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【朝ドラらんまん】主人公のモデル・植物学者の牧野富太郎 幼年期の彼を襲った悲劇とは?

濱田浩一郎歴史家・作家

2023年度前期放送のNHK連続テレビ小説は「らんまん」。主人公は、槙野万太郎で、俳優の神木隆之介さんが演じます。槙野万太郎のモデルが、植物学者として有名な牧野富太郎博士(1862〜1957)です。

牧野博士は、幼少期から植物に関心を持ち、独学で植物について学び、明治17年(1884)には東京大学理学部植物学教室に出入りしつつ、植物の研究に更に没頭。ついには、『植物学雑誌』に、新種ヤマトグサを発表し、日本人として国内で初めて新種に学名をつけるという快挙を成し遂げるのです。

今に至るまでも、多くの人々に愛読されている『牧野日本植物図鑑』も刊行し、植物知識の普及にも、牧野博士は貢献しています。

その牧野博士が生まれたのは、文久2年(1862)といいますから江戸時代末期(幕末)です。連続テレビ小説において、幕末から描かれるのは「あさが来た」(2015年。実業家・教育者の広岡浅子を波瑠さんが演じた)以来となります。

さて、牧野博士が生まれたのは、現在の高知県高岡郡佐川町でした(高知県の旧国名は、土佐国です)。文久2年4月24日、牧野富太郎は生を受けますが、牧野博士によると、牧野家は「酒造りと雑貨店(小間物屋)」を営んでいたとのこと。牧野家は、佐川町でもかなりの旧家であり、町のなかでは「上流階級」の部類に属していたようです。

富太郎の父は、牧野佐平。親族の家から牧野家に養子に来た人でした。一方、母は久寿といいました。佐平と久寿の独り子として、富太郎は生まれたのですが、幼少期の彼に悲劇が襲います。

4歳の時(1866年)に父が病死、6歳の頃(1868年)には母まで病で亡くなってしまうのです。両親ともに30代の若さでした。

「私はまだ余り幼かったので父の顔も、母の顔も記憶にない。私はこのように両親に早く別れたので親の味というものを知らない」

後に牧野博士はそのように述懐されています(牧野富太郎『牧野富太郎自叙伝』講談社、2004年)。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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