Yahoo!ニュース

「どこまでも、もっと自由に!」音楽が生き方そのものを叩きつけてくる映画、絶賛上映中!【神戸市】

Hinata Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)

「渋さ知らズ」、彼らを何と表現したらいいのでしょうか。音楽、舞踏、パフォーマー??ステージ上には多い時では30〜40人が立ち、誰もが何かしらをやっています。

見上げると上空には大きな龍が飛び回り、轟音で鳴り響く音楽、ハシゴに絡みつく全身白塗りの男、エンヤトットとネジリ鉢巻にふんどし姿も跳ね踊れば、バナナをひたすら振り回す女、タバコをくわえて指揮をとりながら歩き回る謎の人物も…まさにカオス。

そう説明したところで謎が更に深まるだけなのですが、彼らはいわゆるミュージシャンとしてだけ存在しているのではないと、私に教えてくれたのがこの映画です。

私は今から10年ほど前、小さな地下のライブハウスで少人数編成の彼らのステージを見たことがあります。その時のあまりに衝撃的なライブが忘れられず心の中に残っていたのですが…

そんな彼らの正体を明かすべくこの映画「NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地編」が上映されると知るやいなや、気がつけばいつの間にか前売りチケットを握りしめている私がいたのでした。

初日には佐藤訪米監督が舞台挨拶をするということを知り、上映前でのインタビューを要請、お話を聞かせてもらうことに。

「2019年は、渋さ知らズの結成30周年でした。この映画はその年に京都大学の西部講堂で行った2日間の映像と共に、30年前に8ミリフィルムで撮っていたライブ映像、そこに初期メンバーのインタビューなどを交えたものです」

「渋さ知らズと言えばフジロックフェスとか、そういうイメージを持たれている方も多いかもですが、少人数の編成で小さなライブハウスでやったりもしていて。元々は、フェダインというトリオバンドをやっていた不破大輔さんから始まった渋さ知らズなんですが、そのフェダインも凄くて」

確かに、劇中に出てくるエピソードも含めて、皆ぶっ飛んだ人達というイメージがありました。ちなみにタバコをくわえた謎の指揮者の正体は、渋さ知らズ主宰の不破大輔さん。

音楽の種類はと聞かれると難しいのですがフリージャズ、監督に言わせると「究極のパンク」なのだとか。それは音楽のジャンルというよりかは存在そのものが。

「渋さ知らズはみんな独立した個人の集まりで、固定した枠ではないんです。むしろ枠を取っ払おうという集まりですね。とにかく自由、音楽も舞踏も即興がベースになっていますし、この映画も即興で撮っています」

ヨーロッパの何万人規模のフェスでもウケている渋さ知らズ。彼ら自身がオリジナルな存在であることが、アンダーグラウンド的な存在でありながら海外でも認められている理由なのだと言います。

「彼らは自前の巨大なサーカステントみたいなものを建てて、テント公演というのをやったりもしています。その中だと何でも自由にできるんです。口から火を吹く人がいたりとかするんでね。笑。海外で言うジプシーバンドのようなスタイルで移動しながら、彼らはそんな自前公演もやっています」

「(この映画を見てもらうことで) ただのお祭りバンドという認識を超えられたら。楽しいだけでなく、自由になれる場であったり、何かを考えたり、そんなきっかけとしてのお祭りであるのならいいのだけど」…真剣な表情をした監督は、まるで渋さ知らズの一部であるかの雰囲気です。昔からずっと関わり続けている監督はメンバーでなくとも彼らの一員、いわば運命共同体です。

<渋さ知らズのCDジャケットなどを手がけるスズキコージさん(右端)>
<渋さ知らズのCDジャケットなどを手がけるスズキコージさん(右端)>

2時間たっぷりの映画上映、終了してから佐藤監督とスズキコージ(画家)さんとのトークショーもありました。スズキさんはタイコを叩き、体につけたベルをカラコロと鳴らし歩きながらの登場、渋さ知らズのステージに登場する時はお面を被って現れたりするのだとか。皆さんとにかく個性派揃いです。

「この映画には、続きがあります」舞台上でそう告げた佐藤監督。姉妹編として準備中の映画内容は、西部講堂での奇跡的なライブと、不破大輔の描く世界観をドラマ化したフィクションが並行して進んでいく「実録ライブ映画」になる予定だというから驚きです。

その続編を見るにも、こちらを先に見ておけば伝わる感動はより深いかも知れませんね。あくまでも予測ですが。とにかく見れば見るほど気になる不破大輔という人物、そして渋さ知らズという得体の知れない存在。

音楽好きはもちろん、最近の不自由な空気感に生きづらいと感じている人にもこの映画が響くような気がします。なぜなら、この映画が終わる頃には「人を愛おしく思える」私がいたからです。

真っ直ぐで全力で表現活動をしている彼ら。渋さ知らズという名の元に集まった人々が、その存在意義のような激しい創造のエネルギーに翻弄されながらも、己の言葉を失うことなく互いに生命力を強め合っているような姿が感じられました。そしてそこに魅力が溢れていたんです、人間という生き物の。

個性強めだけど、色々あるけれど、スクリーンの中には全力で生きている大人たちの姿がありました。「アンダーグラウンドであれ」…その言葉がキラキラして心に届いた日。ぜひ、劇場で。

NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地編

NEVER MIND DA 渋さ知らズ 番外地編 映画情報(外部リンク)
神戸上映
元町映画館 9月2日(土)~9月8日(金)
連日19:30より上映
全国の上映予定スケジュール(外部リンク)

旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

Hinata Yoshiokaの最近の記事