神戸といえば「KORPA」!と言われるようになる為に…ところで、あなたは行きましたか?【神戸市】
神戸の皆さん、KORPAってご存知ですか?そう聞いて、そんなの知っているよと答えが返ってくるのを期待しますが、実際はあまり知られていないのではないでしょうか。
それではちょっと勿体ないような気がして、ここで皆さんにいま一度「KORPA」って何やねん?ということをお知らせしてみようと思います。
KORPAとは、2023年2月22日から3月19日までの期間に、神戸のあらゆる場所を使って行われた「KOBE Re:Public Art Project (神戸リパブリックアートプロジェクト)」の略称です。その内容はけっこう斬新なものが多くて、驚きの内容だったりしました。
例えば、片桐はいりさん。とても有名な方ですが、片桐さんが神戸の街中にある小さなカフェで、一般のお客さんに紛れて突然ひとり演劇を始めてしまう喫茶店演劇の公演などもKORPAの一環でした。(※1)
神戸”リ”パブリックアートプロジェクトとはつまり、神戸に元からある素敵なものを再発見して、それを生かしつつアートを発信するといった意味合い。片桐さんは、喫茶店文化が今なお残る神戸の風景の中に溶け込んで演劇をされていました。
そしてKORPA全体の、企画や構成などをするキュレーターを担当していたのが森山未來さんでした。森山さんはアーティスト・イン・レジデンス神戸 (AiRK) の運営をされていますが(※2)、KORPAでもその柱となる部分を担当されていたんです。
以前、森山さんにアーティスト・イン・レジデンスのお話を伺った際に、関連してKORPAのお話が出てきました。
「KORPAの基本理念は、現在文化庁が提唱している「文化観光」という視点と合致する考え方でもあって。既存の観光地としてただ扱うのではなく、その場所にすでにある歴史や文化をリサーチ・保存し、新たな観光として展開していく。灯台下暗しと言いますが、 地元の魅力というものは地元の人にとっては見えにくいもの。外から来た人が新鮮な視点で客観的にその場を見つめ発見したものは、時にそれが地元の人にとっても新たな気づきになることもあります」と、森山さん。
なるほど、だから外からのアーティストによる「リサーチ」というものを、KORPAでは最重要としていたのですね(2022年12月に23組のアーティストが神戸に滞在し、リサーチをしていた)。形にして残す、元来のアートイベントとはまた少し違っているように見えました。
「いま、世界全体で動いているエネルギー、物、生産、消費などの問題について考えた時に、アートイベントに関してであっても、やはり作って壊すだけの行為、いわゆるスクラップ&ビルドをするつもりにはなれなかったんです」
そんな森山さんの言葉で思い出したのが「仕立て屋のサーカス」というアートパフォーマンスでした。パフォーマンス内で何度も繰り返された言葉「人新生(ひとしんせい)」。それはいま現在、私たちが立っている地質時代のことを指す呼び方なのだと言います。
例えば恐竜時代であれば恐竜の骨が埋まった地層があるように、「私たちが立っている土壌の上には人工物が含まれていない場所はどこにもない」と揶揄される私たちの時代の地層「人新世」には、資本主義経済のさまざまな影響が埋まっているのだと。
「人新生という思想が、KORPAのコンセプトにマッチしました。人新生は批判的な意味として使われがちな言葉ですが、例えば神戸の空き家問題や廃墟などの人工物をただ放棄・廃棄せずどうやって価値化していけるのか。そもそも歴史的、文化的レイヤーが多重な神戸という街の観光資源を、アートを通して再考できたら」と、森山さんは語ります。
それって「まちづくり」にも繋がっていくような話ですよね。そう思うとアートの持つ持つ可能性って凄いかも。
「もし2回目のKORPAがあるならば、更にリサーチを深めていくと思います。アーティストの目線はいわゆるアート作品を制作するためだけではなく、社会的課題を発見するためのものでもあると言われています」
「立体的なモニュメントとして表現するだけではなく、演劇、ダンス、音楽などのパフォーマンスといった、形として残らない非物質的なものを、アーティストが発見したそれぞれの場を通して体験に変えていくという行為を「パブリックアート」として捉えるということ。これも、とても意義のあることだと思っています。これらを継続しつつリサーチをどう進展させ、神戸という街にいかに接続させていくかを、引き続き模索していければと」
森山さんのそんなお話から、地元「神戸愛」をとても感じるのは私だけでしょうか。まさに未来を見据えての言葉の数々ですね。最後に、今後の課題もチラリと。
「例えば、過去にこうして神戸で取材をしたときに、スタイリストさんやメイクさんを探したんですが神戸には専門でやっている人がいなかった。他県から来てもらうしかない現状があって。舞台芸術のスタッフなどに関しても同じです」
「需要が足りないということなんです。ここに彼らの仕事が発生しないとダメで、そのためには神戸にアーティストが継続的に集まる必要がある。そういったことを解決する為に何をやらなければいけないかを考えないとですね。イベントが一過性のものだと、花火のように打ち上げたらそれでおしまい。定着するものにはなりませんから」
今回のお話を聞いて、アーティストが活躍しやすい環境づくりも含めてKORPAが果たせることが数多くあるように思いました。
神戸の素敵を再発見して魅力ある街として磨き上げるアートプロジェクト、KORPA。今後も継続して行われ、「神戸と言えばKORPA!」となっていくことを心から願います。
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