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古民家で「こども食堂」をやったら、理想のコミュニティーの形になった話【神戸市・コトノハ】

Hinata Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)

「古民家コトノハ」は、築200年の古くて雰囲気ある建物。そこにたどり着くまでには川沿いを歩き、民家に実る柿の木を眺めながら小高い丘を散策していく楽しさがあります。

ここは夫婦で経営をされているのですが、旦那さんが料理人、そして奥さんはソーシャルビジネス8年の経験の持ち主ということで、その二人の経歴を生かすべく始めたのが「飲食店」、そして「こども食堂」でした。

最近よく耳にする「こども食堂」。一体どんな雰囲気でやっているのだろうと気になったことはありませんか?地域によってもカラーが違うそうなのですが、「古民家コトノハ」は独特な雰囲気を持っています。

「ただいま!」と言いたくなるような、ホッとする空間
「ただいま!」と言いたくなるような、ホッとする空間

今日は第3回目のこども食堂開催日。テーマは「音に触れよう」です。ここではご飯を食べるだけではなく毎回いろんなゲストが登場、こども達が学ぶ場にもなっています。

例えば囲碁を習ったり、上手に文字を書く講座があったり。そして今回は「バイオリンとピアノの演奏会」ということで、生の演奏が見られるそうですよ。

コトノハは、入り口を入ってすぐの場所にキッチンがあるのですが、そこでは既に準備された食事がどんどんと並べられています。

今日はボランティアも何名かいるそうで、その内のひとり、フレンチシェフの前田さんがキッチンでスイートポテトを焼いていました。ガレットをキャラメリゼしたりと本格的なスイーツに期待が高まります。

「美味しく食べると記憶に残るから、気合入れて作ってます!」
「美味しく食べると記憶に残るから、気合入れて作ってます!」

徐々にこども達が集まって来て、料理の準備が整ってきた頃に演奏会が始まりました。今日ここで演奏するのは、市役所の職員さん。神戸市が全国初の取り組みで始めた「デザインクリエイティブ枠」で活動されているお二人です。

となりのトトロから始まり、秋の歌メドレーが続く
となりのトトロから始まり、秋の歌メドレーが続く

演奏が次々と展開していく中、こども達は座ってジッと耳を澄ましていました。終わってからの質問タイムでは、ハイハイ!と我先に手が上がる様子が。

「皆んなの反応も良かったし、とても暖かい雰囲気でした」と、バイオリニストの川妻さんもいい笑顔です。演奏後には楽器の弾き方を教えてもらえるような一幕もあり、こども達は興味津々。

バイオリンを弾かせてもらっている時の表情は真剣そのもの
バイオリンを弾かせてもらっている時の表情は真剣そのもの

さて、演奏会も終わり待ちに待った食事タイムです。イワシのハンバーグを食べながら「ハンバーグは魚じゃなくて、肉がいいなぁ」と言っていたこどもも、残さずちゃんと食べていた様子。皆んなで食べると好き嫌いもなくなるかもですね。

今日のメニューはイワシハンバーグや具沢山のみそ汁、サツマイモのスイーツなど
今日のメニューはイワシハンバーグや具沢山のみそ汁、サツマイモのスイーツなど

いろりを囲んで並び座る、どこか懐かしいような風景
いろりを囲んで並び座る、どこか懐かしいような風景

もともとは知らない子同士が、隣に座って仲良くご飯を食べているというすてきな環境…ここでは誰もが大家族の一員のような安心感があります。

ボランティアの人々の存在も大きく、近所のお爺さんやお婆さん、高校生、シェフや囲碁の先生など、いろんな人たちが関わっていることで年齢層もさまざまに。そんな中でこども達はコミュニケーションを取りながらリラックスしていました。

保育の授業の関連で来たという高校生も、ボランティアの後は一緒に囲碁を楽しんでいた
保育の授業の関連で来たという高校生も、ボランティアの後は一緒に囲碁を楽しんでいた

ご飯タイムが終わると、いっそうにぎやかに。ピアノを弾いたりゲームをしたり、赤ちゃんを興味深げに取り囲んでいる姿もありました。ここはこどもだけでなく、関わっている皆んなにとっての居場所のようです。この感じ、理想のコミュニティーの形にとても近い気がしませんか?

私も抱っこしたい〜と、集まってくるこども達
私も抱っこしたい〜と、集まってくるこども達

ここで教えてもらう遊びは昔ながらのものが多く、囲碁をはじめ、おはじきや百人一首、手作りの竹のおもちゃなどとても素朴です。日本の文化を知るいい機会ですね。

「もういいかーい」と、部屋を全部使ってのかくれんぼが始まった
「もういいかーい」と、部屋を全部使ってのかくれんぼが始まった

こども食堂に興味を持って手をあげてくれるボランティアの人は数多く、順番にお願いをしているそう。それほど人気のこども食堂ですが、立ち上げる人は少ないという現状があります。

コトノハでは企業さんからの食材提供や、神戸市の助成金(※)を使うなど、上手に運営をしています。実際は大変で難しい部分もあるそうですが、見ていてとても大切な取り組みだと感じました。

お手伝いは自ら進んで。人の姿を見てまねをするところから始まる
お手伝いは自ら進んで。人の姿を見てまねをするところから始まる

神戸市も、小学校区にひとつの「こども食堂」を目指しているそうです。ただ食べるだけでなく、自然とコミュニティーが形成されていくような空間づくりは、この先の地域社会やまちづくりにとって大きなヒントとなるのでは。

年齢を超えて協力し合い、遊びのように学んでいける空間
年齢を超えて協力し合い、遊びのように学んでいける空間

こどもがいなくて空き家が多いこの地域。一方、川を挟んで向こう側は分譲地でマンモス校という環境の中で、地域にこどもの姿が見えると嬉しいという声もあるそう。

この日は、みかんと枝豆の差し入れを持って近所のおじさんがやって来ました。どうやらこども食堂があることで、いろんな繋がりや循環が生まれるようです。理想のコミュニティーはそんなところから始まるのかもしれませんね。

こども食堂、第4回目は12月1日に開催予定。「リズムを感じよう」というテーマで、地域の方によるクリスマスコンサートもあります。妙法寺と横尾エリアのこども達が対象で定員は20名まで、公式LINEにて要予約です。

地域が違うからという人も、12月12日にはここで「大人のクリスマスマルシェ」と題してイベントがあるそう。ワークショップや、ハンドメイド作家さんの作品販売や食べ物などもあり、誰でも参加できるようです。

もし居場所のことや、コミュニティーのことを考えているなら、ここへ行くと何かヒントがもらえるかもですよ。月一でイベントもあるそうなので、まずは気軽に遊びに行ってみてくださいね。

古民家コトノハ

古民家コトノハHP (外部リンク)
こども食堂のブログ ←公式LINEはこちらから
こども食堂、イベントなどは月一開催予定
普段はカフェ(食事処)を営業
Tel. 078-741-2235
営業時間:店内カフェ 11:30~15:00 [L.O. 14:00]
定休日:月曜日 (日曜不定)
アクセス:神戸市須磨区妙法寺谷野141-1(神戸市地下鉄妙法寺駅より徒歩8分)
Google マップ (外部リンク)

※神戸市の助成金「CO + CREATION KOBE Project (民間提案型事業促進制度) 」

旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

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