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木村拓哉主演『レジェンド&バタフライ』入門 織田信長は本当にうつけだったのか?

濱田浩一郎歴史家・作家

俳優の木村拓哉さんが主演する映画『レジェンド&バタフライ』(以下『レジェンド』と略記)が1月27日より公開となりました。木村さん演じるのは、誰もが知る戦国武将・織田信長。

映画は、信長の妻となる濃姫(美濃国=今の岐阜県の大名・斉藤道三の娘。演じるのは、綾瀬はるかさん)が尾張(愛知県西半部)に嫁いでくるシーンから始まります。濃姫は天文18年(1549)頃に信長に嫁いだと言われています。

信長は天文3年(1534)の生まれですから、その時、15歳。今で言えば、中学3年生くらいの年齢です。一方の濃姫は天文4年(1535)に誕生したと言われますが、定かではありません。

信長の家臣・太田牛一が記した書物『信長公記』によると、この縁組を立案したのは、織田家の重臣・平手政秀だったようです。平手は、信長の傅役を務めていました。信長の 父・織田信秀と美濃の斉藤氏は対立していましたが、和解することになり、その証しとして縁組となったのです。

『レジェンド』における若い頃の信長も奇抜な出立ちをしていましたが、その事は『信長公記』にも記されています。

「火打ち袋など様々なものを身につけ」「髪は茶せん髷にし、髻(髪を頭上で束ね集めたところ)を紅や萌黄色の糸で巻き立て結い」「朱鞘の太刀をさし」という格好だったとのこと。

更には、町を歩く時も、人目を憚らず、栗・柿・瓜にかぶりつき、餅を頬張る有様。また、人の肩にぶら下がるようにして歩いたと同書には書かれています。お行儀が悪かったということで、人々は信長のことを「大うつけ(大馬鹿者)」と軽蔑していたのでした。

確かに、これだけ見れば、単なる「ばか殿」なのかもしれませんが、同書には同時に、信長が乗馬、水泳、弓や鷹狩、兵法、鉄砲の稽古までしていたことが書かれているのです。更には、竹槍の叩き合いを見て「短い竹槍であってはダメだ」と指摘し、より長い槍に代えさせてい るのです。この点を見れば「大うつけ」ではないことは一目瞭然。

『レジェンド』でも「格好ばかりの信長」と紹介されていますが、現実には、武将として、織田家の跡取りとして有望だったと言えましょう。そのような信長のもとに、濃姫は嫁いできたのです。奇抜な出立ちの信長に濃姫は驚いたでしょうか?

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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