【京都市】輪廻転生をテーマに真のSDGsへの問題提起も。京都市内各地でアートや映像、パフォーマンス
無念なのか、怒りなのか、社会への警鐘なのか、銅板に刻まれた楽譜の一つ一つが歴史を遡り、力強く訴えかけてくるようです。戦時中の1940年に、皇紀2600年を祝うために日本国は奉祝曲と題した演奏会を企画しました。しかし、ベンジャミン・ブリテンの「シンフォニア・ダ・レクイエム」は、当時の社会情勢も背景に、祝賀の場にふさわしくないとして演奏されることはありませんでした。
梶原瑞生さんはその鎮魂歌を銅板アートとして復刻、始まりの章を展示し、「ある国家にふさわしくない楽曲とはどのようなものか、それ等を通じて、国家のアイデンティティーなどについて語りかけたい」と話します。
京都市とアンスティチュ・フランセ関西が毎秋開催するニュイ・ブランシェKYOTOは、パリ市発祥のニュイ・ブランシェ(白夜祭)に着想を得た現代アートの祭典です。11年目を迎える今年は、「HORIZON(オリゾン/展望)」をテーマとして、2021年10月1日に、ギャラリーやアトリエ、シネマ、公共施設、寺社仏閣など40か所で、ビジュアルアート展示やパフォーマンス、映像上映などが開催されました。
展示会など多数の会場の企画が2日以降も一定期間開催されています。その内、堀川寺の内上ルにある「スペースTaTE680」では、10月10日まで、「cycleー転生ー」をテーマに、京都芸術大学大学院グローバルゼミの現代美術作家グループが鋭く社会に訴えかける作品を展示しています。キュレーターとして同ゼミの清田菜央さんが企画しました。
石井潤一郎さんが、最後の一滴まで使われた後、大地から再生するといううるしを採取する様子をドキュメントにした映像作品と、捨てられる筈のうるしの枝に高級うるしを塗ることによって価値を再生し、消費社会への警鐘を鳴らす、おーなりりゅうじさんの作品がコラボ展示されていました。
他にも、日本書紀の神代の章をレースカーテンにしたため、風化によって削られたフォルンフェルスを配し、雨を降らせた今子青佳さんの「天地既剖」は、「かの世」を表します。また、男女の二極化を崩す丸いものをゴーストライトでアップし、魂をオーブに例えた太田恵以さんの作品が展示され、いずれも、ヒンズー教の教えにある輪廻転生の5つのステップ(戦、雨、大地、男、女)を根底に、本当の意味での共生を考えるため、商品化、ブランド化されたと思える現代のSDGsへの問題提起だといいます。
会場となった「スペースTaTE680」は、オーナーの西田勝一さんご夫婦が運営するレンタルスペースです。元々オーナーの鉱物標本収集や絵画の趣味が高じて、イベントスペースを提供できないかから始まり、西陣エリアでの地域活性化に貢献できないかと考え、元織屋さんの築55年の物件を購入したのが始まりです。築年数を重ねた風合いを活かしつつリノベーションされています。
西田さんは、「京都の西陣エリアは、伝統的なお店に加えて個性的なお店が増え、街の魅力が高まりつつあります。イベントの企画者や教室の主催者の方、お気軽に見学またはお問い合わせください。利用者に限らず展覧会やイベント、お店の案内などを置くスペースもあります」と呼び掛けています。
ニュイ・ブランシェKYOTOでは他にも、東山白川の古門前橋の川辺で、比叡山の千日回峰行の行者が渡った阿闍梨橋の風景を再現し、実際に比叡山山ろくの湧水に触れてもらうイベントも。また河原町御池下る香老舗 松栄堂 薫習館では、「あなたが鴨川に橋を架けるなら」をテーマに、川俣正と学生らの模型展示も行われていました。
「スペースTaTE680」 京都市上京区寺之内竪町680 スペースたて680 西田宛 075-432-3145 ジーワンゴルフ内
京都芸術大学院グローバルゼミ 京都・瓜生山キャンパス 京都市左京区北白川瓜生山2-116