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明治時代創業の銀座和菓子店「空也」の人気最中を実食してみた

濱田浩一郎歴史家・作家

最中で有名な和菓子店「空也」は、明治17年(1884)に創業されました。現在は、東京都中央区銀座6丁目に店が構えられていますが、当初は上野池之端にありました。上野のお店は残念ながら、戦災で焼けてしまい、戦後の昭和24年(1949)に銀座に移転したのです。

ちなみに、明治17年というと、貞明皇后(大正天皇の皇后)や、海軍軍人の山本五十六が生まれた年でもあります。国外では、清仏戦争が勃発し、国内では加波山事件(自由党員の急進派が茨城県加波山を拠点に蜂起)や秩父事件(自由党員と農民が埼玉県秩父で蜂起)などが起こった年です。

「空也」という屋号は、初代店主が「関東空也衆」という踊り念仏の集まりに属していて、その仲間の支援で、お店を始めたことや、空也上人(平安時代中期の僧侶。諸国を巡り、阿弥陀念仏を唱え、社会事業を行った)の念仏に因んで付けられたとのこと。

「空也」は明治時代に創業されたこともあって、有名な文学作品(夏目漱石の『吾輩は猫である』1905年〜1906年に発表)にも、その和菓子が取り上げられることがありました。同書に「空也餅がくっ付いて居ましてね」とのセリフがありますが、空也餅は期間限定で、現代でも販売されています。

私が今回、購入して、頂いたのは、「空也もなか」(10個入り、1100円)です。この空也もなかは、ネット情報によると「とても人気で、当日店に行ったのではなかなか買えない。予約が必要」とあったので、訪問しても、即購入は難しいかと思っていたのですが、開店すぐに行くと、幸運にも購入することができました。空也もなかも、明治時代から作られていたと言われています。

あくまで、私が訪問した時は、行列に並ぶこともなかったです(しかし、お客が次々に駆け込んできていました)。空也はお店の栞によると「安くて美味しく、体に優しい安全な和菓子を出来る範囲でつくり、その日のうちに売り切る」のがスタイルのようです。また「保存料、添加物等は使用しておりません」とのこと。

最中を持ち帰り、袋を開けてみると、最中の香ばしい香りがしてきました。そして最中には、なめらかな粒あんが詰まっていて、頂くと、程よい甘みが口の中に広がります。抹茶によく合いました。明治時代創業の「空也」の最中、興味のある方は、食べてみては、如何でしょうか。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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