Yahoo!ニュース

神戸の南京町で35年間つくり続けた焼鶏、変化する街と変わらぬ味のはざまで貫くもの【神戸市・劉家荘】

Hinata Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)

神戸の有名な観光地「南京町」、その小さな路地にある「劉家荘」。今年で35年を迎えるお店の名物は「焼鶏(ショウケイ)と呼ばれる北京料理です。

鶏を一匹丸ごと調理するショウケイは、山椒を始めとする中華のスパイス3種と塩で味付けされたシンプルな料理。だけどもこれを作るには長年の経験が必要だといいます。

「毎朝(ショウケイを)仕込んで、鶏と喋っていますよ」と笑うのは、代表の劉 繕雲さん。いつも大小混じった色んな鶏が届くので、スパイスはつけ込むのではなく手作業ですり込ませないと部分的に味が変わってしまうのだとか。

「蒸す温度も季節や日によっても変わるから、毎日の状態を見ながら変えていっています。カスカスになるか生焼けになるかという間で、いい具合に仕上がるよう努力しています」と、劉さん。

丸焼きなだけに、開けてみないと仕上がりが分からないショウケイ。その判断はきっと想像以上に難しいんだろうなと思います。そんな作業を、劉家荘2代目の劉さんはここで中学生の頃から経験してきたそう。

フライドチキンなどと同じように思われがちなショウケイ。その違いは、焼いてから蒸してあるので皮はパリッと食感ではなく、しっとり。朝から仕込まないと仕上がらないので、焼きたて熱々で出すものでもなく焼き豚などと同じように常温。

そういう料理なんですよと劉さんは言います。部位も、ムネとモモがあって味わいが違います。モモ部分を中国人は好み、ムネ部分を日本人は好む傾向があるとか。

「中国の人は、背中の骨があるような所も好みます。それぞれに味の捉え方があって、(一概には言えませんが) 好きな部分があります」という色々なお話を聞いて、多様性という言葉が頭に浮かびました。

調理法から食べ方、好みの部位などの違いまで。国によって、また時代によっても様々なものがあります。ここで出される料理をどう捉えるかは、ひとりひとり違っているだろうし、出す方もこれが良いと思う形で提供しているということ。

こんな風に文化の違いもある中で、お互いのことを知り得ることができるなら素敵ですね。神戸の街の良さはきっと、そういう部分にもあるのだと改めて思いました。

劉家荘のランチには、ショウケイがセットになったものもあります。前菜とエビチリや春巻き、スイーツまで付いた「特別サービス定食」は1,600円。(季節によって内容変更あり)

ショウケイは小皿860円から一羽3,300円まで、店内で食べることもできてテイクアウトは一羽2,800円。クリスマスや正月は、多くて1日400羽ほどテイクアウトされると言うから相当な人気っぷりです。

劉さんが小学生の頃はこの近辺はまだ市場地帯で、その頃から活気があったそうです。そして神戸の震災時にも一番に活気が戻り、暖かい食べ物を提供し始めたのがこの南京町でした。

今は当たり前のようになった屋台が立ち並ぶ風景も、震災の後から始まったそう。劉家荘は、現在は屋台を出していませんがその先駆けとなったお店の一つでもあるとか。

様々な時代を経て、変わるものと変わらないものがありました。35年間変わらず焼き続けられてきた「焼鶏(ショウケイ)」。時代を繋いできたその味わいを求めて、南京町へと出かけてみてはいかがでしょうか。

劉家荘

劉家荘ホームページ (外部リンク)
劉家荘Instagram (外部リンク)
住所 神戸市中央区元町通1丁目4-8
TEL 078-391-7728
営業時間
【ランチ】11:30~14:30(LO)※ランチ予約不可 
【ディナー】17:00~20:30(LO)21:00閉店
定休日 水曜日
カード不可
Google マップ

※一部、間違いがあり訂正いたしました事をお詫びいたします。

旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

Hinata Yoshiokaの最近の記事