Yahoo!ニュース

鎌倉時代、文書を偽造した庶民にはどのような恐ろしい罰則があったのか?

濱田浩一郎歴史家・作家

貞永元年(1232)、執権・北条泰時の時代に制定された御成敗式目は、御家人や地頭、つまり武士に向けて出された法律でした。御成敗式目は庶民を対象にした法律ではありませんでしたが、式目を見ていくと、庶民の犯罪についての規定も存在するのです。例えば、式目(第15条)は「謀書」の罪科について定められています。謀書とは、文書を偽造すること、または偽造された文書(偽文書)のことです。では、文書を偽造した「侍」は、どのような刑罰に処されるのか。それは「所領没収」でした。所領を持たない「侍」の場合は「遠流」(流罪)となりました。しかし、本条には「凡下輩」(ぼんげのともがら)、つまり庶民が文書を偽造した際の刑罰も記されているのです。では、庶民はどのような刑罰となったのでしょうか。それは「火印」を「面」に捺すというものでした。要は、焼き印を顔に捺される罰を受けたのです。偽文書の執筆者も「同罪」とされました。ちなみに、裁判の中で嘘をついた者は、寺社の修理を命じられ、それができない者は「追放」処分にすると同条にはあります。さて、御成敗式目は武士身分のための法律だと前述しましたが、その第15条(謀書罪科)には、なぜ庶民の犯罪・罰則が存在するのでしょうか。それはおそらく、庶民が文書を偽造して武士や幕府を騙すことがあったからだと推測されます。それにしても、焼き印を顔に捺されるのは、どれ程、熱かったでしょうか。

歴史家・作家

1983年生まれ、兵庫県相生市出身。皇學館大学文学部卒業、皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員、姫路日ノ本短期大学講師、姫路獨協大学講師を歴任。『播磨赤松一族』(KADOKAWA)、『北条義時』『仇討ちはいかに禁止されたか?』(星海社)、『家康クライシスー天下人の危機回避術ー』(ワニブックス)ほか著書多数

濱田浩一郎の最近の記事