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戦国時代のダークホース人物【3選】本気を出せば天下の覇者に?じつは潜在力バツグンだった人物・後編

原田ゆきひろ歴史・文化ライター

≫【戦国のダークホース・前編】

【戦国のダークホース人物・その2】毛利輝元(てるもと)

地方の小勢力から、中国地方10か国にわたる大勢力を築き上げた、毛利元就。

その後継者として、日本全国すべての武将が、無視できない存在でした。

彼は武将としての才覚というより、その並々ならぬ国力や、好機(活かせれば)に恵まれた人物です。

ときは1577年。秀吉率いる織田軍が攻め寄せると、危機に陥ってしまいますが・・

そんな中、一度目の大チャンス“本能寺の変”が勃発します。

毛利を攻めていた秀吉は、あわてて和睦して、京都へ転身。

そして明智光秀を破り、ついには天下人に躍り出るわけですが・・

本能寺の直後、少し遅れてでも毛利輝元が

「よいか者ども!これよりわれら、秀吉を追って進軍いたす。積年の恨み晴らすのじゃあ!」

と言って、なだれ込んで来たら、どうなっていたでしょうか。

「秀吉様。毛利の大軍が、こちらに向かっておりまする!」

・・などという知らせが入れば、もう明智勢と決戦どころではありません。

両側から挟み撃ちされて壊滅。

そのまま京都には、毛利家の旗が翻っていても、おかしくはありませんでした。

しかし、そうはならずに時は流れ・・。

2度目のチャンスは、天下分け目の、関ケ原の合戦。

石田光成VS徳川家康という構図が目立つこの戦いですが、勝敗の鍵は、完全に毛利家がにぎっていました。

自らは大阪城に入り、豊臣家の後継を庇護して占拠。

そして関ケ原には養子の毛利秀元を、3万の大軍とともに派遣します。

また戦場にいた親戚関係の武将・小早川秀秋の軍勢も合わせれば、5万近くの軍が

戦場に存在していたことになります。

しかしこのとき、毛利は戦場の超重要拠点に陣取りながら、まったく動かず。

そして小早川勢は土壇場で寝返り、徳川の勝利となりました。

もしこのとき、毛利輝元がもう少し野心的な人物であれば・・

あるいは黒田官兵衛や諸葛孔明のような、優秀な参謀がついていて

「なにをしておられます、殿!今こそ天下統一の好機にございまするぞ!」

などと背中を押して、毛利勢が徳川の本陣になだれ込んでいた・・ならば。

おそらく高確率で徳川勢は敗北、歴史は完全に変わっていたかもしれません。

・・もちろん現代の目線で考えれば、野望を抱いて一か八かの賭けよりも、

家臣や一族の安泰を選ぶのも、立派な選択です。

しかし戦国武将としては少しザンネンな部分が、多かった人物かも知れません。

結局は関ケ原でまったく戦っていないのに、

毛利家の領地は、以前とは比べ物にならないほど減らされてしまいました。

高杉晋作と奇兵隊
高杉晋作と奇兵隊

ところが・・・それから時代は大きく移って、幕末。

このとき毛利家は、勢力図だけでみれば2か国と、戦国時代の最盛期とは比べ物になりません。

しかしそんな条件下で、薩摩とともにではありますが・・

長州藩として、260年ぶりに京都に達しました。

歴史の流れとは、何とも面白いものです。

【戦国のダークホース人物・その3】本願寺顕如(ほんがんじ・けんにょ)

ラストの人物は武将でなく、正確には浄土真宗・本願寺派のリーダー。

お寺の住職です。

しかし彼は織田信長を、生涯でいちばん追いつめた人物といっても、過言ではありません。

のちに大阪城が建てられた地に、要塞のごとき本拠地を築いていました。

そして、ひとたび決起を呼びかければ、たちまち大軍勢が集結します。

そのうえ戦国最強と謳われた、武田家や上杉家の主力にも引けをとらない、

戦術に長けた人々も、本願寺には味方していました。

なかでも群を抜いていたのが、傭兵集団『雑賀(さいが)鉄砲衆』。

彼らは大量の鉄砲を所持していた上、射撃の名手が揃っていました。

その戦闘力は、少人数で織田家の大軍をも翻弄し、信長本人も足を撃たれて傷を負った記録があります。

ひとつ間違えれば、本当に歴史が変わっていました。

そして信仰のチカラは、とてつもない威力を誇りました。

ひとたび決起の号令をかければ、大名の家臣でさえ主君を離れ、本願寺に味方する武将もいます。

現に徳川家康の側近・本田正信は、家康に反旗を翻しています。

戦国武将にとって、これほどの驚異はありませんね。

・・とはいえ、もともとは僧侶ですので、さすがに全国制覇の野望はあり得なかったかも知れません。

しかし、その気になれば日本中の戦国大名を圧倒して、統一。

日本は浄土真宗の治める、仏教王国に!

・・と、そんな歴史さえ、作り上げる潜在能力を有していたと思われます。

・・さて、その気になれば天下を取れていた人物。

戦国時代のダークホース3選、いかがでしたでしょうか。

歴史というのは“たられば”によって、いくらも考えようがあります。

しかし、そうしてあれこれ想像を膨らませてみるのも、面白さの1つではないでしょうか。

みなさんも是非、いろいろな角度から日本史を楽しんでみて下さい。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

歴史・文化ライター

■東京都在住■文化・歴史ライター/取材記者■社会福祉士■古今東西のあらゆる人・モノ・コトを読み解き、分かりやすい表現で書き綴る。趣味は環境音や、世界中の音楽データを集めて聴くこと。鬼滅の刃とドラゴンボールZが大好き■著書『アマゾン川が教えてくれた人生を面白く過ごすための10の人生観』

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