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【京都市西京区】玉の輿に乗った桂昌院は稀代の悪女ではなく実は良い人? 徳川将軍の素晴らしき教育ママ!

HOTSUU地域ニュースサイト号外NETライター(京都市)

 境内3万坪の庭園に8千本の色とりどりのあじさいが2023年6月15日に満開を迎えている京都西山の観音霊場「善峯寺」は、徳川幕府5代将軍綱吉の生母となったお玉さん、後の桂昌院と深い縁があります。かつては稀代の悪女と評された桂昌院ですが、最近の研究では、綱吉の評価とともに名将軍を生んだ母として再評価されてきています。

 応仁の乱で焼失した善峯寺の伽藍を再建したのは、桂昌院でした。桂昌院は二条家に仕えた本庄宗正の娘であるとされていますが、本当は京都の八百屋(酒屋とも)仁右衛門の娘で、 その名をお玉といいました。子宝に恵まれない仁右衛門が善峯寺の観音菩薩に願掛けをしたところ、お玉が生まれたと言われており。幼いころ両親に連れられて、何回か善峯寺にお参りしたらしく、のちに献歌を残しています。

 成長して三代将軍家光の側妾お万の方の侍女となり江戸へ下ったお玉は、秋野と名を変えて大奥で 働くようになります。大奥の創始者春日局がスカウトしたとも言われています。真偽はともあれ、やがて家光の寵愛を受けて徳松を安産します。家光の没後は黒髪を落として桂昌院となり、その子、徳松は舘林に封ぜられて綱吉となるのです。 綱吉が五代将軍となり、桂昌院は将軍の御母堂 として江戸城へ迎えられます。「玉の輿」の語源はこの話から来ているとも言われています。

 1999年のNHK大河ドラマ「元禄繚乱」を始め、数々の時代劇に登場する桂昌院。こういった、娯楽時代劇に登場する桂昌院は、「犬公方」と云われた悪将軍・五代徳川綱吉や側用人の柳沢吉保、悪僧とされている隆光と共に、よくないイメージで描かれるようです。しかし、最近の調査では、それらの謂れは、事実に反して後世に作り上げられたものとの再評価がなされています。

 綱吉と共に江戸藩邸に住むことになった桂昌院は随分と子育て熱心で、儒教を始め、綱吉に学問をしっかりと奨励したと言います。桂昌院54歳の時、綱吉が五代将軍に就任。江戸城中三之丸に居を移しました。そのことから三之丸様と呼ばれ、大奥での力は絶大となり、76歳の時、朝廷から従一位の位階を授かります。 1705年(宝永2年)6月22日、79歳、江戸城中で没しますが、芝増上寺に葬られ、善峯寺にも遺髮が納められました。

 桂昌院はこの善峯寺をはじめ、応仁の乱で焼き払われ、再建不可能と言われた数々の大寺院の復興事業や寺院建立など、後世に多大な仏教遺産を残しました。このことが、後に幕府の財政を圧迫させたと言われてきましたが、今日では、今でいう景気刺激、公共投資のようなもので、仏教を中心とした宗教心を柱に庶民文化を建て直すことの必要性を示したもので、むしろ文化的積極財政と評価される見方も進んでいます。

 娯楽時代劇に出てくる、桂昌院や綱吉の権力を象徴する最も有名な話として「生類憐れみの令」があります。綱吉に嫡子がないのを心配した桂昌院が、僧隆光の「殺生を禁じて生き物を大切にすれば子が授かる」との言葉を信じ、綱吉に訴えたことから始まった悪政とされていますが、最近の説では、本来将軍になるはずもない勉学ひとすじの堅物、綱吉が、犬猫動物はもとより人まで試し切りの対象となっていた殺伐とした江戸の世相を憂い、儒教の精神で変革しようとしたもの、日本初の動物愛護令との再評価もなされています。

 わいろ政治で悪の権化と評される柳沢吉保ですが、当時と今とでは価値観が違います。今で言うわいろは、当時は勘定方の帳簿にも記載される正式の財政収入でした。甲府では、その善政が今でも語り継がれています。また僧隆光も東大寺大仏殿の再建に尽力したのを始め、戦乱で失われてきたあまたの寺院の復興に尽力した名僧であったとの評価もなされています。

 実際には、生類憐れみの令で厳罰された例はほとんど見当たらず、綱吉や桂昌院、柳沢吉保、隆光の悪政の評価は、ほとんどが後に、前代の悪評を流布し、今の為政者の権威を高めようとする、六代将軍のブレーンであった新井白石が作り上げた話との説もあります。

 ともあれ、そんな歴史ロマンを感じる善峯寺へ出かけてみてください!

 西国三十三所第二十番札所「善峯寺」(外部リンク)京都市西京区大原野小塩町1372 075-331-0020

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 「YAHOO!ニュース ベストエキスパート2024 地域クリエーター部門 特別賞」を受賞 京都をこよなく愛する地域ニュースサイト号外NETの京都市担当タウンクライヤ―です。四国から大阪の元地方紙記者。観光ガイドをしながら京都時空観光案内2024(観光ガイドのための京都案内マニュアル)全19巻や「やさぐれ坊主京を創る 前田玄以の生涯」(京都文学賞一次審査通過)はじめ、京都を題材にした小説なども執筆しています。

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