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「形から入る」と「型から入る」の違いとは?

畠山仁美所作講師

今回は、「形から入る」と「型から入る」の違いについて掘り下げてみます。

どちらにもメリット・デメリットはあります。あなたは何かを始めるとき、形から入りますか?それとも型から入りますか?

「形」とは

◆形:見たり触ったりして捉えることができる、モノの姿・恰好のこと。

「形」という漢字は、「井(四角い枠)」と「彡さんづくり=模様」が合わさってできた姿を表しています。そこから、物事の外側の姿かたちを意味するようになりました。

よって、内容よりも先に服装や道具を揃えるなど、目に見える部分からはじめる場合に「形から入る」と言われます。

どことなく、本質をないがしろにしているような、形ばかりで中身が伴わないような印象を抱かれることもありますが、形から入るメリットもあります。

形から入ることのメリット

◆服や道具を揃えることで「その気」になれる。
◆道具を揃えた分の元を取ろうと思ってがんばれる。
◆とりあえず、すぐに始められる。(早く行動に移せる)
◆楽しい気持ちで始められ、モチベーションを維持しやすい。

何か新しいことを始めるにあたっては、最初の一歩を踏み出すときに最もエネルギーを必要とします。その点、「形」はとても入りやすい入り口となってくれます。

最初にお金がかかることや、続かなければ無駄になってしまう、服や物を揃えただけで満足してしまう可能性がある、といったデメリットももちろんありますが、「考えすぎて行動に移せないタイプ」の人にとっては、形から入ることでスタートを切りやすくなるでしょう。

また、「形から入って心に至る」という言葉があります。

たとえ最初は形(見た目)だけだったとしても、長く続けていくうちに、その背景にある理由や本質もだんだんと理解できるようになっていきます。

「型」とは

◆型:同じものをいくつも作るときの元となるもの、基準となる形のこと。芸能・武道などにおける、規範となる動作・態勢。

「型」という漢字は、「井」+「リ」+「土」で構成されています。

「井」は「枠」のこと、「リ」は「刀」のことで、「器などを作るために土を削って作られた鋳型(器物を作るために溶かした金属を注ぎ入れる型)」を表しています。

型から始まり、オリジナルに至る

型を身につけるにあたって切っても切り離せない言葉が「守破離」です。

「守」基本の型を忠実に守り、確実に身に付ける段階。
「破」ほかの良いものも取り入れるなどして、応用・発展させる段階。
「離」型から離れ、独自のものを生み出し追求する段階。

「型から入る」とは、基本を徹底的に体に叩き込むところから始めること。

この段階では、個性や独自性などは一旦横に置いておくことになります。
なので「型を学ぶ」ときくと、型にはまりたくない、個性が失われそう、といったイメージを持たれやすいですが、むしろ、型を身につけるのは最終的に個性を存分に発揮するための準備と言えます。

「型」は長い年月をかけて作られた先人たちの智恵の結晶。
「急がば回れ」で、最初に時間をかけて型を身につけることで、我流でやるよりも結局は速く目的地にたどり着くでしょう。

デメリットを挙げるとすれば、基本の型を身につけている間は、同じことの繰り返しで地味に思え、続けるのが大変ということ。

単なる反復にならないよう時々やり方を変えたり、難易度を上げるなど工夫も必要です。

まとめ

「形」…その人や物がもつ姿や格好。

「形から入る」…見た目に分かりやすい部分から始めること。最初の一歩を踏み出しやすい。そのまま続けることができれば「形から入って心に至る」ことも。

「型」…何かを作るときの元となるもの、基準となる形。

「型から入る」…基本を大事に、徹底的に身につけること。「守破離」の段階を踏むことで、最終的には型から離れ、オリジナリティを発揮することも。

これまでの講師経験を踏まえても、何かを身につける際は、形から入って楽しみながら学び、地道に型を身につけ、続けることで心(本質)に至り、個性を存分に発揮する段階へと進んでいく…、というのが良いのかもしれません。

日常なんとなく使っている、似ているけれど意味が微妙に違う言葉を調べてみると、その物事の本質が垣間見えることがあります。これからも色々な言葉の違いを取り上げていこうと思っています。

所作講師

日常の振る舞いを見直すことで、心・体・生活を整えるお手伝いをする所作講師。立つ・座る・歩く・物を扱う・挨拶する、といった日常あたりまえに行っている所作を通して、振る舞いだけでなく自分の内面も見つめ直すレッスンが好評。2011年の開講以来マンツーマンレッスンにこだわり、一人一人と向き合ってきた。ブログ【所作美人のヒント】では、バタバタと忙しい日々の中で、所作を通して自分を磨く考え方を発信。著書「一日一分からはじめる『おだやかな人になる所作の習慣』」

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