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新宿歌舞伎町に忍者屋敷があるって本当?

濱田浩一郎歴史家・作家

新宿歌舞伎町ークラブやバーが軒を連ね、昼であっても独特の雰囲気を醸し出している眠らない街。そんな新宿歌舞伎町に忍者屋敷があることを皆さんはご存知だろうか?その名は「手裏剣道場 新宿忍者からくり屋敷 Ninja Trick House in Tokyo」。

 新宿駅東口から徒歩約10分のところに、その忍者屋敷はある。実は、私は前々からその存在を知っていて、いつかは訪問したいと考えていた。そしてついに2023年2月9日に念願が叶ったのだ。

 新宿にある第一和幸ビルの階段を登って4階に着くと、そこには鳥居が林立し、しめ縄が飾られている「異世界」が広がっていた。これから何が起こるのか?何が待っているのか?ワクワクさせてくれる光景だ。

忍者屋敷の入り口には鳥居が並び立つ
忍者屋敷の入り口には鳥居が並び立つ

 鳥居を潜り抜けると、忍者屋敷を運営する湯本智之氏(株式会社レガシー代表)の姿があった。お会計(大人は3200円。ちなみに子供は2800円、幼児1000円の料金)を済ました後に、案内されたのは「忍」の文字の掛け軸が飾られた和室。

 和室では、忍者とはどういうものかを解説する約5分ほどのアニメが上映される。「忍者の衣装について」「忍者刀」「手裏剣」などの武器のほか、忍者にまつわる12項目が手際よくアニメと文字で解説されてゆく。このアニメを観れば、忍者がどういうものか、任務とは何かが分かるようになっているのだ。

  アニメを見終わると、突如現れたのが「忍者」だ!忍者からまず渡されたのが、刀(模造刀)。その刀を持って、掛け軸の前で写真をパシャリ。忍者は、ドンドンと私の写真を撮ってくれる。「いい構えですね!」「良い感じですね!」と忍者からお声がけ頂いて、嬉しい気持ちになってしまう。

刀を持ってハイ、ポーズ!
刀を持ってハイ、ポーズ!

 写真撮影のあと、忍者屋敷のトリックについての解説があった。床や畳がパカっと開いたりして、あっと驚く仕掛けが眼前で展開されていく。忍者道具の説明も忍者にして頂いた。

 その一例をご紹介すると「マキビシ」(撒き菱)。忍者が逃げる時などに地上にばら撒く道具として知られているが、マキビシは何の材料で出来ているのか?鉄だという印象が強いが、さにあらず。水草のヒシを乾燥させたもので作られているのだ。鉄製は重たいので、忍者は携帯しないのだそうだ。

  道具の説明の後は、忍者からの「クナイ」(忍者が使用した両刃の道具。敵に投げつけるだけでなく、これで壁を登ったりもしたという)での攻撃を刀で受け止めたりといった実演があった。童心にかえった気分だ。

  続いて別室(和室)に移動するのだが、そこには一体の人形が。今度はその人形めがけて鞘を抜き、刀で斬りつける体験をするのだ。刀を初めて抜く人でも大丈夫!ちゃんと忍者がやり方を教えてくれる。

抜刀して人形を斬る!
抜刀して人形を斬る!

何度か思い切り、刀で人形を叩いた後は、メインディッシュとも言うべき、手裏剣投げ、クナイ投げが待っている。 手裏剣やクナイを的に向けて投げつけるのだ。これが、なかなか難しい(でも面白い)。勢いよく投げても、命中しない。

手裏剣投げに挑戦
手裏剣投げに挑戦

 しかし、手持ちの手裏剣、クナイはかなり多い(およそ20回ほどは投げたか)ので、ドンドン挑戦できる。手裏剣投げも最後の方になると、1回そして2回と命中するようになった。私の印象としては、クナイ投げのほうが難しく、ついに一回も的に命中することはなかった。そして、ここでもまた記念の写真撮影。

手裏剣と記念撮影
手裏剣と記念撮影

 手裏剣投げの後は、九字護身法という「忍者の儀式」を忍者とともにやって、お開きとなる。ここまでで、約30分(1名の参加だと約30分、3~5名の体験で約40分の体験時間)。あっという間だったが、手裏剣、クナイ投げなど初体験のことが多く、濃密な時間だった。ビルの前の忍者屋敷の看板には「ストレス解消に!」との文字があったが、手裏剣を思い切り投げたので、スカッとした気持ちになった。

九字護身法
九字護身法

 帰る間際に、忍者屋敷を運営する湯本氏に「これは聞いておきたい」ということが何点かあったので、伺ってみた。1つ目の疑問は「渋谷でも池袋でもなく、なぜ新宿歌舞伎町に忍者屋敷をオープンしたのか?」ということだ。

 その理由は、湯本氏曰く「多くの人が訪れる新宿。観光などのついでに、または何かの隙間時間に、忍者屋敷で楽しんでもらいたいから」とのこと。確かに、約30分〜40分ほどで体験できるので、隙間時間にピッタリだ。

 ちなみに、湯本氏は1974年の生まれ。少年時代に訪れたからくり忍者屋敷での手裏剣投げなどの楽しい体験が忘れられず、忍者について独学で学ばれて、2016年に新宿忍者からくり屋敷をオープンするに至ったのだ。

 湯本氏は「多くの人が忍者について学ぶきっかけに、この忍者屋敷がなれば」と話す。また、新宿忍者からくり屋敷は「子供だけ、大人だけというのではなく、家族全員で楽しめるのが特色」とも述べられた。手裏剣投げや、刀の実演などは老若男女が楽しめるだろう。 湯本氏の今後の夢は「更に大きな施設で、忍者屋敷を開くこと」だという。

 新宿忍者からくり屋敷には、外国の人々の訪問も多いと聞いた。同屋敷には「英語」「中国語」「フランス語」「アラビア語」など様々な言語のパンフレットが置かれていた。新型コロナが落ち着きを見せ始めたという事もあり、最近では海外からのお客さんも増えているようだ。海外の方も忍者が大好きな人が多いとのことである。

様々な言語が記された資料
様々な言語が記された資料

  新宿忍者からくり屋敷は、私の想像を超えてグローバルだった。そして、忍者について気軽に学べて、ストレス発散にもなる楽しい場所だった。興味がある方は、是非、訪れてみては如何だろうか。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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