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木村拓哉主演『レジェンド&バタフライ』入門 織田信長が弟との対決で見せた意外な態度

濱田浩一郎歴史家・作家

木村拓哉さんが主演する映画『レジェンド&バタフライ』(以下、『レジェンド』と略記)が公開され、多くの人々が観覧。「良い映画を見た」と絶賛しています。『レジェンド』を見て感動した人には、是非、1998年に放送されたテレビドラマ『織田信長 天下を取ったバカ』(TBS系列)も見て欲しいと思います。

同ドラマも木村拓哉さんが主演し、信長を演じています。『レジェンド』と違い、信長の青年期を中心とした時代劇です。よって、『レジェンド』では詳しく描かれない信長と父母(織田信秀・土田御前)や弟・織田信行(近年では信勝と表記されることが多い)との関係が濃密に描かれているのです。

『天下を取ったバカ』の大きな主題の1つが、信長と弟・信行との関係を描くことにあったと思います。ドラマにおいて信行を演じるのは、筒井道隆さん。

信行は破天荒な信長とは違い品行方正。ドラマにおいて、信長と信行とは仲が悪い訳ではありませんでしたが、父・信秀死後の家督をめぐる問題により、仲を引き裂かれていきます。その結末がどうなるかは、是非、ドラマを見て欲しいと思います。

さて、史実においても、信行は兄・信長に反旗を翻しています。信長ではなく、信行に家督を継いで欲しいと希望する織田家の家臣(林通勝や柴田勝家など)もいたのです。『信長公記』(信長の家臣・太田牛一が記した信長の一代記)には、この林通勝・林美作守兄弟の画策により、信長と信行の関係が悪くなったと記されています。

また、信行も信長の直轄領を押領。こうして、骨肉の争いが起こるのです。しかし、戦は信長方の勝利に終わります(1556年)。謀叛するも窮地に立った信行。

彼を救ったのが、母の土田御前でした。ちなみにドラマでは、土田御前をいしだあゆみさんが演じているのですが、信長を野蛮だとして嫌い、信行を溺愛する意地悪で冷酷な母として描かれています。

土田御前は、信長に使者を派遣し、謝罪と信行を赦すように願い出たようです。信長も説得されて、信行を許すことにします。これを受けて、土田御前や信行、柴田勝家らは、信長がいる清須に出向き、罪を許してくれた御礼を申し上げたようです。

謀叛人など許さぬとしてすぐに切り捨ててしまうのが、世間一般の信長のイメージかもしれませんが、意外とそうではなかったのです。ここからも、信長の温情がうかがえると思います。

また、ドラマや漫画においては、信長と母・土田御前は仲が悪いように描かれますが、『信長公記』などを見ているとそうではなかったのではないかと感じます。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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