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木村拓哉主演『レジェンド&バタフライ』織田信長は濃姫の故郷・美濃をどのように陥落させたのか?

濱田浩一郎歴史家・作家

木村拓哉さんが主演の映画『レジェンド&バタフライ』が絶賛公開中です。木村さんが演じるのは、誰もが知る戦国武将・織田信長。その妻・濃姫を女優の綾瀬はるかさんが演じています。濃姫は、美濃国(今の岐阜県)の大名・斉藤道三の娘として生を受けます。そして、尾張国(愛知県西部)の信長のもとに嫁いでくるのです。

だが、濃姫の父・道三は弘治2年(1556)4月、死去。それは平穏な畳の上の死ではなく、乱世に相応しい、嫡男・斉藤義龍との骨肉の争いに敗れての死でありました。信長は義父・道三の救援のため、出陣しますが「道三は既に敗死した」との報を得て、引き上げることになります。

桶狭間の戦い(1560年)を経て、尾張一国をほぼ平定した信長の次なる目標は、濃姫の故郷・美濃攻略でした。が、この美濃攻略の模様については映画『レジェンド』では省かれています。では、信長はどのようにして美濃を攻め取ったのでしょう?先ず、道三を殺した息子の義龍は、永禄4年(1561)5月に病死。後継となったのは、14歳と若年の斉藤龍興でした。

直後に信長は美濃に出陣していますので、年少の当主誕生を好機と見たのでしょう。この時、織田軍は戦に勝利しますが、美濃一国を攻め取るまでには至りません。が、斉藤氏の家中でゴタゴタがあり、竹中半兵衛重治が安藤守就と共に、斉藤氏の居城・稲葉山城を奪い取るという事件(1564年)もその後、発生しています(後に龍興は城を奪回)。

信長は、度々、美濃に向けて出陣するも、時に負け戦となることもあり(1566年)、稲葉山城の攻略は困難を極めました。転機となったのが、永禄10年(1567)8月のこと。斉藤氏の家臣・美濃三人衆の稲葉良通・氏家卜全・安藤守就が信長に寝返ったのです。

この裏切りを好機として、信長は一気に稲葉山に攻め込んだのです(『信長公記』)。こうして、信長は美濃を攻略。斉藤龍興は、城を抜け出し、長島に逃亡するのです。映画において、美濃攻略がなり、信長と濃姫が稲葉山を馬で駆けるシーンが印象的ですが、それまでにはこれまで記してきたような経緯があったのでした。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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