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【朝ドラらんまん】植物学者・牧野富太郎も学んだ名教館から出た幕末の志士

濱田浩一郎歴史家・作家

2023年度前期放送のNHK連続テレビ小説は「らんまん」。主人公は、槙野万太郎で、俳優の神木隆之介さんが演じます。槙野万太郎のモデルが、植物学者として有名な牧野富太郎(1862〜1957)博士です。

9歳か10歳の頃に土居謙護の寺子屋に通い出した富太郎。その後、寺子屋を変えて、儒学者・伊藤蘭林の私塾で、四書・五経(儒教の書物で重要とされている書物)などを習います。伊藤塾には武士の子弟が多く、町人の出は、富太郎と山本富太郎の2人だけでした。

時は、幕末ー武士は町人よりも上座に座り「食事の時などは士族は士族流に町人は町人流に挨拶」(牧野富太郎『牧野富太郎自叙伝』講談社、2004年)していました。暫くして、寺子屋の制度が変わって、寺子屋が無くなってしまったので、富太郎は名教館(めいこうかん)に通うことになります。

名教館の創設は、1772年。佐川の領主・深尾茂澄(6代領主)が家塾として開きました。1802年には、深尾繁寛(7代領主)が名教館を発展させて「郷校」としました。家塾から郷校へ。深尾氏の一族子弟だけでなく、家臣の子弟も広く学べるようになったのです。

そして、幕末から明治へと時代は変わりますが、名教館は、藩校(致道館)の分校として残ります。その後、明治4年(1871)の廃藩置県により、土佐藩は消滅。名教館は、入学を士族だけでなく、庶民にまで広げますが、明治7年(1874)、佐川小学校の設立によって、その歴史(約100年)に幕を下ろします。

ちなみに、名教館は、幕末の志士も輩出しています。佐川出身の田中光顕(1843〜1939)です。田中は武市半平太らにより創設された土佐勤王党に参加(土佐勤王党にはあの坂本龍馬も参加していました)。志士として尊王攘夷運動に邁進します。維新後は、警視総監・宮中顧問官・宮内相などを歴任。昭和14年に95歳で死去しました。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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