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木村拓哉主演『レジェンド&バタフライ』入門 織田信長が「岐阜」という地名を付けた納得の理由

濱田浩一郎歴史家・作家

木村拓哉さん主演の映画『レジェンド&バタフライ』が公開されています。木村さんが演じるのは、戦国大名の織田信長。信長は尾張(愛知県西部)一国を平定し、次に美濃国(岐阜県)の斉藤氏を攻略します。これが永禄10年(1567)のことでした。

ちなみに、美濃国は、信長の妻・濃姫(斉藤道三の娘。映画では綾瀬はるかさんが演じる)の故郷でもあります。美濃の稲葉山城を攻めて、斉藤氏を追い落とした信長。『信長公記』(信長の家臣・太田牛一が記した信長の一代記)によると、その直後、信長は尾張の小牧から稲葉山に移ったのでした。そして、信長はあることを行います。

稲葉山城下は「井口」(いのくち)という地名だったのですが「岐阜」と改めたのです(『信長公記』)。では、信長はどのようにして、岐阜という地名を付けたのでしょうか?

『安土創業録』という江戸時代中期に成立した文献によると、信長は井口に沢彦宗恩(たくげんそうおん)という僧侶を呼び寄せます。井口にやって来た沢彦は信長と対面。すると信長は、沢彦にこう言ったとされます。「井口では城の名が悪い。名を変えてくれ」と。

信長の要望を受けて、沢彦は「岐山・岐陽・岐阜、この3つのなかから、好きなものを選んでください」と言上。それを受けて、信長は「岐阜」が良いと決断するのです。その理由は何か。「多くの人が言いやすいから」だというのです。

沢彦は「その昔、中国・周の時代に、文王(紀元前11世紀頃の君主)が岐山(きざん)というところに都を置き、天下を制していきました。それに因んで岐阜と名付けたのです」とも信長に伝えます。天下を制する縁起の良い地名だと言うのです。沢彦の言に信長は大変喜び、褒美を与えたとされます。

もちろん、この逸話は、江戸時代中期の書物に記されたというものであり、信憑性という面から見れば、低いものです。しかし「多くの人が言いやすいから」という理由で、信長が岐阜を選んだというのは、なんだかほっこりする話ですし、信長ならば考えそうなことと思うのは私だけでしょうか。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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