木村拓哉主演『レジェンド&バタフライ』織田信長は本当に「魔王」だったのか?
木村拓哉さんが戦国大名・織田信長を演じる映画『レジェンド&バタフライ』が公開中です。信長と言えば、暴君・独裁者そして「魔王」のイメージが強いかと思います。劇中でも、信長自ら「第六天の魔王だ」と宣言する場合がありましたが、では本当にそんなに怖い人間だったのでしょうか?
信長の家臣・太田牛一が記した書物『信長公記』には、我々がイメージする信長とは真逆の「人間・信長」も描かれているのです。
天正3年(1575)の話と言いますから、それは比叡山の焼き討ち(1571年)や、足利将軍・義昭の追放(1573年)後のことになります。話の舞台は、美濃国(岐阜県)と近江国(滋賀県)との境にある山中という場所です。
その山中の道脇に、雨露に打たれる1人のホームレスがおりました。そのホームレスは、身体に障害も持っていたのです。信長はそのホームレスの姿を、京都・岐阜の往復の度によく見ていました。
普通ならば、そのまま通り過ぎる人が多いでしょうが、信長は違いました。とても可哀想に思い、山中の住民にホームレスのことを聞いたのです。「ホームレスは流浪する者が多いのに、なぜあの者はあそこにずっといるのか?」と。
住民は「あの者の先祖は常盤御前(平安時代末の武将・源義経の母)を殺したということです。その罪業により、子孫には代々、障害が出て、あのようにホームレスとなっているのです」と答えます。
同年6月下旬、信長は京にのぼる途中、忙しいにもかかわらず、山中に立ち寄ります。そして、木綿20反をホームレスに与えるのです。それだけでなく、住民を集めた上で「あのホームレスに情をかけてやって欲しい。この反物を売って、誰かの家の隣にあのホームレスの小屋(家)を建てて欲しいのだ。ホームレスが餓死しないように米や麦を与えてくれたら、私は嬉しい」と言葉をかけるのでした。
信長の温かい言葉に、ホームレスのみならず、住民や供の者まで涙を流したとのことです。信長のこのエピソード、皆さんはどのように感じましたか?私には、信長が他人に良いところを見せようとして、こうした善行をしたとは思えません。
冷酷と思われがちな信長ですが、同情心や温かい心はしっかりとあったのです。