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土用の丑の日の「土用」って何?なぜウナギを食べるのか?その意外な起源

濱田浩一郎歴史家・作家

令和5年(2023)の土用の丑の日は「7月30日」です。土用の丑の日に毎年、ウナギを食べる人も多いのではないでしょうか。それでは、土用の丑の日の「土用」って何でしょうか。

実は、この言葉には、陰陽五行説が関係しているのです。五行説とは、古代中国を起源とする自然哲学の思想であり「万物は木・火・土・金・水の5要素からなる」とする考え方。人々は、自然界や人間界にこの5行(要素)を当てはめようとしました。例えば、四季(春・夏・秋・冬)に、木・火・土・金・水を当てはめようとしたのですが、当然、四季に5つを配分するのは無理です。

そこで、春・夏・秋・冬に「木・火・金・水」をあて、各季節の終わりの18日余りに「土」を当てたのでした。これは「土曜用事」と呼ばれ、それを略したものが「土用」です。今では、土用というと「夏の土用」しか意識されませんが、各季節に配されていたのです。

夏の土用は、1年で最も暑いと言われていて、その丑の日には、元気が出るもの、精力がつくものを食べるという風習が日本であります。現代では、ウナギ一択といった感じですが、ニンニクや、あんころ餅、「う」の付く食べ物「うどん」を食べるところもありました。

土用の丑の日にウナギを食べる習慣は、江戸時代後期に始まったものです。当時の発明家・平賀源内が発案したとも言われますが、定かではありません。

平賀源内
平賀源内

奈良時代に編纂された我が国最古の歌集『万葉集』に、編纂者の1人・大伴家持の歌として「石麻呂に吾物申す 夏痩によしといふ物ぞ 鰻取り食せ」(石麻呂さんに申し上げます。夏痩せに良いというものがあります。どうぞ鰻を食べてください)というものがあります。

この頃に、夏、ウナギを食べることが習慣化していたかは判然としませんが、ウナギが夏バテに良いと考えられていたのは確かなようです。

私も夏バテ予防のため、土用の丑の日でなくても、できれば、夏(7月か8月)に1回は、ウナギを食べることにしています。今年は、前々から行ってみたいと考えていた銀座にある竹葉亭本店で、鰻丼を頂いてきました。

竹葉亭は、幕末に江戸で創業された老舗鰻料理店です。明治の文豪・夏目漱石の名作『吾輩は猫である』にも「久し振りで東京の鰻でも食っちゃあ。竹葉でも奢りましょう」という台詞で、竹葉亭が登場しています。

文豪・夏目漱石
文豪・夏目漱石

鰻丼や鰻重というと、4千・5千円するところも多いですが、竹葉亭本店は、3千円ほどで鰻丼を食することができます(お吸い物とお新香付き)。あくまで私の感想ですが、お店がある場所などを考えると、安めの価格設定だと思いました。

竹葉亭のウナギは、さっぱりした上品な味付けで、うなぎ自体もふっくらしていて、とても美味しかったです。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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