ショートフィルム

愛する孫に会いたい 1500年の歴史をもつ中国コオロギ相撲の達人の想いとは?

Julia Cheng

ドキュメンタリーディレクター/プロデューサー

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中国の首都・北京にあるリュウ・ユンチアン氏(70)の自宅には、たくさんの外国人観光客が毎日のようにやってくる。胡同(フートン)と呼ばれる旧城内の路地を入ったところにある伝統的な中庭つきの家屋で「コオロギ相撲」を紹介しているのだ。おもしろおかしく紹介するリュウ氏だが、地方に住むたった一人の孫に会うことができない悩みもある。人懐っこい笑顔の裏側に、寂しさを抱えるリュウ氏。彼の姿からは、急速に経済発展する中国で、離れて暮らす家族の姿が見える。まずは動画を見て欲しい。

リュウ・ユンチアン(別名:コオロギのリュウ)は北京で生まれ育った。彼の自宅と中庭は、あらゆる動物であふれている。鳥、ウサギ、ニワトリ、魚、カメ、犬、トカゲ、そしてコオロギである。彼はいつも、この動物たちなしでは自分は生きられないと言っている。

リュウ氏の毎日の「仕事」は、北京の伝統文化を紹介するツアーで自宅にやってくる外国人観光客に、コオロギを闘わせる「コオロギ相撲」(闘蟋:とうしつ)に関するおもしろい話をすることだ。1990年代に初めてリュウ氏の自宅に海外からの団体客がやってきた時、彼はたまたま古くからの友人とコオロギ相撲をやっていた。観光客らがコオロギの試合にとても関心を寄せた為、相撲のルールや伝統文化を解説してほしいとツアーガイドから頼まれた。その日以来20年以上に渡ってリュウ氏はこの「仕事」をほぼ毎日行い、今では北京で最も人気のあるコオロギ相撲の語り手となっている。コオロギ相撲が最も盛んになる季節には、一日に1000人以上の客を迎え入れたこともあった。

その人気のおかげでリュウ氏は有名になり、近年、多くの海外メディアから取材を受けている。彼に関する記事や写真は英語、フランス語、ドイツ語、日本語、韓国語など、様々な雑誌で取り上げられている。
多くの人がうらやむような魅力的でシンプルな暮らしをおくる彼だが、その優しい心の中には、悲しみも潜んでいる。コオロギ相撲や動物に関する語り手として情熱を燃やしているが、かえってその情熱がたった一人の孫との間に距離を生んでしまっているのだ。

<中国におけるコオロギ相撲>
中国の「コオロギ相撲」は、1500年の歴史がある。一方、その歌声を愛でるためのペットとして、コオロギは3200年以上前から飼われていた。他の国々では殺虫剤で撃退されてしまうが、中国では伝統的にコオロギの鳴き声は美しい音楽と考えられてきた。

北京の秋はコオロギ相撲の季節だ。虫の一生は100日前後で、秋はその最盛期である。闘鶏(とうけい)と似ているものの、血は見ないコオロギ相撲では、靴箱ほどのリングに二匹のコオロギが入れられ、どちらがより攻撃的かが競われる。コオロギの飼育や戦いは北京の伝統的な文化だが、移り変わりの激しい現代の北京においては、この伝統も消えつつある。

コオロギ相撲はコオロギの繁殖と訓練から始まる。熱の入ったトレーナーは、将来のチャンピオンが生まれることを期待して、一度に1ダース以上のコオロギを購入することもある。コオロギは寝床と餌場と水入れが備え付けられた特別な壺で飼われる。オスのコオロギは、リラックスできるよう通常戦いの前夜にメスと交尾させられる。

コオロギは厳密な体重測定の後、体重別の階級に分けられ、対戦の組み合わせはくじ引きで決まる。ハンドラーは、戦いの場となる容器の中に入れられたコオロギのひげを藁の棒で刺激し、かぎ針のような形をした頑丈な牙(歯)がむき出しになるまで、苛立たせ攻撃的にさせる。二匹が戦闘態勢に入ると、両者を隔てていた小さな仕切り板が上げられ、激しい戦いが始まる。勝負はたった数秒で決着する。先に戦いから逃げた、または鳴くのをやめた方が負けとなる。どちらかが死ぬまで闘わせることはない。

古くから北京に住む人々がコオロギ相撲に熱狂する理由は数多くある。北京で生まれ育った多くの男たちにとって、それは子供の頃に祖父と遊んだ昔の記憶を思い起こさせるものなのだ。コオロギは負けず嫌いで、闘志にあふれている。そんなポジティブな心意気も人々を魅了している。

クレジット

Original title: "Cricket Liu"
A short film by Julia Cheng

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