Yahoo!ニュース

【あなたの好きな仮面ライダーは誰ですか?】アメリカを駆ける仮面ライダーの今と未来とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。

だんだんと春の暖かさを感じられるようになりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか?

さて、今回のテーマは「仮面ライダー」です。

日本が世界に誇る国民的特撮ヒーロー番組として、半世紀以上の長い歴史を持ち、今や親子三世代に愛されるスーパーヒーロー。それが仮面ライダー。

昭和、平成、令和と時代を超えながら、新たなシリーズが制作され、今日も仮面ライダーは人間の自由のために、世界の平和を守り続けています。

『仮面ライダー(1971)』から『仮面ライダーJ(1994)』まで、15人の昭和ライダー。厳密には平成以降に公開された仮面ライダーシリーズも3作品存在するが、彼らは公式で「昭和ライダー」と呼称される。
『仮面ライダー(1971)』から『仮面ライダーJ(1994)』まで、15人の昭和ライダー。厳密には平成以降に公開された仮面ライダーシリーズも3作品存在するが、彼らは公式で「昭和ライダー」と呼称される。

『仮面ライダークウガ(2000)』から『仮面ライダーディケイド(2009)』までの平成ライダー達。各作品独立した世界観を有しており、毎作仮面ライダーとはなにかを問いながら、新たなヒーロー像を確立した。
『仮面ライダークウガ(2000)』から『仮面ライダーディケイド(2009)』までの平成ライダー達。各作品独立した世界観を有しており、毎作仮面ライダーとはなにかを問いながら、新たなヒーロー像を確立した。

『仮面ライダーW(2009)』から『仮面ライダージオウ(2019)』。平成仮面ライダーシリーズは次の10年に突入し、テレビや映画だけでなく、ネットムービーやVシネ等、ライダー達は活躍の場を拡げていった
『仮面ライダーW(2009)』から『仮面ライダージオウ(2019)』。平成仮面ライダーシリーズは次の10年に突入し、テレビや映画だけでなく、ネットムービーやVシネ等、ライダー達は活躍の場を拡げていった

時代が令和に変わっても、昭和、平成ライダーの志を継承した令和ライダー達が活躍を続けている。左よりセイバー、ゼロワン、ガッチャード、ギーツ、リバイ。中央のガッチャードが2024年現在の最新作。
時代が令和に変わっても、昭和、平成ライダーの志を継承した令和ライダー達が活躍を続けている。左よりセイバー、ゼロワン、ガッチャード、ギーツ、リバイ。中央のガッチャードが2024年現在の最新作。

そこで、私から皆さまにお伺いしたいのは・・・。

「皆さまが好きな、もしくは思い入れのある仮面ライダーは誰ですか?」

・・・というお題。仮面ライダーV3やアマゾンといった昭和の仮面ライダーシリーズを挙げる方もいらっしゃれば、クウガや電王、ダブルといった平成仮面ライダーシリーズが好きという方も数多くいらっしゃると思います。

「お前はどうなの?」と聞かれますと、私が好きなのは『仮面ライダーBLACK(1987)』、そして『仮面ライダーBLACK RX(1988)』。

『仮面ライダーBLACK(1987)』の主人公・BLACKと『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の主人公・BLACK RXは同一人物。BLACKが進化した姿がBLACK RXである。
『仮面ライダーBLACK(1987)』の主人公・BLACKと『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の主人公・BLACK RXは同一人物。BLACKが進化した姿がBLACK RXである。

両作品共に、数ある「仮面ライダーシリーズ」の中でも、まるで太陽のように光り輝く名作で、現在も非常に高い人気を誇っています。

この両者ですが、実は同一人物。その名の通り、仮面ライダーBLACKが強化した姿がBLACK RXでした。

「BLACKとRX、どんなところが好きなの?」となると、もちろんヒーローとしての格好良さも挙げられるのですが、従来の仮面ライダーシリーズのように「正義のヒーロー対悪の組織」という展開に加え、仮面ライダー同士の覇権争いを描いていたことにあります。

皆既日食の日に生まれた仮面ライダーBLACK(ブラックサン)とシャドームーンは、「次期創世王」の座を争う関係にあった。ブラックは人類の平和を守ることを誓い、シャドームーンを撃破し創世王を滅ぼすが・・。
皆既日食の日に生まれた仮面ライダーBLACK(ブラックサン)とシャドームーンは、「次期創世王」の座を争う関係にあった。ブラックは人類の平和を守ることを誓い、シャドームーンを撃破し創世王を滅ぼすが・・。

自らを「太陽の子(ブラックサン)」と名乗るBLACKには、「影の月(シャドームーン)」を名乗るライバルの仮面ライダーが存在し、その因縁は『仮面ライダーBLACK(1987)』、そして『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の物語を通じて描かれていたのです。

昨今の作品では、仮面ライダー同士が闘うという展開はさほど珍しくないかも知れませんが、両作品には「次期創世王」の座を巡る覇権争いのドラマだけでなく、仮面ライダーの象徴ともいえるオートバイ( 厳密には、主人であるブラックを慕うバイク型生命体)も奪い合ったりと、大人になった今でも斬新かつ惹きつける力強い魅力が溢れているのです。

そこで今回は、『仮面ライダーBLACK(1987)』、そして『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の物語を通じて描かれた、太陽と月の仮面ライダーの悲しき戦いに焦点を当てていきたいと思います。

※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたら幸いです。

【仮面ライダーは悪の組織のトップ?】世紀王として悪の組織を導いた影の月、シャドームーンとは何者か?

さて、ここからは『仮面ライダーBLACK(1987)』とその続編『仮面ライダーBLACK RX(1988)』についてお話をしていきたいと思いますが・・・。

その前に少しだけ仮面ライダーシリーズについて簡単にご紹介をさせてください。

仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人と戦う物語が展開されました。

『仮面ライダー(1971)』より仮面ライダー1号(写真左)と仮面ライダー2号(写真右)。彼らは元々敵対する悪の組織「ショッカー」の科学力で生まれた存在で、人間でなくなってしまった悲劇性を抱えていた。
『仮面ライダー(1971)』より仮面ライダー1号(写真左)と仮面ライダー2号(写真右)。彼らは元々敵対する悪の組織「ショッカー」の科学力で生まれた存在で、人間でなくなってしまった悲劇性を抱えていた。

その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』等の昭和シリーズを経て、『仮面ライダークウガ(2000)』等の平成シリーズと、そして現在は『仮面ライダーガッチャード(2023)』が放送されています。

そんな長い仮面ライダーシリーズの歴史の中で、今回お話しするのは、テレビシリーズ第8作『仮面ライダーBLACK(1987)』と第9作『仮面ライダーBLACK RX(1988)』。両作品を通じて描かれていたのは、太陽の仮面ライダーと月の仮面ライダーの戦いでした。

太陽の戦士として闘う仮面ライダーBLACK(右)と、その進化形であるBLACK RX(中央)。彼のライバルは、月の戦士であるシャドームーン(左)である。両者はもともと悲運で引き裂かれた親友だった。
太陽の戦士として闘う仮面ライダーBLACK(右)と、その進化形であるBLACK RX(中央)。彼のライバルは、月の戦士であるシャドームーン(左)である。両者はもともと悲運で引き裂かれた親友だった。

それでは両作品で描かれた物語を、順番に辿っていきたいと思います。

まずは『仮面ライダーBLACK(1987)』。本作は、人類の文明の破壊を企む恐怖の暗黒結社「ゴルゴム」から、ゴルゴムの科学力で「仮面ライダーBLACK」となった主人公・南光太郎が世界の平和のために、ゴルゴムが送り込む怪人達と戦う物語。

東映ビデオより発売された『仮面ライダーBLACK』のBlu-ray BOX全3巻。数ある昭和仮面ライダーシリーズが存在する中、名誉ある初Blu-ray化の口火を切ったのが本作であった(筆者撮影)。
東映ビデオより発売された『仮面ライダーBLACK』のBlu-ray BOX全3巻。数ある昭和仮面ライダーシリーズが存在する中、名誉ある初Blu-ray化の口火を切ったのが本作であった(筆者撮影)。

ここまではかつての仮面ライダーシリーズとよく似ているのですが、『仮面ライダーBLACK(1987)』の物語の大きな特徴は、次の王様を決めるための2人の仮面ライダーの覇権争いを描いていたことでした。つまり、世界を支配する暗黒の王様(次期創世王)を決めるべく、その候補である2人の仮面ライダーが争う物語を展開したのです。

『仮面ライダーBLACK(1987)』は、仮面ライダーと悪の組織の戦いに加え、次期創世王(支配者)を巡る2人の仮面ライダー(仮面ライダーBLACK VS シャドームーン)の死闘が描かれた(筆者撮影)。
『仮面ライダーBLACK(1987)』は、仮面ライダーと悪の組織の戦いに加え、次期創世王(支配者)を巡る2人の仮面ライダー(仮面ライダーBLACK VS シャドームーン)の死闘が描かれた(筆者撮影)。

世界を支配する創世王の候補は2人。1人は、本作の主人公である仮面ライダーBLACK(別名:世紀王ブラックサン)、そしてもう1人の候補こそシャドームーンでした。

ことの経緯は、2人の青年の誘拐事件からはじまります。誘拐されたのは、南光太郎と秋月信彦。5万年に1度の日食の日の同時刻に生まれた2人は、秋月家で暮らす家族同然の間柄でした(光太郎は養子)。ところがある日、19歳の誕生日を迎えた2人は暗黒結社ゴルゴムによって誘拐されてしまいます。2人は改造手術を施され、光太郎の体内には太陽の石・キングストーンが埋め込まれ、信彦の体内には月の石・キングストーンが埋め込まれました。しかし改造手術後に事故が発生し、光太郎は辛くも脱出。運良く本来の自分のまま脱出できた光太郎は、自らを仮面ライダーBLACKと名乗り、ゴルゴムとの戦いに身を投じていくことになりました。

光太郎と信彦の19歳の誕生パーティが行なわれたものの、これが悲劇的な宿命の始まりになろうとは2人は知るよしもなかった(写真は本作ロケ地のRistorante Ao 逗子マリーナ 2023年筆者撮影)。
光太郎と信彦の19歳の誕生パーティが行なわれたものの、これが悲劇的な宿命の始まりになろうとは2人は知るよしもなかった(写真は本作ロケ地のRistorante Ao 逗子マリーナ 2023年筆者撮影)。

しかし信彦はゴルゴムを脱出することができませんでした。事故の影響で眠りについていたものの、彼はゴルゴムの幹部達(三神官)の力で目を覚まし、世紀王・シャドームーンとして活動するようになります。しかし信彦の記憶と感情、その大半は失われており、家族同然であった光太郎に容赦なく襲いかかります。ゴルゴムの幹部達さえ従えるその力は強大。なんとBLACKを一度倒してしまいました。

BLACKとの直接対決を征したことで、ゴルゴムの君主である創世王より、BLACKの体内にあるキングストーンの取り出しを命じられますが・・・なんとシャドームーン、「だが、できない!」と命令を一蹴してしまいます。この時のシャドームーンですが、光太郎を傷つけることに躊躇し、動揺しているようにさえ感じられました。この判断は僅かに残っていた信彦の意識だったのかはわかりません。彼自身、信彦だった頃の恋人と妹の前に現れ、ゴルゴムによる日本制圧開始を宣言し、自分のもとに来ないかと誘う行動をとる等、人類の文明を破壊するシャドームーンになりきれない節もあったのです。

シャドームーンは、仮面ライダーBLACKと同様、家族同然に共に育ってきた親友と殺し合う宿命を背負わされることとなった。果たして信彦の心は本当に失われてしまったのだろうか・・・?(筆者撮影)
シャドームーンは、仮面ライダーBLACKと同様、家族同然に共に育ってきた親友と殺し合う宿命を背負わされることとなった。果たして信彦の心は本当に失われてしまったのだろうか・・・?(筆者撮影)

シャドームーンがBLACKを倒し、BLACKがその姿を消したことでゴルゴムの日本大進撃が始まります。あらゆる物を破壊し、人々を恐怖のどん底にたたき落とし、空路や海路を通じて国外退去を図る国民が続出したほか、人が人を襲い略奪を行なう状況の創出、さらにはゴルゴムに従属し子ども達の誘拐を図る「ゴルゴム親衛隊」を自称する若者達さえ現れました(仮面ライダーを倒した上、ここまで日本を追い詰めたゴルゴム・・・歴代仮面ライダーシリーズの悪の組織の中でも、実績や戦力共に優秀な組織だったとは思います。)。

しかし、仮面ライダーBLACKの復活により状況は一変します。なんとBLACKを助けたのはゴルゴムの怪人(クジラ怪人)であり、復活したBLACKはシャドームーンとの最終決戦に挑みます。シャドームーンはBLACKに撃破され、ゴルゴムを率いていた創世王もBLACKによって倒されます。崩壊するゴルゴム神殿(ゴルゴムのアジト)の中で横たわり、シャドームーンはその姿を消しました。果たして、BLACKとシャドームーンの宿命の戦いは、これで終わったのでしょうか・・・?

【生きていた影の王子!】シャドームーンの復活と大逆襲!そしてその結末は・・・?

ここまで上述してきた『仮面ライダーBLACK(1987)』は、仮面ライダーBLACKとシャドームーンとの2人の創世王候補の対決に重きが置かれ、全51話の物語を完結させました。しかし、好評を博した『仮面ライダーBLACK(1987)』は、その続編として『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の制作が決定します。

『仮面ライダーBLACK(1987)』に続き、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』のBlu-rayも東映ビデオより全3巻が発売された(筆者撮影)。
『仮面ライダーBLACK(1987)』に続き、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』のBlu-rayも東映ビデオより全3巻が発売された(筆者撮影)。

その物語は、仮面ライダーBLACKが暗黒結社・ゴルゴムとの戦いを終えた後の世界を舞台に、新たなる悪の組織(怪魔界と呼ばれる異世界からやって来た悪の独裁国家)であるクライシス帝国と、宇宙の太陽エネルギーを浴びてパワーアップした仮面ライダーBLACK RXとの戦いを描いた物語。

『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の特徴のひとつが、状況に応じた仮面ライダーの変身能力。RXは悲しみの王子・ロボライダー(左)、怒りの王子・バイオライダー(右)に変身して戦う(筆者撮影)。
『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の特徴のひとつが、状況に応じた仮面ライダーの変身能力。RXは悲しみの王子・ロボライダー(左)、怒りの王子・バイオライダー(右)に変身して戦う(筆者撮影)。

本作も南光太郎が主人公ですが、2年連続で同じ主人公が続投しながら、異なる仮面ライダー(仮面ライダーBLACK、仮面ライダーBLACK RX)に変身することはシリーズ初の試みでした。さらに仮面ライダーBLACK RXは過去の仮面ライダーではなかった新たな「変身能力」が導入され、これまでの仮面ライダーは1つの姿で戦うのが原則だったのに対し(一部例外もあり)、RXは3つの姿を持ち、戦いの中で状況に応じて姿を使い分ける能力が描写されました。

キャスティングも豪華で、敵側であるクライシス帝国の幹部・マリバロンを高畑淳子さんが熱演し、南光太郎の仲間である霞のジョー役に人気声優・ナレーターである小山力也さん、さらには RXのピンチに、仮面ライダー1号をはじめとする10人の先輩仮面ライダーが駆けつける展開も描かれました。

RXのピンチに、1号からZX(ゼクロス)までの10人の先輩仮面ライダー達が駆けつける。世界各地でクライシス帝国と闘っていた10人の仮面ライダー達が日本に集結し、RXの活躍を支援した(筆者撮影)。
RXのピンチに、1号からZX(ゼクロス)までの10人の先輩仮面ライダー達が駆けつける。世界各地でクライシス帝国と闘っていた10人の仮面ライダー達が日本に集結し、RXの活躍を支援した(筆者撮影)。

これだけ列挙するだけでも十分内容は華やかなのですが、この『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の世界に、シャドームーンは復活します。確かにシャドームーンはBLACKに破れ、ゴルゴム崩壊の中で瓦礫に埋もれながら姿を消していました。しかし、彼は全ての記憶を失った状態でRXの前に現れ、RXを倒すためにクライシス帝国と共闘します。

シャドームーンは単に仮面ライダーBLACKのライバルとしてだけではなく、『仮面ライダーBLACK(1987)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の物語を繋げる重要な役割を果たしていた。
シャドームーンは単に仮面ライダーBLACKのライバルとしてだけではなく、『仮面ライダーBLACK(1987)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の物語を繋げる重要な役割を果たしていた。

・・・ところがクライシス帝国はシャドームーンを捨て駒としか考えていませんでした。強大な力を持つシャドームーンによって自らの地位が危うくなることを恐れた幹部達は、「富士山大噴火計画」と呼ばれる作戦を立案します。富士山を大噴火させて、山中で戦っているシャドームーンとRX、両者ごと巻き込んで消してしまおうと考えたのです。

「心配するなRX。その子どもと父親は、あの世で再会できる。」捕らえられた子どももろとも、富士山の噴火でシャドームーンとRXを焼き殺さんと嘲笑するクライシス帝国の幹部達。写真はその一人、ガテゾーン。
「心配するなRX。その子どもと父親は、あの世で再会できる。」捕らえられた子どももろとも、富士山の噴火でシャドームーンとRXを焼き殺さんと嘲笑するクライシス帝国の幹部達。写真はその一人、ガテゾーン。

「富士山大噴火計画」を実行する怪人(マットボット)に計画を自白させ、さらに自らが陥れられたことを知ったシャドームーン。RXとの純然たる決着を望んでいた彼ですが、クライシス帝国の怪人に捕われ、鎖で岩に括り付けられながら噴火の炎に包まれる2人の子ども達の姿を見ます。仮面ライダーに助けを求める子ども達。子ども達を救出するため、RXはシャドームーンに最後の戦いを挑み、渾身の一撃を与えます。

「・・・見事だ。RX。俺の負けだ。」(シャドームーン)

「シャドームーン。一緒にここを脱出しよう。」(RX)

「聞け。クライシスはあの山を噴火させるつもりだ(中略)。行け、RX!あの子ども達のことは俺に任せろ。無事に送り届けるくらいの力なら、まだ残っている。」

「信彦!!」(RX)

RXはシャドームーンの仮面の下に、家族同然に育ってきた親友・信彦の笑顔を見ます。

「我が名はシャドームーン。いずれ再び蘇り、仮面ライダーBLACK RX・・・お前に勝負を挑む!誰にも、お前の首は渡さん!ぐずぐずするな!行け!RX!」(シャドームーン)

強烈な炎の中で「助けて、助けて」と縛られながら助けを求める子ども達。シャドームーンは燃える炎の中に歩を進めます。

「シャドームーン・・・頼んだぞ!子ども達を!」(RX)

RXはその後、噴火事件の張本人であった怪人(マットボット)を見つけ出して退治します。

怪人を倒したことで、事件は解決しました。

子ども達を牧場(家)に送り届け、シャドームーンは牧場の草地の上で、花に囲まれながら眠ります。「ねえ、どうしたの?」「死んじゃったの?」と眠るシャドームーンのもとに手を置く子ども達。そんな子ども達のもとに、光太郎は歩み寄ります。

シャドームーンは、緑豊かな草地と色とりどりの花々に包まれ、安らかに眠っていた。(ニュージーランド南島・クライストチャーチ市内にて2017年撮影 )
シャドームーンは、緑豊かな草地と色とりどりの花々に包まれ、安らかに眠っていた。(ニュージーランド南島・クライストチャーチ市内にて2017年撮影 )

「大丈夫だよ。少し疲れて眠っているだけだから。さあ、パパのところにお帰り。」(光太郎)

光太郎はシャドームーンを抱き上げます。親友だった信彦の顔を思い浮かべる光太郎。

「あれは幻だったのだろうか。いや違う。あれは、幻などではない。最後の最後に、シャドームーンは信彦に戻ったのだ。」(劇中ナレーション)

光太郎はシャドームーンを抱き上げながら、静かに歩を進めます。そして光太郎の腕の中に眠るシャドームーンの姿は、信彦に戻っていました。光太郎は悲しみを胸に、クライシス帝国との最終決戦に挑み、ついに首領格であったクライシス皇帝を討ち滅ぼします。戦いを終えた光太郎は、自身を鍛え上げるための旅へと出るのでした。

光太郎(仮面ライダーBLACK)と信彦(シャドームーン)、本来ゴルゴムなんていなければ、二人は唯一無二の親友として同じ時間を過ごしていたはずでした。しかし混沌たる悪意によって二人は引き裂かれ、殺し合う宿命を背負わされたのです。しかし最終的に信彦は人間としての心を取り戻し、燃えたぎる炎の中へ子ども達の救出に向かいます。シャドームーンは対局の存在であった仮面ライダーBLACKと異なり、「仮面ライダー」の名を冠してはいません。しかし助けを求める子ども達の声を聞き、己の命を散らして子ども達の命を救った。その満身創痍の彼の姿こそ、唯一無二の「仮面ライダー」以外他ならなかったのです。

【仮面ライダー世界にかける!】アメリカで活性化する歴代仮面ライダー達の躍進とは?

ここまで上述してきた『仮面ライダーBLACK(1987)』、『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の物語。2年に及んだ仮面ライダーBLACK(RX)とシャドームーンの戦いの物語は、シャドームーンの死によって終幕を迎えます。

『仮面ライダーBLACK RX(1988)』の放送終了後も、平成、令和と世代を超えて仮面ライダーシリーズの歴史は続いていくことになりますが、仮面ライダーBLACK(RX)は後輩仮面ライダーのピンチに駆けつけたり、時に自らの力を託すことさえありました。

『BLACK RX』放送終了後も、BLACK(RX)は後輩仮面ライダー達の窮地に何度も駆けつけただけでなく、彼の力を宿したアイテムを使用する善・悪の後輩仮面ライダーもそれぞれ現れた。
『BLACK RX』放送終了後も、BLACK(RX)は後輩仮面ライダー達の窮地に何度も駆けつけただけでなく、彼の力を宿したアイテムを使用する善・悪の後輩仮面ライダーもそれぞれ現れた。

そんな仮面ライダーBLACK(RX)の活躍ですが、国内に留まりませんでした。

『仮面ライダーBLACK RX(1988)』は、『SABAN's MASKED RIDER(マスクドライダー)』と題して、1995年から1996年にかけてアメリカで放送されました。

本作は、日本で放送されたテレビ番組『仮面ライダーBLACK RX(1988)』をベースに、現地俳優さん達の出演シーンのみ新しく撮影し、着ぐるみを使った戦闘シーンは日本で撮影した映像を流用した約30分の番組でした。

宇宙の惑星からやって来たデックス王子がマスクドライダー(BLACK RX)に変身して、悪の軍団から地球を守るお話として放送された本作ですが、主人公のマスクドライダーは同時期に放送されていた米国版スーパー戦隊シリーズ『Mighty Morphin Power Rangers』にもゲスト出演し、パワーレンジャー(恐竜戦隊ジュウレンジャー)と夢の共闘を果たしました。

マスクドライダー(BLACK RX)が登場したのは、『パワーレンジャー』第3シーズンの「A Friend in Need」というお話。(写真は本作のDVD-BOX。筆者撮影)
マスクドライダー(BLACK RX)が登場したのは、『パワーレンジャー』第3シーズンの「A Friend in Need」というお話。(写真は本作のDVD-BOX。筆者撮影)

一見、仮面ライダーとアメリカとの結びつきは想像しにくいかも知れませんが、現在にかけて同国での仮面ライダーシリーズの挑戦は続いており、特にコロナ禍を経た現在は、地元での生活において仮面ライダーシリーズと出会う機会が徐々に増えてきた印象です。

たとえば、2008年に『仮面ライダー龍騎(2002)』をベースとした『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT(仮面ライダードラゴンナイト)』がアメリカで放送されたものの、残念ながらヒットに至らず、全40話で放送が終了する形となりました。

平成仮面ライダーシリーズ第3作『仮面ライダー龍騎(2002)』では、「戦わなければ生き残れない」を作品のテーマに、自身の願いを叶えるための13人の仮面ライダー同士の殺し合いが描かれた(筆者撮影)。
平成仮面ライダーシリーズ第3作『仮面ライダー龍騎(2002)』では、「戦わなければ生き残れない」を作品のテーマに、自身の願いを叶えるための13人の仮面ライダー同士の殺し合いが描かれた(筆者撮影)。

米国での『仮面ライダードラゴンナイト』放送に併せ、作品本編に登場したアドベントカードもアメリカで複数種発売された。日本版はなりきり玩具に同梱されていたのに対し、米国ではアクションフィギュアに同梱。
米国での『仮面ライダードラゴンナイト』放送に併せ、作品本編に登場したアドベントカードもアメリカで複数種発売された。日本版はなりきり玩具に同梱されていたのに対し、米国ではアクションフィギュアに同梱。

しかしアメリカでは、『ドラゴンナイト』放送終了後もフィギュアやDVD等の「商品」の販売は続いており、(写真のように)フロリダ州のディズニーリゾート内ではフィギュアが発売され、ハワイ州の大型商業施設「アラモアナショッピングセンター」では『仮面ライダーV3(1973)』の現地向けDVDやTシャツが購入できる状況でした。

フロリダのウォルトディズニーワールドリゾート内「EPCOT」日本館では、フィギュアーツをはじめ仮面ライダーシリーズの玩具も発売されており、ディズニーパークスの中で購入できる極めて希有な状況ではあった。
フロリダのウォルトディズニーワールドリゾート内「EPCOT」日本館では、フィギュアーツをはじめ仮面ライダーシリーズの玩具も発売されており、ディズニーパークスの中で購入できる極めて希有な状況ではあった。

ハワイの大型商業施設「アラモアナショッピングセンター」内のShirokiyaでは、現地で大人気の特撮ヒーロー・キカイダーと共に、仮面ライダーV3のDVDやTシャツも発売された。(2015年筆者撮影)
ハワイの大型商業施設「アラモアナショッピングセンター」内のShirokiyaでは、現地で大人気の特撮ヒーロー・キカイダーと共に、仮面ライダーV3のDVDやTシャツも発売された。(2015年筆者撮影)

新型コロナウイルスのパンデミックを経た現在は、米国内で高橋文哉さん主演の『仮面ライダーゼロワン(2019)』のコミック(タイトル:Kamen Rider Zero-One)展開が行なわれているほか、レコードショップに行けば歴代仮面ライダーシリーズのBlu-rayが、気軽に手に取れる上に購入可能な状況まで至っています。

令和仮面ライダーシリーズ第1作『仮面ライダーゼロワン(2019)』は、米国でのBlu-ray BOXの販売の他、コミックスによる展開も行なわれている(筆者撮影)。
令和仮面ライダーシリーズ第1作『仮面ライダーゼロワン(2019)』は、米国でのBlu-ray BOXの販売の他、コミックスによる展開も行なわれている(筆者撮影)。

現在まで『仮面ライダークウガ(2000)』、『仮面ライダー龍騎(2002)』、『仮面ライダーゼロワン(2019)』、そして本記事で取り上げた『仮面ライダーBlack(1987)』、『仮面ライダーBlack RX(1988)』、がリリースされていますが、4月には『仮面ライダーギーツ(2022)』のBlu-ray BOXが発売予定です。

平成仮面ライダーシリーズ第1作『仮面ライダークウガ(2000)』も、現在米国ではBlu-rayも発売されている。日本版(左)は全3巻であるのに対し、米国版は1巻でコンパクトに全話揃うのが本製品の魅力。
平成仮面ライダーシリーズ第1作『仮面ライダークウガ(2000)』も、現在米国ではBlu-rayも発売されている。日本版(左)は全3巻であるのに対し、米国版は1巻でコンパクトに全話揃うのが本製品の魅力。

私事ですが、先日ハワイに里帰りした際、現地の本屋さんやレコードショップで存在感を発揮する歴代仮面ライダーの姿を見かけるようになったほか、靴屋さんの店員さんが東映特撮ヒーローのファンで、『仮面ライダーカブト(2006)』や『仮面ライダーディケイド(2009)』の話で盛り上がる機会に恵まれた等、(主観的ではありますが)コロナ禍を経てハワイでも少しずつ平成・令和の仮面ライダーシリーズが浸透してきたなという印象でした。

令和の時代を迎えた近年も、平成仮面ライダーシリーズの進化は続いている。放送20周年を迎えた『仮面ライダー555(2003)』も、続編映画が2024年に日本で公開された他、新商品の展開も続いている。
令和の時代を迎えた近年も、平成仮面ライダーシリーズの進化は続いている。放送20周年を迎えた『仮面ライダー555(2003)』も、続編映画が2024年に日本で公開された他、新商品の展開も続いている。

ハワイもネット配信サービスや電子書籍の台頭で、コロナ以前より本屋さんがどんどん減少している上、州内のレコードショップの中には規模を縮小して経営しているお店もあるので、現地の書籍・ソフト情勢の未来は必ずしも「明るい」と断定はできませんが、仮面ライダーシリーズにはこれからも力強く頑張って頂きたいものです。

このように、アメリカでもコミックやBlu-ray等で歴代の仮面ライダー達が活躍するようになった昨今。

日本で仮面ライダーシリーズが走り続けているように、アメリカでも仮面ライダーシリーズの挑戦が続いています。

いつか皆さまのお気に入りの仮面ライダーの姿が、アメリカの日常の中で浸透していく日も、そう遠くはないのかも知れません。

最後までご覧頂きまして誠にありがとうございました。

『仮面ライダーBLACK』の放送から約35年後、その志を継承した『仮面ライダーBLACKSUN(2022)』がプライムビデオにて配信された。ブラックとシャドームーンの戦いは世代を超えて描かれ続けている
『仮面ライダーBLACK』の放送から約35年後、その志を継承した『仮面ライダーBLACKSUN(2022)』がプライムビデオにて配信された。ブラックとシャドームーンの戦いは世代を超えて描かれ続けている

(参考文献)
・JODY REVENSON・RAMIN ZAHED、『SABSAN'S POWER RANGERS THE ULTIMATE VISUAL HISTORY』、INSIGHT EDITIONS
・BRANDON EASTON、『KAMEN RIDER ZERO-ONE』、TITAN COMICS
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー昭和 Vol.10 仮面ライダーBLACK』、株式会社講談社
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー昭和 Vol.11 仮面ライダーBLACK RX』、株式会社講談社
・宇城卓秀、『僕たちの「仮面ライダー」怪人ランキング』、株式会社宝島社

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

二重作昌満の最近の記事