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【大河ドラマ光る君へ】花山天皇の退位を察知した凄腕陰陽師・安倍晴明の特殊能力

濱田浩一郎歴史家・作家

寛和2年(986)、花山天皇は宮中を出で剃髪し、退位されます。天皇は、丑の刻(午前1時から3時)に清涼殿を出て、朔平門に用意してあった車で東山の元慶寺に赴かれたのでした。その車には、藤原兼家の3男・道兼が同乗していたのです。『大鏡』(平安時代後期に成立した歴史物語)には、出家を躊躇する天皇を、道兼があの手この手で思い止まらせ、誘導する様が描かれています。例えば、愛する亡き女御が遺した手紙を取りに帰ろうとする天皇を、道兼は嘘泣きして「この好機を逃されては」と押しとどめたのでした。天皇と道兼が乗る車は、ある人物の家の前も通ります。そう、陰陽師・安倍晴明の邸前も通ったと『大鏡』にはあります。その時、邸からは晴明の次のような声が聞こえてきたそうです。「怪しい。帝がご退位される天変の兆しが見える。いや、もうご退位されたか。すぐに参内(宮中に参上)しよう。至急、車の用意を」と。晴明は続けて「先ずは、式神1人、内裏へ参れ」と式神(陰陽師の命令で動く霊的存在)に命じます。式神が邸の戸を開けると、天皇が乗られた車が邸前を通り過ぎたところでした。よって、式神は晴明に「帝が家の前を通り過ぎていきました」と伝達したとのこと。晴明の霊力を示す『大鏡』の逸話でした。さて、藤原兼家は内裏に入り、諸門を固めて、皇太子に皇位を譲る「譲国の儀」を行います。これにより、皇太子・懐仁親王に譲位されます。僅か7歳の一条天皇(円融天皇と兼家の娘・詮子の子)が即位することになるのです。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

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