【ハワイで過ごすクリスマス♪】日本のキャラクターを巡り警察が出動したアメリカのクリスマスとは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて、日々活動をさせて頂いております。
すっかり寒さが身に染みる季節になりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
さて、今回のテーマは「おもちゃ」です。
クリスマスも近いこの季節。子ども達を笑顔にする定番として、ツリーと共におもちゃを目にする機会も増えてきました。
少子化が叫ばれて久しいですが、現在は子ども達だけでなく、カードゲームやプラモデル等、大人世代の心にも届く玩具も発売されて争奪戦になる状況が報道される等、おもちゃは世代を超えて愛され続けています。
ひとくちに「おもちゃ」といっても様々ですが、その中でも、格好良いロボットや色とりどりのスーパーヒーロー、キラキラした変身ブレス等、男児や女児といった性別を問わずに、半世紀近くに渡り愛され続けた東映制作の特撮ヒーロー番組『スーパー戦隊シリーズ』のおもちゃは、国内だけに留まらずその人気は海外にも及んでいます。
私も米国(特にハワイ)に滞在することがよくあったのですが、現地でのスーパー戦隊シリーズの人気ぶりを肌で感じることも多々ありました。
そこで今回は「おもちゃ」をテーマに、日本からアメリカに向けて進出したスーパー戦隊シリーズの歴史を辿ると共に、米国・ハワイ州における、私の現地でのお買い物体験記について少しお話しできたらと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
※本記事における原作者「八手三郎」の表記ですが、東映映像本部テレビプロデューサーの共同ペンネームであります。しかし本記事では敬意を表し「先生」という呼称で統一をしております。本記事を通じてはじめてアニメ・特撮ヒーロー番組に触れる方もいらっしゃいますので、ご配慮を頂けますと幸いです。
【シリーズ存続の鍵は恐竜?】ゴレンジャーからはじまったスーパー戦隊シリーズの大人気ジャンルとは?
お話に入る前に・・・みなさまはスーパー戦隊シリーズをご覧になったことはありますでしょうか?
「子どもの頃に観ていたよ!」という方や「子どもと一緒に観ているよ」という方、はたまた「今も大好きで観ているよ!」という方もいらっしゃるかと思います。
スーパー戦隊シリーズについて簡単にご説明しますと、漫画家・石ノ森章太郎先生と八手三郎先生が原作の、カラフルなコスチュームを纏った5人のチームヒーローを主人公にした、我が国を代表する東映制作の特撮ヒーロー番組です。
シリーズ第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』が1975年に放送が開始されて以降、『太陽戦隊サンバルカン(1981)』、『忍者戦隊カクレンジャー(1994)』、『超力戦隊オーレンジャー(1995)』、『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』、『魔進戦隊キラメイジャー(2020)』等々、シリーズは続いて行き、最新作『王様戦隊キングオージャー(2023)』まで全47作品がこれまで放送されてきました。
半世紀近くに渡る長い歴史を堅持しており、現在まで順風満帆に続いてきたように見える当シリーズですが、実はこれまでシリーズの存続危機に直面した事態が度々ありました。
とりわけ大きな影響を受けたのは1990年代初頭であり、当シリーズの制作者側も試行錯誤を繰り返しながら、なんとかシリーズ存続にこぎ着けた苦しい時代でもありました。メンバー全員が小学校の先生であり、悪役側にもコメディ描写を導入した『地球戦隊ファイブマン(1990)』、男女間の恋愛をテーマに、戦隊メンバー同士や悪役をも巻き込んだ恋模様を描いた『鳥人戦隊ジェットマン(1991)』等、シリーズの存続をかけた挑戦が続いていく中、スーパー戦隊シリーズの回復を決定的なものにしたのは、スーパー戦隊シリーズ第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)』でした。
本作が放送されたのは、映画監督・スティーブン・スピルバーグによる『ジュラシック・パーク』の映画化発表に湧き上がった1992年。本作は「恐竜」をテーマに、1億7000万年の眠りから目覚めた5人の勇者が『恐竜戦隊ジュウレンジャー』を名乗り、魔女バンドーラ率いるバンドーラ一族から地球を守る物語。
5人の戦士達が力を合わせて戦うシリーズの根幹的な描写は勿論、悪役でもどこかアットホームで憎めないバンドーラ一族、神のごとく威風堂々とした恐竜型のロボットに加え、シリーズ初の試みである6人目の戦士(ドラゴンレンジャー)も登場する等、豪華絢爛かつRPG(ロールプレイングゲーム)を彷彿とさせるような、子ども達に親しみやすい作風で放送された本作は最高平均視聴率13.2%を記録し、以降もスーパー戦隊シリーズは継続することとなりました。
また『ジュウレンジャー』のヒットにより「恐竜」はスーパー戦隊シリーズを象徴する人気モチーフとして定着し、その後も『爆竜戦隊アバレンジャー(2003)』や『獣電戦隊キョウリュウジャー(2013)』、さらに『騎士竜戦隊リュウソウジャー(2019)』と恐竜モチーフのスーパー戦隊が続々と産出されるようになり、現在まで「恐竜スーパー戦隊」という呼称が登場するほど、恐竜という要素は子ども達に愛される人気ジャンルとして、スーパー戦隊シリーズに定着するようになりました。
このように、日本だけに留まらずアメリカでも爆発的なヒットを飛ばしていた「恐竜スーパー戦隊」ですが、『ジュウレンジャー』の鈴木武幸プロデューサーは恐竜の良さについて、まず巨大であることから、大きいものが好きな子ども達の好みに適合すること、そして恐竜はもともと太古のものであることから、古くならない要素であること、さらに世界中から化石が出てきているためみんなが知っている、これら3要素を兼ね備えているのは恐竜だけであることを述べており、こうした「恐竜」そのものが秘めていた固有の特徴こそ、時代を超えて子ども達に愛される魅力的な要素なのかもしれません。
また2023年も恐竜スーパー戦隊の挑戦は続いており、現在放送中の『王様戦隊キングオージャー(2023)』では、現行ヒーローであるキングオージャーに対し、先述した『獣電戦隊キョウリュウジャー(2013)』が先輩ヒーローとして力を貸す展開が描かれたほか、全国の玩具売り場でもキョウリュウジャー関連玩具が装いを新たに再発売される等、「恐竜スーパー戦隊」の存在は決して過去の遺産ではなく、現在も普遍的な人気作品として愛され続けています。
【全米が緊急事態だった?!】クリントン大統領夫妻をも巻き込んだ恐るべきアメリカ版「恐竜スーパー戦隊」の底力とは?
ここまで上述してきましたとおり、『恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)』を起点とする「恐竜」というジャンルの導入は、シリーズ回復の一時的な切り札としてだけでなく、数多くの人気作を輩出する重要要素として現在まで定着してきました。
しかしこの「恐竜スーパー戦隊」の人気は日本だけに留まらず、米国をはじめとする海外にも及んでいたことはご存知でしょうか?アメリカや韓国をはじめ、スーパー戦隊シリーズは『パワーレンジャー(Power Rangers)』と題して世界100カ国以上で放送されており、各国で爆発的なヒットと社会現象を巻き起こしていたのです。
パワーレンジャーがアメリカで放送を開始したのは1993年のこと。番組のタイトルは“Mighty Morphin Power Rangers(マイティ・モーフィン・パワーレンジャー)”と題して、ロサンゼルスやニューヨークの大都市圏で月曜日から金曜日にかけて午後3時からレギュラー番組として放送されました。
番組内容は、先述した『恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)』をベースに、日本人の俳優さん達の出演シーンを現地俳優さん達の出演シーンに差し替え、着ぐるみやミニチュアを使った戦闘シーンは日本で撮影した映像を流用する形で、約30分の番組として編成したものでした。
当内容で放送された本作は、アメリカで爆発的なヒットを巻き起こします。ロサンゼルス地区のテレビ局では最高9.1%の視聴率をたたき出した上、あまりの人気にクリントン大統領夫妻は本作の出演俳優をホワイトハウスへ招待したほどでした。
また関連商品の販売においても、本作の玩具を求めてショッピングモールに親達が殺到する現象が見られたほか、品薄となった玩具の取り合いで客同士の喧嘩が起こり、警察が出動する騒動にまで発展したそうです。この玩具騒動は全米を巻き込む緊急事態となり、『恐竜戦隊ジュウレンジャー(1992)』を産出した日本側に、アメリカから「ジュウレンジャーのおもちゃが残っていないか?」と電話がいくつも来たものの、日本では既に当番組の放送は終了していたために対応できなかったという逸話が残されています(このパワーレンジャーの玩具が品切れした騒動を基に、1996年に公開されたアーノルド・シュワルツェネッガー主演の映画「ジングル・オール・ザ・ウェイ(Jingle All the Way)」が製作されました)。
本作の玩具を販売していたのが、皆様ご存知の玩具大手メーカーであるバンダイ。同社のアメリカ子会社は、1994年の1年間でフィギュアを1800万体で10億ドル売り上げたほか、このパワーレンジャーブームにより同年のアメリカ玩具市場は164億ドルの過去最高を記録しました。
このように、アメリカで爆発的なヒットを飛ばした「マイティ・モーフィン・パワーレンジャー」は「アメリカの歴史上、もっとも成功した子ども番組」と評されるまでに至りました。
パワーレンジャーシリーズの人気は現在まで続いており、先述した『爆竜戦隊アバレンジャー(2003)』、『獣電戦隊キョウリュウジャー(2013)』といった他の「恐竜スーパー戦隊」もパワーレンジャーシリーズとして米国へ輸出されたほか、現在は『騎士竜戦隊リュウソウジャー(2019)』を米国市場向けに展開した最新作『パワーレンジャー・コズミックフューリー(Power Rangers Cosmic Fury)』が発信されています。日本と同様、アメリカでも「恐竜スーパー戦隊」の存在感は健在であり、今日も彼らはテレビ番組やネット動画の配信に留まらず、玩具に生活雑貨等、姿を変えながら世界中の子ども達の側に寄り添い、笑顔を守り続けています。
【びっくり!アメリカのおもちゃ事情!】ハワイで過ごすクリスマスに体験した、筆者の3つのドタバタ劇・・・?
さてさて、季節は巡りもうすぐクリスマス。
本記事をご覧になっている皆さまの中には、「子ども達へのクリスマスプレゼントは何にしようかしら?」とお考えの方も多いかと思います。
大切な誰かにプレゼントを贈る上で、何にしようか取捨選択したり、お店で奮闘したりするのは日米共通。近年では「ブラックフライデー」という言葉も日本でよく耳にするようになりました。
そんな購買意欲の高まるクリスマス。本章では少し日本を離れ、私が体験した米国・ハワイでのクリスマスについて、少しだけご紹介したいと思います。
「なんで唐突にハワイなの?」と言われますと、私事ですが幼少期よりハワイでよくロングステイをしており、特に過ごしていた時期がクリスマスでした。
さて、そんなハワイのクリスマス。いざ大人になって過ごしてみると、日本と異なる生活体系に翻弄されることもしばしば・・・素敵なことも多い反面、事情を知らず苦労することも多々ありました。ここからはプレゼントを巡る3つの体験談をご紹介します。
はじめに、これはハワイに限ったことではありませんが、「①買い物は一期一会」であることが挙げられます。話題性の有る無しに関わらず、「これ良いな」と思っても「後でも買えるよね」と棚に戻した1点ものの商品が数分後に綺麗さっぱりなくなったこともよくありました。「買っときゃ良かった」と地団駄を踏んでも時既に遅し・・・ましてやクリスマスが近くなるとセールだセールだで客の購買欲が高まる上、特に子どもに買い与えるおもちゃは商品の陳列棚からなくなることも多く、正に一期一会な状況なのです。
上述した「パワーレンジャー」のおもちゃも例外ではありません。主役である5人のヒーロー達だけでなく悪役もしっかりと商品化されるのが米国市場の特徴ですが、「悪役=人気が無い」という認識は米国では通用しない上、そもそもクリスマスに5人のヒーローのフィギュアを一式揃えて買うのが難しい。「ブルーがいない」、「ピンクがいない」と慌てたり、悪役1体のために「ウォルマート」だ「ターゲット」だ玩具取扱店を巡ることもしばしばでした。
「そんなことしなくてもネットで買えばいいじゃない?アメリカにもamazonあるだろ?」と言われそうですが、確かにamazonは米国企業ですし、スマホ社会である現代において気軽に注文は可能です。ただし探している商品が高騰していたり(いわゆるプレ値)、ましてや頼んだところでクリスマスや帰国時期に間に合うかもわからないという、州によって時差も異なる広大なアメリカならではの弱点もあったのです(そう考えると翌日配送の日本のamazonプライムのサービスは凄いなと思う反面、お届けに携わっている運送業者様には感謝しかありません)。
続いて「②アメリカは発売日という概念や認識が薄い」ことが挙げられます。日本では欲しい商品があれば、その発売日をネットで調べた上で当日お店に行けばちゃんと売っているものだという認識が強いかと思いますが、アメリカは国土も広い故に州によって商品の入荷時期も異なるため、お店に商品が並ぶ日の特定が難しいのです。「この商品の発売日はいつ?」と聞くと「1週間以内」もしくは「クリスマスの後」と店員さんに返答され、クリスマスに商品が間に合わなかったこともしばしばでした。特にディズニー映画『アナと雪の女王』が公開された際(現地では2013年11月27日公開)、その人気は凄まじくクリスマスまでお人形等の玩具は再入荷しておらず、やっとこさ入荷したのはクリスマス後の年末でした。
3つ目に「③クリスマスはほとんどの施設がお休み」であることが挙げられます。「クリスマスパーティをするからスーパーやショッピングモールに食材を行くぞ!」とか「パーティ用の予算を確保したいから銀行にお金を下ろしに行くぞ!」と思っても「12月25日はどの小売店や商業施設、銀行も閉まっている?!」ことにてんてこ舞いしたことがありました。必要なときに必要なもの(特にお金)を確保できないのはやはり大変・・・。
ハワイといえど、ここはアメリカ。米国国民の8割近くはキリスト教徒である上、クリスマスは綺麗な飾り付けをするだけでなく、家族が集い一緒に過ごす喜びを再認識する特別な日。よって、アラモアナセンターをはじめとする大型商業施設や地元のスーパー、銀行等は12月24日(クリスマス・イブ)は早めに閉店し、12月25日はお休み、12月26日以降は通常営業というのが通例。よって、今後皆さまがハワイにてクリスマスを過ごす際は、少し念頭に置いて頂けたらと思います。
「じゃあ本当にどこもやってないわけ?」と言われると、決してそんなことはありません。ABCストア等のコンビニのほか、「ドン・キホーテ(カヘカ店)」等の日系スーパーは営業しています。遊びに行きたければ海に行けば良いのですが、映画館も営業しています。アメリカは日本以上に映画が身近な娯楽である上、クリスマスという特別な日を飾るものとしても重宝されているのです。
「ハワイまで来て映画を観るなんて・・・」と抵抗感を感じる方も多いかと思います。しかし、日本では未公開の作品や公開前の作品をひと足お先に楽しめるほか、異国の映画館である故の現地の空気感も体験出来ます(館内は冷房でよく冷えているので、羽織り物やブランケット等を用意しておくことをお勧めします)。
※余談ですが、ディズニー映画『アナと雪の女王』も日本での公開に先駆けてハワイの映画館で観ていたのですが、主要キャラクター(ハンス王子)の裏切りシーンも目撃したため、とにかく日本での公開(日本での公開は2014年3月14日)まで黙り続けたのは、公開から10年経った今でもよく覚えています。2人のヒロインがいて、2人のお相手候補がいたので、Wカップル誕生かと思いきや見事大外れでした・・・。
いかがでしたか?今回は「恐竜スーパー戦隊」からハワイで過ごすクリスマスの体験談までをご紹介しました。普段本屋さんに並んでいるガイドブックには載っていない現地での体験談を、これからも少しずつお話しできたらと思います。
最後までご覧いただきまして、誠にありがとうございました。
参考文献 一覧
・菅家洋也、「講談社シリーズMOOK スーパー戦隊シリーズMOOK スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1992 恐竜戦隊ジュウレンジャー」、株式会社講談社
・菅家洋也、「講談社シリーズMOOK スーパー戦隊シリーズMOOK スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1991 鳥人戦隊ジェットマン」、株式会社講談社
・菅家洋也、「講談社シリーズMOOK スーパー戦隊シリーズMOOK スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1990 地球戦隊ファイブマン」、株式会社講談社
・鈴木武幸、「夢(スーパーヒーロー)を追い続ける男」、株式会社講談社
・大下英治、「仮面ライダーから牙狼へ 渡邊亮徳・日本のキャラクタービジネスを築き上げた男」、株式会社竹書房
・長澤博文・今井智司(ノトーリアス)、「スーパー戦隊の常識 ド派手に行くぜ!レジェンド戦隊篇」、双葉社
・尾上克郎・三池敏夫、「平成25年度メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業 日本特撮の関する調査」、森ビル株式会社