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【京都市中京区】新選組結成160周年で賑わう壬生寺は鑑真和上開祖の律宗の寺 壬生狂言はパントマイム?

HOTSUU地域ニュースサイト号外NETライター(京都市)

 京都市と京都市観光協会が主催する「京の夏の旅」(外部リンク)が2023年7月8日(土)~9月30日(土)(各施設によって差異あり)まで今年も始まっています。新選組結成160年&世界遺産をテーマに、壬生寺や前川邸、新徳寺、仁和寺や上賀茂神社など市内9か所で、通常非公開の建築・仏像・庭園などの文化財が期間限定で特別公開されており、どの地域でも好評を博しているようです。

京都市観光協会撮影掲載許可済み
京都市観光協会撮影掲載許可済み

 さて、その一つ壬生寺が、かの鑑真和上が開いた南都六宗の一つの律宗の寺であることは意外と知られていません。律宗というのは京都では珍しい。なぜなら、平城京から長岡京、そして平安京へ遷都する際に、時の桓武天皇は、巨大になりすぎた南都六宗への政治介入を嫌い、洛中への寺院の移転を認めなかったからです。

 南都六宗とは、かつての平城京、今の奈良県にある法相宗、倶舎宗、三論宗、成実宗、律宗、華厳宗という宗派の寺々。ですから、壬生寺の総本山は、奈良の唐招提寺となります。開祖は6回に亘る危険な航海で盲目になりながらも日本に仏教の戒律を伝えた、かの鑑真和上です。

 鑑真和上がやってきた当時の日本は、私度僧といって正式な手続きもなく誰でもが僧侶になれ、租税や課役逃れの出家も少なくなかったと言います。そこに、10人以上の高僧の正式な試験を受け、戒壇院で受戒するなどの秩序をもたらしたのが鑑真和上でした。壬生寺の本堂には、唐招提寺にある国宝の鑑真和上像の「身代わり像」が奉納されています。

京都市観光協会撮影掲載許可済み
京都市観光協会撮影掲載許可済み

 また現存する地蔵菩薩の中では最古級とされ、重要文化財の指定を受けている本尊の「延命地蔵菩薩立像」の傍らには、鎌倉時代に「大念仏狂言」を始めた壬生寺中興の祖と言われる円覚上人像(えんがくしょうにんぞう)が安置されています。「大念仏狂言」とは、経典などに書かれる難しい仏の教えを庶民に分かりやすく説くために身振り手振りの所作で伝える無言劇です。現代で言うパントマイムですね!

 さて、幕末動乱の時代に「壬生浪士隊」、後の「新選組」の屯所となったこの地域で、広大な敷地を有する壬生寺境内は、隊士の兵法訓練所に使用され、武芸や大砲の訓練がおこなわれていました。空砲ですが、大砲の衝撃でお寺の屋根瓦が緩んだり、障子が破れたりといった被害も出たそうで、壬生寺では、「訓練をおとなしいものにしてもらえないか」という嘆願書を提出したそうで、今回はその実物が展観室に展示されています。

 また境内にある壬生塚には、局長近藤勇の胸像や遺髪塔、屯所で暗殺された芹沢鴨と平山五郎の墓や、隊士の合祀墓があります。今年は副長土方歳三の胸像が新たに作られ、7月16日に除幕式がおこなわれました。土方歳三というと断髪して軍服を着た写真をよく目にしますが、今回の像は、若き総髪(髪の毛全体をのばし、後頭部でたばねて後ろに垂らす)姿の土方です。これで、局長の近藤勇と副長の土方歳三の胸像を両方見ることができるようになりました。

 みなさん2023年の夏は、盛り上がる壬生界隈へぜひお越しください!

壬生寺(外部リンク)京都市中京区壬生梛ノ宮町31 (坊城通り四条下る)075-841-3381

地域ニュースサイト号外NETライター(京都市)

 「YAHOO!ニュース ベストエキスパート2024 地域クリエーター部門 特別賞」を受賞 京都をこよなく愛する地域ニュースサイト号外NETの京都市担当タウンクライヤ―です。四国から大阪の元地方紙記者。観光ガイドをしながら京都時空観光案内2024(観光ガイドのための京都案内マニュアル)全19巻や「やさぐれ坊主京を創る 前田玄以の生涯」(京都文学賞一次審査通過)はじめ、京都を題材にした小説なども執筆しています。

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