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【指1本で壊滅した悪の秘密基地がある?】仮面ライダー、キカイダーに登場したワケありの秘密基地とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満です。

いよいよ8月も終わりに近づいて参りましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

さて、今回のお話のテーマは「秘密基地」です。

突然ですが、みなさまは秘密基地と聞くとなにを思い浮かべますか?

世界の海のどこかに浮かぶ、大事故や災害から人々を守る秘密組織の島でしょうか?

『サンダーバード(1965)』に登場したトレーシーアイランド。国際救助隊ことトレーシー一家が暮らすプライベートアイランドであり、大災害や事故から人々を救助するメカニックを多数格納している(筆者撮影)。
『サンダーバード(1965)』に登場したトレーシーアイランド。国際救助隊ことトレーシー一家が暮らすプライベートアイランドであり、大災害や事故から人々を救助するメカニックを多数格納している(筆者撮影)。

それとも、世界征服を企む悪の秘密結社が構えるような、怪しげな内装の要塞でしょうか?

『仮面ライダー(1971)』に登場したショッカー秘密基地。世界征服を企む悪の秘密結社らしく、各国に複数の基地が確認されており、戦闘員や怪人、そして彼らを指揮する幹部と総本山の首領がいる(筆者撮影)。
『仮面ライダー(1971)』に登場したショッカー秘密基地。世界征服を企む悪の秘密結社らしく、各国に複数の基地が確認されており、戦闘員や怪人、そして彼らを指揮する幹部と総本山の首領がいる(筆者撮影)。

上述したような大規模な基地でなくとも、みなさまも、もしかしたら子ども時代に「秘密基地」と呼べるような遊び場を、校庭や公園の一画につくっていたよという方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「日立 世界ふしぎ発見!」番組途中に流れる日立のCMに登場する、「この木なんの木」でお馴染みの日立の樹。ハワイ州オアフ島内「モアナルアガーデンパーク」内にて実物を確認できる(2017年筆者撮影)。
「日立 世界ふしぎ発見!」番組途中に流れる日立のCMに登場する、「この木なんの木」でお馴染みの日立の樹。ハワイ州オアフ島内「モアナルアガーデンパーク」内にて実物を確認できる(2017年筆者撮影)。

そんな子ども達にとっても魅力的な場所である秘密基地。私も幼少期に観ていたアニメや特撮作品の影響を受け、「自分にも格好良い秘密基地があったらな」と想像の翼を広げていたものです。

しかしながら、アニメや特撮作品に登場した秘密基地の中には、時に一筋縄でいかない基地も多数存在しており、逆にそれが作品の個性として光っていた事例も数多確認できます。

そこで今回は、我が国を代表する映像文化としても長い歴史を持つ、特撮ヒーロー番組に焦点を当て、各作品に登場した仰天の秘密基地について、ゆっくりご紹介をして参りたいと思います。

※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にも気軽に読んで頂けますよう、概要的にお話をして参ります。ゆっくり肩の力を抜いて、気軽に本記事をお楽しみ頂けますと幸いです。

【たった2話で秘密基地が大破?!】仮面ライダーXの夢の秘密基地があっさり壊滅したわけとは?

まず最初にご紹介するのは、国民的特撮ヒーロー番組である「仮面ライダー」シリーズに登場した、仮面ライダーの秘密基地をご紹介します。

細かいお話に入る前に、少し仮面ライダーシリーズについて概要的にお話をしますと・・・

仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。

東映製作『仮面ライダー(1971)』より、仮面ライダー1号(写真左)と仮面ライダー2号(写真右)。ダブルライダーと呼称される両者は協力して、悪の秘密結社ショッカーが送り込む怪人達と戦った(筆者撮影)。
東映製作『仮面ライダー(1971)』より、仮面ライダー1号(写真左)と仮面ライダー2号(写真右)。ダブルライダーと呼称される両者は協力して、悪の秘密結社ショッカーが送り込む怪人達と戦った(筆者撮影)。

その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の昭和の仮面ライダーシリーズを経て、『仮面ライダークウガ(2000)』から『仮面ライダージオウ(2019)』までの平成仮面ライダーシリーズ等、世代を跨ぎながらシリーズは継続され、現在は『仮面ライダーギーツ(2022)』が放送されています。

『仮面ライダー(1971)』から『仮面ライダーストロンガー(1975)』まで登場した7人の仮面ライダーは、「栄光の七人ライダー」と呼称される。本論で概説する仮面ライダーX(右から3番目)もその一人。
『仮面ライダー(1971)』から『仮面ライダーストロンガー(1975)』まで登場した7人の仮面ライダーは、「栄光の七人ライダー」と呼称される。本論で概説する仮面ライダーX(右から3番目)もその一人。

そんな長い仮面ライダーシリーズの歴史の中で、今回お話しするのは、シリーズ第3作目『仮面ライダーX(1974)』。1974年2月から同年10月まで、全35話で放送された本作は、深海開発用改造人間として誕生したヒーロー・仮面ライダーXが、悪の組織「GOD秘密機関」が送り込む怪人達と戦う物語。

『仮面ライダーX(1974)』より仮面ライダーXの関連商品。深海開発用の仮面ライダーである故、海の色を彷彿とさせる水色を基調としたスーツに銀のマスク、赤い胸が目を惹く(筆者撮影)。
『仮面ライダーX(1974)』より仮面ライダーXの関連商品。深海開発用の仮面ライダーである故、海の色を彷彿とさせる水色を基調としたスーツに銀のマスク、赤い胸が目を惹く(筆者撮影)。

前作の『仮面ライダー(1971)』、『仮面ライダーV3(1973)』で描写された「正義のヒーロー対悪の組織」といったフォーマットはそのままに、「変身!」のかけ声で全身一体がパッと変身する前作の仮面ライダー達に対して、本作では「セタップ!(SET UP)」のかけ声で体にパーツを細かく装着して変身するという試みや、ライバルキャラクターの登場、連続ドラマ形式での謎解き等、後にこれらの要素を継承した平成仮面ライダーシリーズの先駆的作品でもありました。

仮面ライダーXのライバルかつ、GOD秘密警察第一室長のアポロガイスト。なんと自分に新たな生命を与えた博士を自ら処刑したために、その余命はわずか一ヶ月となった、自称「迷惑な存在」でした(筆者撮影)。
仮面ライダーXのライバルかつ、GOD秘密警察第一室長のアポロガイスト。なんと自分に新たな生命を与えた博士を自ら処刑したために、その余命はわずか一ヶ月となった、自称「迷惑な存在」でした(筆者撮影)。

そんな仮面ライダーXですが、他にも前シリーズで見られなかった新たな要素が番組に付加されていました。それこそ、本題となる「秘密基地」の存在でした。ショッカーのような悪党が秘密基地を構える展開はこれまで幾度もあったものの、仮面ライダー側が本格的な秘密基地を構えるのは、シリーズ初の試みでありました。仮面ライダーが乗り込むバイクも完備している上、ベルトから武器までしっかり揃っている・・・大人の目線から見てもそそられる設備でしたが、なんとこの仮面ライダーXの秘密基地、本作第1話での初登場から第2話にしてあっさり大破してしまったという、ヒーロー番組としては前代未聞の最期を遂げていたのです。

ことの成り行きは『仮面ライダーX』第1話「X.X.Xライダー誕生!」。本作の敵側であるGOD機関の襲撃を受け、主人公・神啓介は瀕死の重傷を負います。また、彼の厳格な父である人間工学の権威・神敬太郎教授もGODの凶弾に倒れますが、神教授の必死の改造手術を施された神啓介は仮面ライダーXとして蘇ります。

そんな啓介は、意識を失っていた最中に自らに起きていた出来事を理解するため、電子機器から発せられる父の声を通じて、自らが改造手術を受けた改造人間(カイゾーグ)となったことを知り、島に偽装した秘密基地の中へ案内されます。

「見ろ。啓介。あの島は私が作った島だ。あの島は、私自身だ。島全体が大コンピュータになっている。私の全人格、全知識が中にある。科学者、神敬太朗はここに生きている。啓介。これは私の、神ステーション(JIN STATION)だ。啓介、私はいつもここにいる。今後お前が私を必要とするとき、私はここで待っている。お前はいつでもこの神ステーションに、私を訪ねてくるがいい。」(敬太郎の声)

基地を訪れた啓介は、安らかに眠る父の亡骸を格納したロケット(のようなもの)を見たほか、仮面ライダーに変身するための変身ベルトと装備、さらに変身時に乗車するバイクが与えられました。

つまり、啓介の父(敬太郎)は既に死亡しており、彼が聞いた声は敬太郎の人格をコピーした秘密基地のコンピュータから発せられた声であることが明らかになります。すると・・・。

「啓介。最後の頼みがある。Cスイッチを入れてくれ。」(敬太郎の声)

その「Cスイッチ」というものを啓介が押すと、なんと敬太郎の亡骸を乗せたロケットが突然基地を飛び出し、海底にて大破。突然の展開に悲しみにくれる啓介に対し、コンピュータから敬太郎の声が呼びかけます。

「泣くな啓介。私はここにいる。この神ステーションが私自身なのだ。ゆけ。Xライダー!悪の組織GODを倒せ!ゆけ!Xライダー!」

啓介は仮面ライダーXへの初変身を果たし、見事初陣にて華麗なる初勝利を飾ったのでした。

『仮面ライダーX(1974)』のBlu-rayボックス。全2巻が東映ビデオより発売中(筆者撮影)。
『仮面ライダーX(1974)』のBlu-rayボックス。全2巻が東映ビデオより発売中(筆者撮影)。

しかしながら、次回作の第2話「走れクルーザー!Xライダー!!」にして啓介は早くも悩みにぶち当たります。それは、自分がもう人間ではないことでした。人間でないことを純真無垢な子どもにさえ咎められ、ロボット呼ばわりされ、父親なんているはずがないと人間扱いさえしてもらえません。失意の中で啓介が訪れたのは、亡き父と対話ができる神ステーションでした。

「きたよ。きちまったぞ親父。俺今、子どもに嫌われたよ。ロボットだって言われたよ。ロボットだって。この調子じゃ、子ども達の味方になるなんてことはできそうにないよ。子どもの方で逃げちまうんだから。だけど親父、俺はまだ人間だろ?神啓介でいる時は人間なんだろ?」(啓介)

「啓介。お前はもう人間ではない。(中略)そうだ。お前以外にGODと戦える者はどこにいる?お前しかいないんだぞ!Xライダー、人間ではない苦しさに耐え抜いて、それを誇れる男になれ!お前は立派なカイゾーグの男なのだ!啓介・・・俺はどうやら計算違いをしたようだ。巨大なGOD機関と戦うのに、力になってやりたいと思った。だがそれは間違いだった。この神ステーションの存在は、お前を弱い男にしてしまう危険がある。なにかある度に神ステーションに泣きに来るような男にはなってもらいたくないのだ啓介!」(敬太郎の声)

この言葉と共に、なんと基地の内部が爆発をはじめます。

「啓介。お前はやはり、ひとりで戦わなければならん。誰も頼らず、自分だけの力で!啓介、このJIN STATIONは、お前にはあってはいけないものだったのだ!さようなら啓介・・・」(敬太郎の声)

次なる爆発が始まる中、啓介は仮面ライダーXに変身して、バイクにまたがり神ステーションを脱出します。彼が振り返ると、基地はなんと木っ端微塵。つまり、自爆してしまったのです。

「ありがとう親父。きっと、きっと言われたとおりのXライダーになってみせるぜ。見ていてくれ。」(啓介)

私は平成生まれなので、『仮面ライダーX(1974)』の放送に間に合わず、本作を幼少期にビデオで視聴していた世代なのですが、第1話にしてこれから仮面ライダーは秘密基地と共に戦っていくぞ!という展開に胸を躍らせるかと思いきや、1話にして主人公のお父さんの遺体が海底で爆破される、2話では基地そのものがあっさり爆破されもう登場しなくなるといった展開に唖然とした記憶があります。たった2話だけの登場にして、受難だらけの神ステーションですが、僅かな登場回数に過ぎなかったからこそ、幼心に強烈なインパクトを残したのだとさえ感じます。

上述した秘密基地の件を筆頭に、重い展開が続いた第1話と第2話。制作者側もこれら2エピソードの試写を視聴し、この試写の段階にて番組の方向転換を早々に検討するようになります。その結果、本作に登場するキャラクター達により強烈な個性を与えることにより、番組の娯楽性を高めるという試みが実施されました。つまり、仮面ライダーXのライバルキャラクターであるアポロガイストの登場や、身長26mに及ぶ大きな巨大幹部(キングダーク)の登場等、インパクト溢れる新キャラクターの導入によって娯楽性が強化されたほか、先輩の仮面ライダー達も仮面ライダーXの危機に駆けつける等、個性豊かなキャラクター達が番組に結集し、本作を賑やかに彩っていきました。

『仮面ライダーX(1974)』の番組後半は、写真のサソリジェロニモをはじめ、強烈なインパクトに長けたGOD怪人達が登場。他にもヒトデヒットラーやクモナポレオン等、彼らは悪人軍団と呼ばれた(筆者撮影)。
『仮面ライダーX(1974)』の番組後半は、写真のサソリジェロニモをはじめ、強烈なインパクトに長けたGOD怪人達が登場。他にもヒトデヒットラーやクモナポレオン等、彼らは悪人軍団と呼ばれた(筆者撮影)。

このように、シリーズ初の展開をはじめとする『仮面ライダーX(1974)』は、無事に全35話での本作の放送を終了し、そのバトンは次回作『仮面ライダーアマゾン(1974)』へと渡されていくことになります。

『仮面ライダーX(1974)』の放送終了後、世界の平和は『仮面ライダーアマゾン(1974)』に託された。歴代仮面ライダーと異なり、密林の野生児でもあるアマゾンは、正に「強くてハダカで速い奴」だった。
『仮面ライダーX(1974)』の放送終了後、世界の平和は『仮面ライダーアマゾン(1974)』に託された。歴代仮面ライダーと異なり、密林の野生児でもあるアマゾンは、正に「強くてハダカで速い奴」だった。

【ボタンひとつで全基地がド派手に壊滅?!】セキュリティに難アリだったハカイダー部隊の秘密基地とは?

さて、ここまで仮面ライダーシリーズに登場する秘密基地について紹介して参りましたが、仮面ライダーと並んで、東映を代表する特撮ヒーロー番組である『人造人間キカイダー(1972)』シリーズにも、とある仰天の秘密基地が登場しました。

お話に入る前に、「そもそも・・・キカイダーってなに?」という皆さまのために、概要的に当シリーズについてご紹介をさせて頂きます。

『人造人間キカイダー(1972)』に登場したスーパーヒーローであるキカイダー(写真左)。写真右が、本記事にて特集する次回作『キカイダー01(1973)』の主人公・キカイダー01(筆者撮影)。
『人造人間キカイダー(1972)』に登場したスーパーヒーローであるキカイダー(写真左)。写真右が、本記事にて特集する次回作『キカイダー01(1973)』の主人公・キカイダー01(筆者撮影)。

キカイダーとは、仮面ライダーやスーパー戦隊シリーズの原作者である漫画家・石ノ森章太郎先生が生み出した、赤と青の二色で体が構成されたスーパーヒーローです。キカイダーは人々を守るロボットでありながら、善悪を判別する装置(良心回路)を取り付けられたことにより、「何が良いことで何が悪いことか」について苦悩するヒーローでもありました。

そんな悩めるヒーローの姿が描かれた『人造人間キカイダー』は、1972年7月から1973年5月まで、NET(現在のテレビ朝日)にて、30分番組として放送されました。世界征服を企む悪の組織「ダーク」が送り込むロボットと、人間を守るキカイダーが戦う内容で毎週展開されました。

またその人気は国内だけに留まらず、日本人にとって定番の人気観光地である米国・ハワイ州にも及び、『人造人間キカイダー』が1973年に現地の日本語テレビ局のKIKU-TVで放送が開始されると、KIKU-TV史上最高視聴率である24%を記録したほか、当時のショッピングセンターで開催されたサイン会には1万人が押しかけ、やむなく中止となってしまったのだとか。さらにこのキカイダーブームは現地の若者にも浸透し、ディスコに「人造人間キカイダー」の主題歌「ゴーゴー・キカイダー」がかかって皆が踊り出す現象も発生しました。

ハワイ州・オアフ島内にある、ハワイ州最高峰の自然史と文化史の博物館「ビショップ博物館」内には、キカイダーのレコードのパネルが展示されていた(2014年筆者撮影)
ハワイ州・オアフ島内にある、ハワイ州最高峰の自然史と文化史の博物館「ビショップ博物館」内には、キカイダーのレコードのパネルが展示されていた(2014年筆者撮影)

このハワイのキカイダー人気ですが、決して過去の話ではなく、キカイダーシリーズにて主人公を務めた俳優さん達の名誉市民認定や(『人造人間キカイダー』の伴大介氏(キカイダー:ジロー役)、続編『キカイダー01』の池田駿介氏(キカイダー01:イチロー役))、キカイダー記念日の制定、現在もキカイダーシリーズのイベントが開催されています。

ハワイ州・オアフ島内「アラモアナショッピングセンター」白木屋内にあったキカイダーコーナー。TシャツやDVD、ポスター等が販売されていた。(2014年筆者撮影)
ハワイ州・オアフ島内「アラモアナショッピングセンター」白木屋内にあったキカイダーコーナー。TシャツやDVD、ポスター等が販売されていた。(2014年筆者撮影)

ハワイ州・オアフ島内にあるアロハスタジアム。当スタジアムは老朽化のため、2027年の完成を目指した建て替え工事が行なわれている(2015年筆者撮影)
ハワイ州・オアフ島内にあるアロハスタジアム。当スタジアムは老朽化のため、2027年の完成を目指した建て替え工事が行なわれている(2015年筆者撮影)

私もハワイでよくロングステイをしていたので、現地での生活を通じてキカイダーブームには何度も触れてきたのですが、キカイダーの新作映画が公開されれば大ヒットする、DVDが発売されれば即売り切れる、アロハスタジアムではハワイ大学のマーチングバンドがキカイダーの主題歌を演奏する、着ぐるみショーや主演俳優のトークショーには大勢が集まる・・・といったように、現地で根強い人気を誇る特撮ヒーロー番組なのです。

キカイダー新作DVD「キカイダーREBOOT」の完売告知。なんと入荷は翌年まで持ち越しでした(2014年筆者撮影)。
キカイダー新作DVD「キカイダーREBOOT」の完売告知。なんと入荷は翌年まで持ち越しでした(2014年筆者撮影)。

さてさて、今回のお話にて焦点を当てるのは、前述した『人造人間キカイダー(1972)』の続編『キカイダー01(1973)』。本作の物語は、完全な良心回路を持った正義のヒーローであり、キカイダーの兄でもあるキカイダー01が、悪の組織(ハカイダー四人衆で構成されるハカイダー部隊)と戦う物語。

『キカイダー01(1973)』の主人公・キカイダー01(写真中央)。弟のキカイダー(右)と、新たな仲間であるビジンダーのサポートを受け、完全な正義の心で悪の組織に立ち向かう(筆者撮影)。
『キカイダー01(1973)』の主人公・キカイダー01(写真中央)。弟のキカイダー(右)と、新たな仲間であるビジンダーのサポートを受け、完全な正義の心で悪の組織に立ち向かう(筆者撮影)。

善と悪の間で悩めるヒーローを描いた前作とは打って変わり、完全な正義の心を持ったキカイダー01が毎週登場する敵(怪人の姿をしたロボット)を打ち倒していくという内容でした。

前作『人造人間キカイダー(1972)』に登場したライバルキャラのハカイダー。独自の悪の美学を貫く強いキャラクター性とインパクトで、キカイダーと同等あるいはそれ以上の人気を誇る名悪役だった(筆者撮影)。
前作『人造人間キカイダー(1972)』に登場したライバルキャラのハカイダー。独自の悪の美学を貫く強いキャラクター性とインパクトで、キカイダーと同等あるいはそれ以上の人気を誇る名悪役だった(筆者撮影)。

さてさて、本記事にて着目するのは、本作の悪側であるハカイダー部隊の秘密基地。もともとハカイダーとは、前作『人造人間キカイダー(1972)』にてキカイダーのライバルとして登場したキャラクターでありますが、今回の『キカイダー01(1973)』ではなんと4人(ハカイダー四人衆)も登場している上、スーパー戦隊シリーズ(ゴレンジャー)のように赤、青、銀、黒と、色による性格が振り分けられてのご出演でした。

ハカイダー四人衆。左よりシルバーハカイダー(銀)、リーダー格のギル・ハカイダー(黒)、ブルーハカイダー(青)、レッドハカイダー(赤)。それぞれが怪人の姿に変身でき、時に4人合体も披露した(筆者撮影)。
ハカイダー四人衆。左よりシルバーハカイダー(銀)、リーダー格のギル・ハカイダー(黒)、ブルーハカイダー(青)、レッドハカイダー(赤)。それぞれが怪人の姿に変身でき、時に4人合体も披露した(筆者撮影)。

さらにこのハカイダー四人衆の皆さん、クールかつ独自の悪の美学を持ち、それ故に卑怯な戦い方を嫌う性分であった前作のハカイダーと比較して、その性格も非常にタチが悪くなっており、一般市民相手にひたすら乱暴はするわ、卑劣な戦略は立てるわで、かつてのハカイダーの面影はない、全く別の敵として描かれていました。

例えば、リーダー格のギル・ハカイダー(黒)ですが、上述した数々の悪事に加え、野犬を駆除する、トイレットペーパーの買い占め業者を暴く(1973年、我が国はオイルショックの時代です)、ミカンの買い占めをする等、正直迷走しているのではないか?と目を疑う程の変わりっぷりでした。

そんな騒がしいハカイダー部隊ですが、彼らにもちゃんと秘密基地は存在します。しかもたった3年間で日本列島各地にたくさんの基地を建設しており、組織の主力がたった4人という小規模組織かと思いきや、意外にも日本攻略のためにやることはしっかりやっている組織でもありました。

ところが、その大量にある基地の本部に、正義のヒーロー・キカイダー01の侵入を許してしまいました。キカイダー01が基地の中で発見したのは、基地本部にある巨大な日本地図(地図中に点々と光るのが秘密基地の位置を示したもの)と、その真下にある「非常用/押す」という奇妙なボタン・・・・。

「んっ!ハカイダー基地の自爆装置か!このボタンを押せば、全国のハカイダー基地は木っ端微塵だ!」(キカイダー01)

正に「押すなよ!絶対押すなよ!」と、実は押すことを強く促すかのごとく、非常にわかりやすく表記されたこのボタン・・・ハカイダー達の奮闘もむなしく、案の定、キカイダー01によってあっさり指先で「ポチッと」押されます。すると3年がかりで全国につくった大量の秘密基地は、けたたましいサイレンと共にあっけなく大破。ヒーローによる基地の侵入を許した上、簡単に目視できる位置に自爆ボタンを配置する等、間の抜けたセキュリティをつくってしまったハカイダー四人衆にも大きな問題はあったかと思いますが・・・。

ハカイダー部隊はその後壊滅。リーダー格のギル・ハカイダーは生き残り、新たな悪の組織「世界大犯罪組織シャドウ」の一員となりますが、良い子の味方であるキカイダー01達の活躍で、シャドウと共に滅ぶのでした。

ハワイで発売された『キカイダー01』のDVD-BOX。池田駿介氏(キカイダー01:イチロー役)の直筆サイン入りの製品でした(筆者撮影)。
ハワイで発売された『キカイダー01』のDVD-BOX。池田駿介氏(キカイダー01:イチロー役)の直筆サイン入りの製品でした(筆者撮影)。

いかがでしたか?今回は、東映製作の2つの特撮ヒーロー番組に焦点を当て、正義と悪の2つの視点における秘密基地の行く末について特集しました(両方とも悲惨な結末でしたが・・)。もちろん、長い特撮ヒーロー番組の歴史において、悲惨な結末を辿ることなく、魅力的な設備を保有し続けた基地等、たくさんの魅力溢れる秘密基地は、我が国の長い特撮ヒーロー番組の歴史の中でたくさん登場しておりますので、是非、皆さまのお気に入りの秘密基地を探していただけたらと思います。

最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。

※本記事にてご紹介しました『仮面ライダーX(1974)』、『キカイダー01(1973)』ですが、東映様の会員制サブスクサービス「東映特撮ファンクラブ」(外部リンク)にて配信されております。宜しければ、ご覧になってみてくださいね。

参考文献
・菅家洋也、講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー昭和 vol.4 仮面ライダーX、講談社
・大場吾郎、「テレビ番組海外展開60年史 文化交流とコンテンツビジネスの狭間で」、人文書院
・山下大樹・嶌田美智子(ノトーリアス)、「特撮ヒーローの常識 70年代篇」、双葉社

・勝野 宏史、「研究最前線 ハワイの『キカイダー』ブーム : ファンダム研究の視点から」、人間科学研究

・ジェフリー, A・S・モニーツ、「多様な社会における多文化教育アプローチとしての多様な視点の尊重と涵養」、教育学部論集 19

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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