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自然農の『持続可能性』【後編】サステナブルな農業とは

かーびー

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本題に入る前に…

前編の記事では『現代農業の光と影』のように、農業の近代化がもたらした功績と、その代償に直面している問題・課題について書きました。

今回は自然農が持つ持続可能性について書くつもりだったのですが、いざ書き上げてみたら…
脱線し気味だし、長いし、小難しくなったので、
『ちょっと読みにくいわー』と言う方は↓こちらの動画をご覧ください。

↑この動画をご覧頂いた上で、もっとかーびーの考えを知りたいと言う方は、
是非続きも読んでみて下さい^^

100年前の慣行農法はみんな持続的だった?

慣行農法というのは、その時代・その地域で広く一般的に行われている農業のやり方を指します。
なので現代日本での慣行農法といえば、機械・農薬・肥料・その他様々な資材を使用した栽培方法を意味していますが、それらが無かった、あるいは普及していなかった100年以上前はどうだったかというと…
そう、『自然農』…と言いたいところですが、どちらかと言えば『有機農法』だったと思います。

(有機農法と自然農・自然栽培の違いはまた今度書く予定です)

サラダの食中毒で化成肥料が広まった!?

日本では古くは鎌倉時代から戦前まで『肥溜め』で醗酵させた人の糞尿を畑の肥料として利用していました。
でも人の排泄物を畑に入れるのは世界的には少数派だったようです。
理由はばっちぃから。…というのは半分冗談ですが、衛生面から忌避されてきたとも考えられます。
戦後にGHQが日本のサラダに人糞の細菌と寄生虫が多数混入していたことを理由に、日本政府に人糞肥料の中止を命じ、日本政府は「寄生虫予防会」を各市町村に作り、人糞肥料から化学肥料へと一大転換が行われたそうです。

(この辺りは化学合成肥料の利権関係も?衛生面を言うならなぜ人糞がダメで家畜糞は良しとされたのか…)

排泄物は資源から廃棄物へ…現代では再び資源へ

このように人の糞尿を畑に入れること自体や、肥溜めからは悪臭と害虫が発生することもあって、戦後日本では肥溜めはなくなっていき、私たちの糞尿は下水処理場で処理されるようになりました。
(下水処理で出る下水汚泥は以前は埋め立て処分されていましたが、現在ではエネルギーや肥料、建築資材などにリサイクル活用されているそうです)

海外の伝統的農法は?

日本では排泄物を再び畑に還すことで地力の低下を防ぎつつ、高収量を実現していましたが、海外の伝統的な農法はどうだったのかを考えてみます。

『焼き畑農業』は実はエコ農法だった!?

焼き畑農業は森を焼いて畑にするというイメージから自然破壊のように思われるかも知れませんが、伝統的なやり方では、森を焼いて数年間農作をして場所を変えるを繰り返して、数十年後に森が再生した頃に再び最初の場所に戻ってくるという数十年サイクルでの農業だそうです。
これは森の多様性を育む上でも有効だと考えられます。森は何百年も経つと極相林という最終形態に落ち着いて安定します。同じような環境には同じような動植物が生息します。環境が変わるとその種類も変わります。つまり色々な環境が増えるほど、色々な生き物が生息することになり、生物多様性は増します。

また、温暖化の一要因とも言われている二酸化炭素についても、森は二酸化炭素を吸収しますが、同時に枯れ葉や枯れ木が生き物によって分解されることで二酸化炭素の発生源にもなります。この吸収量と排出量のバランスが、森が成長している最中は吸収量の方が多くなりますが、極相林に近づくにつれて吸収量と排出量がほぼ同じくらいになるそうです。

このように、森が再生することの出来る規模とスピードで行う焼き畑農業は環境破壊どころか、むしろ生物多様性を高めるのに一役買っている持続的な農業と見ることが出来ます。

問題なのは、その規模とスピードが大きく、速くなりすぎてしまったことです。

各地の伝統的農法はもっともその土地に適した持続的な農法

焼き畑と同様に遊牧や放牧による畜産、酪農を考えてみます。
遊牧といえばモンゴルの遊牧民。モンゴルは緯度が高く、冷涼で雨の少ない乾燥地帯(大陸性ステップ気候)の為、農耕には不向きで、家畜に草を食べさせながら移動をする遊牧になりました。

家畜を介することで、人間が利用出来ない植物資源を利用して肉や乳という食糧に加えて衣類や住居の素材にもなる繊維(毛)も生産し、広大な土地を移動して生活することで乏しい植物資源も枯渇させずに再生産が可能となっていました。
逆に言えば、自然の制約によって人間も家畜も増えすぎずに抑えられてきたと言えます。

現代では、自然の制約を機械・資材の使用という科学技術で克服し、本来は生物の生存に不向きな環境を逆手にとって利用した栽培も行われています。
(乾燥地帯で地下水を大量に汲み上げて栽培するのがその例です。その代償は前回の記事に書いたので省略)

https://creators.yahoo.co.jp/kabi/0100098824

自然農の持続可能性

さて、前編・後編と小難しい話を長々かいてしまいましたが、ここまでが前フリみたいなもので、ようやく本題に入ります!

農薬も肥料も堆肥も、水やりすらもやらずに作物を育てる

自然農のメリットは『無農薬無肥料で安心安全で美味しい』というのが一般的なのですが、もっとも独走的なメリットはそこではありません(農薬も肥料も適正に使う事で安心安全美味しい野菜はできるので)

一番のメリットは、人為的な外部からの資材供給無しで農作物の栽培が可能だということ。
(…堅苦しい表現だなぁ。かんたんに言えば小見出しのとおりです)

そんな事が本当に可能なのか?それを確かめる為に私は自然農をベースにあれこれ実験しながら続けています。その中でわかってきたことは、

①確かに可能だけど、野菜の種類(その地域の気候風土に合っているか)による。
②可能だけど、資材を使う方が生産効率も収穫量も良くなる。

『農業』としては当たり前のことなのですが、
盲点となっているのは『自然界では当たり前のこと』農業では非常識になっていることです。それは

植物も動物も自らの力で育ち、繁栄する

ということ。日本の野山を見れば当然のことですが、誰かが農薬も肥料も水やりもすることなく、草木が育っていますし、美味しい山菜やキノコも生えてきます。食べられる野草もたくさんあるし、天敵がいなくなったことで現代の日本の山はジビエの宝庫となっています。

その当たり前のことが、『生産効率』を重視して換金することが目的の『商業的・工業的』農業になった為に見えなくなってしまったのかもしれません。

以前の記事で書いたとおり、自然農にもデメリットはあります。
それは人間1人当りの労働生産効率と単一作物の栽培効率が悪い、
つまり商業的栽培には不向きなのですが、逆に言えば商業的栽培にしなければ良い
→自給的農業にはピッタリ!ということです。

商業的農業にも自然農を取り入れる、その逆も。

これからの食糧問題を考える上で、生産量の増大よりもまずは分配方法の見直しをすべきだと思うのですが、その話はひとまず置いておくとして…

これからの農業を考える上で、自然農法か慣行農法か、農薬は良いのか悪いのかみたいな白と黒、0か100かみたいな考え方では無く、目的に応じて手段を最適化させる、あるいは手段の為に目的を最適化させることが必要だと思います。

生産効率を高める為に農薬・肥料・資材を使うのですが、それらには経済的なコストが掛るので減らせれば経営的にもメリットとなりますし、削減の為に土作りや栽培時期を工夫するなど、目的の為に手段を最適化させている農家さんは既に多くいらっしゃると思います。

では手段の為に目的を最適化させるというのは?
(手段の目的化は、私自身あまり良い意味では使ってこなかったのですが、意識して使うならアリだなと)
近年、消費者の意識としては健康や環境負荷の点からオーガニック・無農薬・無添加という言葉が注目されていますが、これらは本来生産方法や製造過程での手段の一つです。
無意識のうちに手段が目的化してしまっているのはあまり良くないですが、そこにニーズもあるのでその手段を取るために目的を見直して最適化する。

…まだわかりにくいですね。言い直すと
『本当に望んでいるものと、それほどでもないものを明確にして優先度を付け直す』
これが目的の最適化で、優先度の低いものは省くことで、手段を取るためのコストを減らせるという考え方です。

それが消費者・生産者・流通業者の3者間で共通認識を作ることが出来れば、誰かに無理をさせたり嘘の表示をしてしまうことも減らせて、フェアトレードが実現していくと思います。

具体的に言えば、『完全な無農薬』を求めると販売価格が高くなって沢山売れない。沢山売れなければまとめて生産出来ないので販売価格が高くなってしまうという現状ですが、その需要と供給が最適化できれば3者にとって良い結果になります。

その為の取り組みとして、有機農産物や農薬の使用量、その表示などのガイドラインも作成されていますが、消費者側に十分に広まっていないのが現状で上手く活用出来ていません。ですが、それらがかみ合えば、今よりもっと手軽に有機農産物を買えたり、生産者は有機農産物でも安定した農業経営をしやすくなるはずです。

自然農は商業的農業に不向きで自給的農業ならやれる。…といっても、分業化が進んだ現代では全員が自給的農業をする訳にもいきませんし、現代の人口を支えていけるかも難しい所です。

なので、商業的農業にも自然農のメリットを取り入れると同時に生産効率を最優先する目的を見直して、持続可能性の優先度を高めた農業にシフトしていく必要があると思います。

誰かが儲けて誰かが損をする仕組みではなく、
無駄を省いてみんなで豊かになる為に手段と目的を最適化する。

それができれば農業だけでなく、他の産業や社会が抱える問題課題も解決に向かっていくと思います。


ここまで読んでくださりありがとうございました。
皆様の日々の暮らし、これからの暮らしがより良くなっていくための一助になれたら幸いです。

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