Yahoo!ニュース

「愛嬌のある人」と「愛想がいい人」の違いは? ”ふりまく” のはどっち?

畠山仁美所作講師

は、「愛嬌のある人」と「愛想がいい人」の違いについて掘り下げてみます。

あなたは愛嬌のある人ですか?愛想がいい人ですか? そして、”ふりまく”のは、愛嬌?愛想?どちらでしょうか。

愛嬌とは

あるものに備わった、かわいらしさ、ひょうきんで憎めないようすのこと。

「愛嬌のある顔」のように、その人にもともと身についている、生まれ持ったもののことを言います。

語源は「愛敬(あいぎょう)」

「愛敬」は、仏語の「愛敬相」から来ており、仏や菩薩の優しく、穏やかな容貌や態度のこと。

「あいぎょう」が「あいきょう」と清音化し、あでやかで美しい、愛らしい、という意味をもつ「嬌」の字が当てられました。

後から身につけたり、意識して行っていることではなく、もともと備わった特徴である、というのが「愛想」との大きな違いと言えます。

愛想とは

人と接するときの人当たりのいい態度。いい印象を与えるための動作などのこと。

また、人に対する好意や信頼感のことも表します。((例) 愛想を尽かす:相手に対する好意や信頼感をなくす)

「愛想」は、相手に好感を持ってもらうために意識的に示す態度や動作のことなので、「愛想がいい」という言葉自体にネガティブな意味があるわけではありません。

しかし、自分の本当の気持ちに関係なく周りに合わせて笑顔を見せる「愛想笑い」や、相手の機嫌をとるためにお世辞を言う「お愛想を言う」などのように、ニコニコしているけれど実際は何を考えているか分からない、信用できない、といったイメージを持たれることも多い表現です。

「ふりまく」のはどっち?

「愛嬌をふりまく」「愛想をふりまく」どちらも良く使われる表現ですが、慣用的に正しいとされているのは、「愛嬌をふりまく」のほうです。

愛嬌はその人がもともと持っている雰囲気なので、その雰囲気を周囲に振りまいているというわけですね。

ただ、文化庁の調査によると、「愛想をふりまく」を使う人の方が上回っている年もありました。表現として定着しつつあることによって国語辞典にも載るようになりました。

ただ、「愛嬌」のほうは「子犬が愛嬌をふりまく」のように可愛らしさがあふれ出ているようなイメージであるのに対し、「愛想を振りまく」については「無理をして、こびて、などといった人為的な趣が感じられる(明鏡国語辞典2版)」と説明されており、ニュアンスに違いはあるようです。

まとめ

◆愛嬌:もともと備わっているかわいらしさや、ひょうきんで憎めない様子のこと
◆愛想:人と接するときに意識的にとる人当たりのいい態度、いい印象を与えるための動作のこと

「愛嬌」は生まれつき備わっているものなので後天的に身につけるものではありませんが、「愛想」は行動・振る舞いなので自分次第でいくらでも良くすることができます。

表面だけ愛想をよくして、本心では全く違うことを思っている…となると、相手にも不信感を抱かれ、自分の心も疲れ…とマイナスにしかなりませんが、愛想を良くするのはコミュニケーションを円滑にするためであり、人間関係を良好にするためのもの。

愛想の「想」には、ある対象を心に思い浮かべる、という意味があります。

自分に意識の向いた愛想のよさではなく、目の前の人のことを想い、いい関係を築きたいというメッセージとしての愛想のよさで人と接することができれば、気持ちの良いコミュニケーションが広がるかもしれませんね。

日常なんとなく使っている、似ているけれど意味が微妙に違う言葉を調べてみると、その物事の本質が垣間見えることがあります。これからも色々な言葉の違いを取り上げていこうと思っています。

所作講師

日常の振る舞いを見直すことで、心・体・生活を整えるお手伝いをする所作講師。立つ・座る・歩く・物を扱う・挨拶する、といった日常あたりまえに行っている所作を通して、振る舞いだけでなく自分の内面も見つめ直すレッスンが好評。2011年の開講以来マンツーマンレッスンにこだわり、一人一人と向き合ってきた。ブログ【所作美人のヒント】では、バタバタと忙しい日々の中で、所作を通して自分を磨く考え方を発信。著書「一日一分からはじめる『おだやかな人になる所作の習慣』」

畠山仁美の最近の記事