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【大河ドラマ光る君へ】清少納言は本当に自慢気で「しゃしゃり出る女」だったのか?

濱田浩一郎歴史家・作家

大河ドラマ「光る君へ」第6回「二人の才女」において、ファーストサマーウイカさんが演じる清少納言がいよいよ登場してきました。清少納言と言うと、今にまで読み継がれる随筆『枕草子』の作者として有名です。ドラマでは、自らの才能をひけらかす「しゃしゃり出る女」と評されていましたが、納言と並び称される紫式部は納言のことを「清少納言という人はとても自慢げにしている人です」(『紫式部日記』)と「罵倒」しています。

この式部の納言評に引き摺られるように、一昔前までは納言や『枕草子』のことを少し低く見る見解もありました。例えば、藤岡作太郎氏『国文学全史 平安朝篇』(一九〇六年)は『枕草子』を「多くの記事は自讃に充ちて清少納言が驕慢の性を表せり」と書いています。つまり『枕草子』の文章が自慢満載で、これは納言が傲慢な性格だからだというのです(誤解を招かないように述べておくと、同氏は納言の才能やその作品を全否定している訳ではありません)。納言は学識を誇るとされたのですが、平安時代において学識と言うと、それは漢文学の知識を指しました。

しかし、『枕草子』の中身を見ていくと、納言が自分の方から漢詩文を踏まえて発言している事例は3例しかありません。他の13例は、話をしている相手から言葉をかけられたので、それに答えているだけなのです。つまり、納言自らが進んで才をひけらかしている訳ではなかったのでした。『枕草子』を虚心坦懐に読んでいけば、学識をひけらかして嫌な女というイメージはなくなると思います。それどころか、納言の知識の広さや、当意即妙の返答、明るい性格というものが見えてくるはずです。

(主要参考・引用文献一覧)

・藤岡作太郎氏『国文学全史 平安朝篇』(開成館、1906年)。

・渡辺実校注『枕草子』(岩波書店、1991年)。

・藤本宗利「職能としての漢才 ー『枕草子』「頭中将のすずろなるそら言を」の段を中心に ー」(『群馬大学教育学部紀要 人文・社会科学編』第66巻、2017)。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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