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こんなにも純愛!暗号に隠された「恋物語」が素敵すぎるアート作品を発見【神戸市・六甲ミーツ・アート】 

Hinata Yoshioka旅するフォト&ライター(神戸市)

今、六甲山頂で行われている「六甲ミーツ・アート芸術散歩2023 beyond」。いくつかあるその会場のひとつに「バンノ山荘」という場所があるのですが、そこで六甲山の「避暑地文化」をクローズアップした何とも可愛らしい作品が展示されていました。

「Sunny Day Lignt/ハルとテル」と名付けられたこの巡回型のインスタレーション作品。作家は中﨑透さん、主人公の「テル」とその夫となる「ハル」がここで出会った純愛の物語を元にしています。

ふたりが出会ったのは、互いに六甲山の避暑地として来ていた別荘。隣同士だったハルとテルはそこで運命的な出会いを果たします。ハルが13歳、テルが12歳の夏のことでした。

森に囲まれた湧水の湧くこの避暑地で過ごし、いつもずっと一緒にいたふたり。だけど学生になった頃には秘密にしないといけないような状況もあり、周りに隠れながらこっそりと愛を育んでいきます。

その思い出のひとつひとつがバンノ山荘内の至る所に、テルが語った話と共に作品として再現されているのですが、この日は何と、ハルとテルのご子息である「まーくん」が案内してくれることに。

建物の正面、真ん中の窓に人影がありました。窓の前では紙コップが紐に繋がっています。よく見ると糸電話のようですが?「父が向こうから通ってくる時、母はこの部屋だったんです」って、糸電話でやり取りをしていたなんて可愛すぎます。

その時々のふたりのエピソードが各作品ごとに書いてあり、ひとつづつ丁寧に読み上げて説明してくれるまーくん。ご両親のことが本当に好きなんだなぁと感じました。

可愛らしい純愛のハルとテル。その間に生まれた子供はこうなるのだなと、まーくんの語りを微笑ましく聞きながらおうちの周辺を歩きます。

家を回り込むと、小さな庭がありました。そこにはマリア像があったのですが、この時ちょうど光が差して輝いていたのが驚きでした。どうやらここは見えないものに守られた空間のようですね。

当時使っていた五右衛門風呂もそのままに残っていました。「僕もおじいちゃんと一緒に入っていましたし、薪をたいてお湯を沸かしたりしてたんですよ」とまーくん。

大きな紅葉の木が、家の二階を越えた高さに伸びてこちらを優しく見下ろしていました。作品やお話は昔のことを語っているのですが、周りの木々が風で揺れる影が作品に映り込んで動いていると、ふいに今と過去が交錯しているような不思議な世界が現れます。

ハルとテルがやり取りをする時には秘密の暗号があったそうです。人に読まれないように書いた文字、大好きなクマの絵を描き添えたラブレター、キラキラした思い出と場所。そこに新しくアートが絡むことで、より立体的に蘇る時間がありました。

「Episode13」に書かれたテルの言葉、「ハルとテルはすべて一緒なの。考えることも何から何までね。何でも作るの二人で。作るのが大好きだったの、作った方が嬉しいでしょ」。手前にあるバケツ缶のクマの絵はテル、奥の額に入った絵はハルが描いたのだそうですよ。

避暑地という特別な空間での恋の物語はその後大きく広がりを見せ、ふたりは海外留学へと旅立ちました。そこから半世紀、仲良しのまま何をするにも一緒だったふたりは子供を授かります。

そう、まーくんが産まれた時のお話です。「Episode15」に書かれていたそのお話は、テルがお互いの家族が大好き過ぎて…というエピソードも。テルの語りはどれも真っ直ぐで、包み隠さず「好き」に溢れています。

今年で81歳になったテル。「ずっと夢だったのよね、ハルと会えたことも幸せ以外はない。心から全て一緒に通ずる人、そういう人に出会えた私は感謝しかありません」

そう言葉を綴るテルと、ハルの純愛の物語を時空を超えて体感できる場所「バンノ山荘」。「家族」という風景、そこから感謝の祈りをふんわり感じられる空間が、六甲山頂にありました。

10月22日には、バンノ山荘で「アーティストトーク& 朗読会 (下記参照)」もあるそうですよ。あったかい格好をしてぜひご参加を。

六甲ミーツ・アート 芸術散歩2023「beyond」

バンノ山荘 (トレイルエリア)
開場時間:10:00〜16:30 (16:00受付終了)
※入場には鑑賞パスポート購入が必要です
六甲 ミーツ・アート 芸術散歩2023「beyond」ホームページ (外部リンク)
六甲ミーツ・アートは11月23日まで開催!

アーティストトーク& 朗読会

中﨑透「Sunny Day Light /ハルとテル」
2023年10月22日 ( 日 )
時間 14:00 ~15:30 
※13:00 から受付をスタート(早めにご来場いただき先に展示をご見学ください)
参加料金:500円(税込)
※本イベントの参加には鑑賞パスポートの提示が必要
※該当施設 ( バンノ山荘 ) にイベント実施日以前に入場済みの場合でも鑑賞パスポートの提示でイベント参加可能
集合場所:トレイルエリア会場 バンノ山荘
※森の音ミュージアムから徒歩約15分、記念碑台から徒歩約5分
※雨天時は集合場所にお集まりいただいた後、近隣の屋内施設に移動
定員 30 名
◎ 事前予約優先 →こちらから予約できます
《ゲスト》
中﨑透 ( 美術家 ) , 坂野雅 ( 株式会社 ARIGATO-CHAN 代表) 木村佐和子 ( 俳優 )

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旅するフォト&ライター(神戸市)

旅なしに人生は語れない、ノマド系フォトライター。国内から世界各国まであちこち歩きまわって取材する、体当たりレポートを得意とする。趣味は美味しいもの食べ歩き、料理、音楽、ダンス、ものづくり、イベント企画などなど、気になる物には何でも手を出してしまう。南国気質で、とにかくマイペースな自由人。

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