達の人間臭さに妙に親近感が沸く一方、恐ろしさも感じたりしていたものですが・・・

※1:ハワイ諸島の神々の世界では、神様同士の結婚や出産、さらには死産も描かれており、天を司る神であるワーケアは大地の女神パパと結ばれるが、第一子は死産し(埋葬された跡地からタロイモの芽が発芽したと言われる)、第二子・ハーロアは人間の祖先となったと伝えられている。

※2:ハワイを象徴する花のひとつである「レフア」は、幹の部分は「オヒア」と呼ばれ、総称として「オヒア・レフア」と呼ばれている。ハワイの神話では、オヒアはもともと青年であり、レフアは美しい女性であるとされ、オヒアが女神ペレの求愛を拒否したことに激怒し、オヒアを木に変えてしまった。それを悲しんだレフアの姿を見てペレは反省し、オヒアとレフアがずっと一緒にいられるようにレフアを花に変えたと言われている。こうして1本の木になったオヒアとレフアであるが、「レフア」の花を摘むと雨が降るという言い伝えもあり、再び引き離されたことを悲しむレフアの涙雨と伝えられている。

今回は現代の神話ともいえる、日本のアニメや特撮等の「サブカルチャー」に焦点を当て、我が国を代表する特撮ヒーロー番組『ウルトラマン』シリーズと、東映アニメーション作品『プリキュア』シリーズにおける、超人同士で繰り広げられた愛憎劇について特集をしたいと思います。

もしウルトラマン同士が愛し合い、彼氏に裏切られた女性が愛憎の権化となったら・・・?

もし恋に破れたプリキュアが、元彼を憎む邪悪な存在となったら・・・?

今回はそんな超人達の「ラブストーリー」をご紹介します。

☆本記事は「私サブカルチャーものにくわしくないわ」、「難しい話はちょっと・・・」というみなさまにもお届けできるよう、概要的かつ深すぎないお話を心がけておりますので、お好きなものを片手に、ゆっくりご覧頂けますと幸いです。

【ウルトラマンに元カノがいた?!】ウルトラマン同士を巻き込んだ恋の愛憎劇、そしてその先の悲劇とは・・・?

突然ですが、みなさまはウルトラマンシリーズをご覧になられたことはありますでしょうか?

ウルトラマンシリーズは株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』を起点とする特撮シリーズです。

『ウルトラマン(1966)』関連商品(筆者撮影)
『ウルトラマン(1966)』関連商品(筆者撮影)

1966年に『ウルトラマン』が放送され、身長40mの銀色の巨人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。

『ウルトラマン(1966)』から『ウルトラマンタロウ(1973)』まで、ウルトラ6兄弟(筆者撮影)
『ウルトラマン(1966)』から『ウルトラマンタロウ(1973)』まで、ウルトラ6兄弟(筆者撮影)

『ウルトラマン』の放送終了後も、『ウルトラセブン(1967)』や『帰ってきたウルトラマン(1971)』、『ウルトラマンタロウ(1973)』や『ウルトラマンティガ(1996)』等、現在まで派生作品が制作され続けており、7月8日より最新作『ウルトラマンブレーザー(2023)』(外部リンク)が放送予定です。

『シン・ウルトラマン(2022)』関連商品(筆者撮影)
『シン・ウルトラマン(2022)』関連商品(筆者撮影)

近年は、斎藤工さんや長澤まさみさん主演の映画『シン・ウルトラマン(2022)』の公開が記憶に新しい方も多いのではないでしょうか?

そんな長い歴史を持つウルトラマンシリーズですが、当シリーズではウルトラマンと怪獣達の戦いを描くだけでなく、人間同士の恋愛模様やロマンスを描いたエピソードも度々放送されてきました。

しかしながら、なんとウルトラマンシリーズの恋愛模様は人間同士だけに留まりません。時にウルトラマン同士の恋愛模様も描かれ、作品によっては闇と嫉妬に溢れた愛憎劇にまで発展した事例もありました。

本記事では、『ウルトラマンティガ(1996)』と『ウルトラマントリガー(2021)』の2作品に焦点を当て、両作で描かれた恋の愛憎劇について解説します。

【ウルトラマンティガは悪のヒーローだった?】憎しみと嫉妬に燃えた女性ウルトラマンが辿った悲劇とは?

まず最初の事例である『ウルトラマンティガ』。本作は1996年(平成8年)から約1年間に渡り放送された、平成のウルトラマンシリーズ第1作。怪獣の出現や宇宙人の襲来等、地球を襲う未曾有の危機に対し、三千万年の眠りについていた光の巨人・ウルトラマンティガがピラミッド(超古代遺跡)から目覚め、地球の危機に立ち向かうという物語。

『ウルトラマンティガ』はウルトラマン史上初の色が変わるタイプチェンジ能力や、シリーズ初の女性隊長の登場等の新要素だけでなく、物語を通じてウルトラマンに変身する主人公(特捜チームGUTSのマドカ・ダイゴ隊員)とヒロイン(同僚のレナ隊員)のロマンスも描かれました。

そんな『ウルトラマンティガ』も最終回を迎え、巨悪を倒したダイゴはウルトラマンティガへの変身能力を失い、レナをはじめとする特捜チームGUTSのメンバーのもとへと戻る・・・という形で全52話の物語を終えました。

しかし好評を博した『ウルトラマンティガ』は、その後映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』と題して、2000年に続編映画が公開され、本作ではダイゴ、ヒロインのレナ、そしてウルトラマンティガとかつて愛し合った元カノであるカミーラという女性との三角関係が描かれました。

闇の三巨人(左よりヒュドラ、カミーラ、ダーラム)とティガダーク(写真右、筆者撮影)
闇の三巨人(左よりヒュドラ、カミーラ、ダーラム)とティガダーク(写真右、筆者撮影)

映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』は、これまで描かれなかった光の巨人・ウルトラマンティガの謎を解明すると共に、ダイゴとレナの恋愛関係に決着をつける内容で公開されました。

本作の物語は、上述したテレビシリーズの最終回から2年後の世界を描き、結婚を目前に控えたダイゴとレナが平和な日々を過ごす中、南太平洋の超古代遺跡(ルルイエ)から3000万年前に封印された闇の三巨人(カミーラ、ヒュドラ、ダーラムから成る、悪い3人のウルトラマン)が目覚め、かつて仲間だったウルトラマンティガを再び仲間に引き込もうと画策します。

「暗い遺跡の中で、あなたのことだけを考えていたわ」

「あなたのこと、ずっと愛していたから」(カミーラ)

3000万年前、実はウルトラマンティガは闇の巨人「ティガダーク」であり、超古代の文明に破壊と混沌をもたらした存在かつ、カミーラとは恋人関係にありました。しかし、ティガはユザレと呼ばれる女性との邂逅で改心して光の巨人となり、ユザレと協力して闇の三巨人を3000万年に渡り封印していたことが明らかになります。

ティガダークへの変身時に使用するブラックスパークレンスと、カミーラ変身時に使用するスパークレンス(筆者撮影)
ティガダークへの変身時に使用するブラックスパークレンスと、カミーラ変身時に使用するスパークレンス(筆者撮影)

しかし、現代人であるダイゴにとって愛している女性はレナひとり。レナを守る意思を示したティガ(ダイゴ)に対し、カミーラは激昂します。

「そんな女のために!3000万年前は・・ユザレ!そして今は・・・。でも、これでなにもかもが吹っ切れたわ。思う存分、お前を・・・殺せる。」(カミーラ)

ダイゴは3000万年に渡るティガの因縁に決着をつけるため闇の三巨人と戦い、勝利します。

「光・・・私も、欲しかった。」(カミーラ)

人間の姿に戻ったカミーラはダイゴに手を握られ、息絶えます。

その後、ダイゴとレナは結ばれ、「火星移住計画チーム」の一員として宇宙へと旅立つのでした。

このように、本作は『ウルトラマンティガ』という物語の完結編でありつつ、ダイゴとレナという関係に物語の主軸を置きながら、それに干渉する第三者(元カノのカミーラ)を登場させることで、恋の三角関係も描かれていることが特徴でした。

ちなみに本作品は国内の興収でも成功を収めただけでなく、海外市場でも好評を得ていたようで、アメリカではラブストーリー仕立てと、次々に強敵を撃破する展開(ティガがダーラム、ヒュドラ、カミーラとそれぞれ順に打ち倒していく)に喝采が送られたほか、フランスを筆頭とする各国でも作品のプロモーションが展開された等、目覚ましい躍進を遂げていたそうです(DVD「ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY」冊子より)。

こうしたウルトラマン同士の恋の因縁は本作に留まらず、ウルトラマンティガの遺伝子を継いだ新たなウルトラマンをも巻き込むこととなります。

【マナカケンゴォ!お前さえいなければ!】ウルトラマン同士の愛憎劇は終わらない?!妖麗戦士カルミラの悲劇から再生まで

さてさて、上述した『ウルトラマンティガ』で繰り広げられた愛憎劇は、あくまで映画一本の中で繰り広げられた三角関係でしたが、この愛憎劇を全25話、半年間の放送期間で繰り広げた作品がありました。

その作品こそ2021年に放送された『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』。

"TIGA”というタイトルのとおり、『ウルトラマンティガ』を下地にしながら、本作を令和の時代向けにアレンジした作品でした。

ウルトラマントリガー関連商品(筆者撮影)
ウルトラマントリガー関連商品(筆者撮影)

具体的には、3000万年の眠りから目覚めた超古代の光の巨人・ウルトラマントリガーが、同じく3000万年前の封印から目覚めた闇の三巨人(カルミラ、ヒュドラム、ダーゴンから成る悪い3人のウルトラマン)との戦いを描いた物語。

この描き方だけでは『ティガ』の繰り返しのようですが、本作そのものは全く違う物語として展開されました。『ティガ』ではダイゴとレナのロマンスを描いてきたのに対し、今回の『トリガー』ではウルトラマントリガーに変身する主人公(特捜チームGUTS-SELECTに所属するマナカ・ケンゴ隊員)と、彼をサポートするGUTS-SELECTの仲間達との友情を描いており、本作のヒロイン(同僚のシズマ・ユナ隊員)も主人公とは相思相愛の関係ではありません。

しかしながら、『トリガー』も『ティガ』と同様にウルトラマン同士の恋沙汰が描かれており、ティガの三角関係に対して、トリガーで描かれたのは元カノとの因縁から受け入れまでの過程が描かれました。つまり、男女ウルトラマン同士の愛憎劇が令和の世に蘇ったのです。

ウルトラマントリガーは3000万年前、カルミラ達と同じ闇の巨人であり「トリガーダーク」と呼ばれる超古代文明を破壊する存在でした。しかし、巫女・ユザレとの交流で改心して光の巨人となり、ユザレと共にカルミラ達を封印していたことが明らかになります。

闇の三巨人(左からヒュドラム、カルミラ、ダーゴン)とトリガーダーク(筆者撮影)
闇の三巨人(左からヒュドラム、カルミラ、ダーゴン)とトリガーダーク(筆者撮影)

カルミラは復活後、自分たちを裏切り封印したトリガーに対して愛憎の念を抱くと共に、ウルトラマントリガーに変身するケンゴをも激しく憎み、激昂します。

「私のトリガーをかえせぇぇぇ!」

「お前ごときが、トリガーの身体を!消えろ!消えろ!」

「マナカケンゴォ!お前さえいなければ!」

かつてティガとカミーラが愛憎劇を繰り広げたように、トリガーとカルミラも愛憎劇を繰り広げます。一見『ティガ』の物語を繰り返しているように見えますが、その結末は思わぬ形で終結します。

ウルトラマントリガーの真の姿「トリガートゥルース」(写真右、筆者撮影)
ウルトラマントリガーの真の姿「トリガートゥルース」(写真右、筆者撮影)

トリガートゥルースの手の中で、カルミラは最期を遂げた(筆者撮影)
トリガートゥルースの手の中で、カルミラは最期を遂げた(筆者撮影)

本作の最終回において、カルミラは巨大な怪獣(メガロゾーア)へと変貌し、トリガーはカルミラに対して最終決戦を挑みます。トリガーは光(現在のトリガー)と闇(トリガーダーク)の力を併せ持つ真の姿「トリガートゥルース」となり、カルミラを打ち倒した後、ケンゴ(トリガー)は彼女の側に寄り添います。

「なぜ・・・あたしを。闇を拒絶する。」(カルミラ)

そんなカルミラにケンゴは手を差し伸べます。

「違うよ。カルミラ。僕は光であり、人である。そして闇でもあるんだ。だから・・・闇を拒絶なんかしない。僕は世界中の皆を・・・カルミラも笑顔にしたい!」

そんなケンゴの言葉にカルミラは心を打たれます。そしてトリガーの手の中で徐々に消えていくカルミラ。

「これが光かい・・・暖かいねえ。」

この言葉と共に、カルミラは消失して最期を遂げたのでした。

前作の『ウルトラマンティガ』では、光と闇の巨人という相反する二大勢力は決してわかり合うことはなく、光の巨人であるティガが闇の巨人達を倒すという勧善懲悪的な形で物語を終えていますが、『トリガー』では光の巨人であるトリガーが闇の巨人達に歩み寄り、救済しようとする形で物語を終えています。

つまり、単に『ティガ』で繰り広げられた愛憎劇を繰り返すのではなく、憎しみを超えた相互理解という形で、愛憎劇に決着をつけたのが本作の特徴でした。

実はこのカルミラ、次回作『ウルトラマンデッカー(2022)』において復活を果たしており、ウルトラマントリガーやデッカー達を支援する側として、以降のウルトラマンシリーズで活躍するようになります。ケンゴ(トリガー)とカルミラの間にあった蟠りは取り除かれた形での復活であり、このような『ティガ』では実現できなかった敵対勢力同士の相互理解も、平成から令和にかけた時代の変遷に伴う、大きな変化なのかもしれません。

『ウルトラマンデッカー』第8話より。復活したカルミラは、トリガーやデッカーと共闘し、怪獣(メガロゾーア)を倒す。(筆者撮影)
『ウルトラマンデッカー』第8話より。復活したカルミラは、トリガーやデッカーと共闘し、怪獣(メガロゾーア)を倒す。(筆者撮影)

【彼氏に裏切られ闇墜ち?!】悪の女王にまで登り詰めたプリキュアって誰?

国民的特撮ヒーロー番組である『ウルトラマン』シリーズにおいて、ウルトラマン同士の愛憎劇が度々繰り広げられたのは先述したとおりですが、実はこれとやや酷似した事例が、同じく国民的アニメ作品である『プリキュア』シリーズの世界でも発生していました。

みなさまは、プリキュアシリーズをご覧になったことはありますでしょうか?

プリキュアシリーズは東堂いづみ先生の原作で、2004年に放送が開始された東映アニメーション制作のアニメ作品『ふたりはプリキュア』に端を発するアニメシリーズです。

『ふたりはプリキュア』関連商品。写真中央は『ふたりはプリキュア~20th LEGENDARY BOX~』(Blu-ray)、現在絶賛発売中(筆者撮影)。
『ふたりはプリキュア』関連商品。写真中央は『ふたりはプリキュア~20th LEGENDARY BOX~』(Blu-ray)、現在絶賛発売中(筆者撮影)。

「女の子だって暴れたい!」というキャッチコピーのもとで誕生した『ふたりはプリキュア(2004)』は、性格の異なる2人の女の子が伝説の戦士・プリキュアとなり、邪悪な組織と戦う物語。

好評を博した『ふたりはプリキュア(2004)』はその後、『ふたりはプリキュア Max Heart (2005)』や『ふたりはプリキュア Splash Star(2006)』と派生作品が毎年放送され、以降も『Yes!プリキュア5 (2007)』、『スイートプリキュア♪(2011)』、『デリシャスパーティプリキュア(2022)』と世代を跨ぎながらシリーズ化され、現在放送中の『ひろがるスカイ! プリキュア(2023) 』において、プリキュアはシリーズ誕生20周年を迎えました。

歴代プリキュアシリーズのフィギュア(筆者撮影)
歴代プリキュアシリーズのフィギュア(筆者撮影)

「こんなに色艶やかな少女達の世界で、暗い愛憎劇なんか本当に発生したの?」

・・・なんて声が聞こえてきそうですが、長いプリキュアシリーズの歴史において、なんと発生した作品がございました。

その作品とは、プリキュアシリーズ第11作目『ハピネスチャージ!プリキュア(2014)』。

『ハピネスチャージ!プリキュア(2014)』関連商品。写真左は上北ふたご先生による漫画版、写真右は変身アイテム「プリチェンミラー」(筆者撮影)。
『ハピネスチャージ!プリキュア(2014)』関連商品。写真左は上北ふたご先生による漫画版、写真右は変身アイテム「プリチェンミラー」(筆者撮影)。

本作は、不幸の女王と呼ばれるクイーンミラージュが率いる帝国・幻影帝国の侵攻から地球を守るため、4人の少女達がプリキュアに変身して地球を守る物語。

この4人のプリキュアを支援するのが、ブルーと呼ばれる男性。実はこのブルーさん、地球の精霊であり、皆から「神様」とも呼ばれている存在。

そんなブルーさん、「プリキュアの掟」というものを掲げ、禁止事項を定めることによってプリキュアの行動を抑制する形でのサポートに徹していました。

その掟とは・・・プリキュアの正体をあかすことを禁止するほか、最重要事項であったのはプリキュアは「恋愛禁止」というものでした。

「アイドルかよ!」と突っ込みたくなりますが、この背景にはブルーとクイーンミラージュの間にあった悲しい出来事がありました。

実はクイーンミラージュは、ブルーがかつて出会った神社の巫女であり、彼女はかつてプリキュア(キュアミラージュ)として、300年前に邪悪な存在と戦っていたことが明らかになります。さらに、ブルーとミラージュは恋人同士であったものの、ブルーが「神が一人だけを特別に愛するわけにはいかない」という神様としての使命を優先したために、一途な想いを裏切られたミラージュが深く傷ついたことで、彼女は不幸の女王へと変貌したというバックストーリーが明かされます。

その結果、ブルーは悪の存在となったミラージュと戦うことになり、最終的に彼女を箱(アクシア)の中に、300年に渡り封印しました。しかし、主人公であるプリキュアのひとりがその箱を開けてしまったために、封印されていたミラージュが復活し、幻影帝国を率いてプリキュア達と戦うことになったのです。

「プリキュアには恋愛禁止といっておいて自分は恋愛してたのかよ!」とか、

「元カノを裏切った上、300年も箱に封印までするとは・・・」等々、

捉え方によってはブルーが身勝手な神様に見えてしまい、私も彼に対して思うところは「なかった」といえば嘘になりますが・・・。

『ハピネスチャージ!プリキュア(2014)』よりキュアラブリー(筆者撮影)
『ハピネスチャージ!プリキュア(2014)』よりキュアラブリー(筆者撮影)

さらに本作の主人公であるキュアラブリー(愛野めぐみ)も、密かにブルーに好意を寄せており、2人のプリキュアと神様をも巻き込んだ壮大な三角関係ができてしまったわけです。

最終的にミラージュは浄化されてブルーと復縁し、めぐみは二人を祝福するのですが、大変だったのはその後・・・。

プリキュアの仲間達と開いたパジャマパーティーでは「私の前でキスするなんて!」と愚痴を吐露した上、その翌日には幼なじみの男の子の前で大号泣してしまったのでした。

「世界が元に戻って、町中の皆が明るくなって、ミラージュさんが幸せになって、ブルーも幸せになって、それはほんとに嬉しくて、嬉しくて・・・だけど、なんだか凄く胸が苦しくて、とても嬉しいはずなのに、なんだかとても悲しくて・・・だけどすっごく嬉しくて。でも、悔しくて。私、失恋しちゃった・・・。」(めぐみ)

さらに失恋で得た心の傷を敵につけ込まれて洗脳されそうになる等、彼女自身も大変な目に遭ったのですが、その後プリキュア達は敵勢力との戦いを終え、ブルーとミラージュはめぐみ達に地球の愛溢れる平和と愛の結晶を託して、地球を去ったのでした。

男女間の関係において起こりううる複雑な恋沙汰ですが、これは人間達だけの問題ではなく、超人達の世界でも共通する難しい問題だったようです。

愛憎や嫉妬という感情はもしかしたら、ウルトラマンやプリキュア達が戦った怪物以上の強敵だったのかもしれません。

最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。

上記でご紹介した作品ですが、『ウルトラマンティガ(1996)』と『ウルトラマントリガー(2021)』はTSUBURAYA IMAGINATION(外部リンク)にて配信中です。また、『ハピネスチャージ!プリキュア(2014)』もamazonプライムビデオで配信中です。百聞は一見にしかずですので、是非ご覧になってみてくださいね♪

参考文献一覧
・アロハ検定協会、「アロハ検定 オフィシャルブック」、株式会社ダイヤモンド・ビッグ社

この記事をご覧頂き、「海外での日本特撮やアニメ作品の展開に興味を持った」という皆様、私の過去の記事やTwitterにて、海外現地での様子や商品展開についてもお話をさせて頂いております。宜しければ、ご覧ください。

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Masamitsu Futaesaku Ph.D(Twitter)(外部リンク)
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二重作昌満(CREATORSサイト)

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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