ショートフィルム

「殺処分」の真実。犬が最後に見る私たちの知らない光景とは

今治建城

映像作家

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【イヤホン推奨】

<殺処分の現状>
 現在、日本では年間8000頭以上の犬が殺処分されている。その一つ一つの命が殺処分場でどのように失われているのか、犬たちはどんな最後を迎えるのか。そして、そこで働く人たちはどのような気持ちで犬たちを処分しているのか。私は、飼い犬の死を境に、どうしても自分の目で確かめたくなって現場へ向かった。たどり着いた殺処分の現場では「誰も犬を殺すためにここで働いているわけではない」という悲痛な担当者の声を聞いた。一方で「殺処分ゼロ」のスローガンに潜む危険性を訴える声もあった。この作品は閉鎖的な施設で最後を終えた犬が見たであろう光景を時系列で追っていく。タイトルの「10424」という数字は平成28年度の殺処分数である。

<取材の難航>
この作品を制作するにあたって、犬の殺処分が行われている「動物愛護センター」「動物指導センター」「保健所」など各都道府県に一つはある行政の施設に片っ端から電話をかけていった。どの施設も反応は同じで撮影は許可されず、「昔は撮影など許可していたけど今は日本以外の国からも批判されることもあって許可していない、気持ちは分かるけど理解してくれ」などと言われた施設もあった。そんな中一つだけ施設の名前は公表しないことを前提に、撮影に応じてくれる施設があった。他の施設にも粘り強く交渉した結果、場所の特定を避けるという条件のもと撮影を行うことができた。
最終的に合計4か所の施設から許可が下り、動画の中では各施設の映像を組み合わせてどこの施設かわからないよう構成している。

<殺処分>
 殺処分は案外あっけなく終わる。犬たちが暗いトラックに詰められて、辿り着いたのは、コンクリートと鉄の無機質な空間。たまに置かれるドックフードと水を飲んで、3日から1週間もすると、突然動いた鉄の柵に押し出され、棒で突かれ、小さな鉄のボックスに入れられる。ボックス内部の映像が映ったモニターやシンプルなボタンのある操作室から、二酸化炭素注入のボタンを押す。窒息死したことが確認されると、焼却炉の上までボックスが動き、ボックスの下がバタンと開き、焼却炉へと落ちる。そして数時間焼かれ灰になる。
灰はドラム缶に入れられその後、ゴミ処理場へ運ばれる。生きた証も何もかも、言葉の通りこの世界から消えてしまう。

 いつ死んだのか、いつ焼かれたのか、現場にいても分からない。この作品を作るきっかけになったのが約17年間生きた愛犬が死んだ時、テレビで年間1万頭以上の犬が殺処分されているという事実を聞いて、その現実を受け止められず、理解したいと思ったからだ。実際にその現実を目の当たりにした時、そこには悲しみという感情はなく、ただ淡々とした作業が行われるだけで、焼却炉のゴーっという重低音と遠くから聞こえる犬の声が鳴り響いているだけだった。

<現場からの声>
 私は初め、どうしてこういうことをするのか理解できず、業務を請け負う行政の姿勢に怒りさえ覚えた。しかし、実際の生の声を聞く内にその怒りの矛先をどこへ向ければいいのか分からなくなった。

「誰も犬を殺すためにここで働いているわけではない」
「重度の怪我や凶暴でどうしようもない犬もいることを理解してほしい」

そう話すのは現場で働く職員の方で、どうしても殺処分というネガティブな現実を取材している以上、私に対して「決して私たちは悪者ではない」ということを理解して欲しい気持ちが強く伝わってきた。死ぬまで面倒を見る行政主導のシェルターがない日本で、殺処分業務を請け負うのは行政しかなく、現場のことを理解せずに殺処分ゼロを掲げるトップの姿勢に不満を漏らしている職員もいた。中にはそうした訴えを諦め、ただ淡々と感情を殺して業務を行う職員の姿も見受けられた。
現在多くの施設では二酸化炭素による窒息死がほとんどだが、中には安楽死させて欲しいという批判を受けることもあるようだ。
それに対して

「私たちもできる事ならそうしたいが、一頭ずつ注射を打つことがどれだけ大変なのか分かって欲しい」

と訴えてきた。動物に一切触れずボタン操作一つで多くの命を奪うことが出来るこのやり方は、現場の職員にとっては、“最善”の方法であるのかもしれない。現在の殺処分の仕組みを改めて問う必要があると考える。

 殺処分ゼロを目指したいが、多数の犬を引き取るボランティア団体の負担が増えると、団体の予算と飼育スペースが圧迫され、劣悪環境で飼育され、感染症に苦しむ犬が増える問題が一部で顕在化している。行政主導のシェルターが整わない限り、このような現状をないがしろにはできない。

 こうした日本の現状を知ることが問題解決の第一歩となっていく。しかし、それだけでなく私たち「飼う側」、「売る側」の犬に対する意識が変わらない限り殺処分は減らないのではないだろうか。

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受賞歴

-International Filmmaker Festival of New York
ショートフィルム部門 審査員特別賞
-Media Explorer Challenge Award 2018 入選 (映像展示)
-東京ドキュメンタリー映画祭 2018
など

クレジット

今治建城/Tatsuki Imaji

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