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伝統野菜が消えていく理由

かーびーファームインタープリター/自然農YouTuber

『幻の野菜』

といえば格好良いし、なんか凄そうなんだけど、その実は時代のニーズに合わなくなって育てても採算が合わなくなってしまった野菜。

でもそこにロマンがあるッッ\\\\ ٩( ‘ω’ )و ////

という、個人的趣味で色んな固定種集めて栽培してます(´౪`)笑

こちらは『鹿ヶ谷カボチャ』※ししがたにかぼちゃと読みます。

2021年8月16日撮影@ピースファーム:4月上旬種まき、5月上旬定植でそのままほぼ放置。もちろんいつもの、無農薬無肥料不耕起の畝での栽培です。
2021年8月16日撮影@ピースファーム:4月上旬種まき、5月上旬定植でそのままほぼ放置。もちろんいつもの、無農薬無肥料不耕起の畝での栽培です。

200年前にルーツを持つ京都の伝統野菜。
カボチャを2個重ねたようなヒョウタン型が面白い和カボチャです。

百姓仲間に分けていただいたタネから、いつものほったらかし栽培で出来ていました。
無肥料栽培にも適合する良い子ですね(´・∀・`)

味は日本カボチャらしく甘み少なめタンパクだけど煮崩れしにくいです。
西洋カボチャは水分少なく甘みがあってホクホク、日本カボチャは水分多め甘さ控えめでねっとりと言われますね。ちなみに栄養価はほとんど変わらないみたいです。

ちなみに『日本カボチャ』といっても日本のカボチャという意味ではなく、分類上での呼び方です。例えば、ひょうたん型が可愛い『バターナッツカボチャ』も日本カボチャの種類で、逆に『北海道カボチャ』という品種は西洋カボチャです。
…なんだかこんがらがっちゃいますね笑
英語では、カボチャ類は総称してsquash(スクワッシュ)と言って、
西洋カボチャをWinnter squash、日本カボチャをTropical squash(Japanese squash)、
ペポカボチャをSummer squash、と呼ぶそうです。
実際に栽培してみると、ここ愛知県では西洋カボチャよりも日本カボチャの方が栽培しやすく、それは英語の意味通り、暖地に適している種類だからです。西洋カボチャは冷涼な気候の方が適しているようです。

半分に割って、タネとワタを取り出して(タネはよく洗って干して来年また蒔きます)

火が通りやすいように小さめに切ってだし汁で煮てそのまま味噌汁にします。
5分ほど出汁で煮たところで味見。火は通って柔らかくなりました。
味は、あからさまな甘みは無いものの、ほんのり優しい甘味と奥深い味わいがありました。
滋味深いというやつですね。美味しいカボチャです。

ここのところがポイントなんですよね。

『わかりやすい味』が美味しいとされる現代で…

現代では、食べ物も大量生産大量供給が当たり前になってしまい、味付けは調味料でするもの。
美味しい野菜の基準はいつのまにか『甘さ』が指標になってしまいました。お米もね。

甘さというのはわかりやすく感じやすい美味しさではあります。
濃い味つけや、化学調味料で味をつければ尚のこと。

この鹿ヶ谷カボチャの美味しさは甘さではなく、その繊細な滋味の部分にあって、それを活かすには薄味で料理しなくてはいけません。

そうなると、ちょっと手間と腕前が必要になる。

ましてや、加工食品やコスパ良く作る料理には不向きとなってしまいます。 

その一方で、上手く料理すれば、西洋カボチャにはない上品で滋味深い味わいを感じることができます。

シンプルな料理でもその味を感じられる

そんなことを出来上がったお味噌汁と、自分で育てた無農薬無肥料米に自家製梅干し(梅の採取から自家製)のおにぎりを一緒に食べてまた新たな発見。

梅干しの塩味と酸味で食欲がモリモリ湧いてきて、その後に味噌汁をすすると、味噌の甘みがグッと感じられていっそう美味い。

この甘みは、味噌だけじゃなくてカボチャからも出たものだろうと思います。

シンプルな調理でもその味を感じることが出来る。

濃い味付けから卒業していって、こう言った昔ながらの食材、食べ物を食すとその食べ物の持つ本来の味や香りを楽しむことが出来ます。

とはいえ、市場に流通している食材だとこうはいかないかもしれなくて、そう言った意味で現代ではこの一見粗食な食事が実はとても贅沢なものなのかもしれないなぁと思いながら食べました。

まとめ:伝統野菜はニーズに合っていない?

本文とタイトルがちょいと離れてしまったので最後にまとめで伝統品種が消えていく理由について。

冒頭とこの小見出しにも書いた通り、簡単に言えば現代の大量生産・大量消費、安価な安定流通、という生産から流通、そして消費に至る一連の流れに見合わなくなってしまった野菜達が栽培されなくなっていき姿を消していっている。

それは、栽培して野菜を出荷する農家さんの話だけではなく、タネの生産農家・業者さんにもいえることで、ニーズの無い商品(タネ)は作られなくなっていきます。

現代の市場流通する野菜の多くはF1品種となりました(野菜の種類によってはF1じゃないものがいまだに主力な場合もあります)

タネの生産業者である種苗会社の方が仰っていたのが、

『種苗会社の実力はいかに優秀な新品種を作り出せるか』

というお話で、それはメインのお客さんの生産農家さん達が欲しがる特徴を持った野菜たち。

では農家さん達が育てたい野菜、品種というのは?…簡単に言えば儲かる野菜→売れる野菜。

この売れる野菜というのも、作れば作るほど売れる野菜が大規模農家さんからすればやりやすいわけで、そういった農家さんが生産に集中するために市場があり、『全量買い取り』があるわけです。

そうして出荷された野菜達はスーパーや仲卸業者さんたちを介して私たちの手元や飲食店の料理として届くわけです。

この生産者から消費者までの距離が遠のいてしまったが為に、重視されるようになったのが見た目と価格、均質化です。

伝統野菜はこれらの理由からニーズに合わなくなってしまい、次第に作られなくなりどんどん消えていっているのが現状です。

見直される伝統野菜

しかし、その一方で伝統野菜たちが見直され始めたのも確かです。

それについては、過去に取材したベビーリーフ農家の真野さんのインタビューでも語られていますのでよかったら↓こちらの動画も見てみて下さい。

長くなりましたので、今回はこれにて終わろうと思います。

ここまでお読み下さりありがとうございました。
それではまた次の記事にて。

ファームインタープリター/自然農YouTuber

愛知県西尾市にて自然農を実践してます。 農を切り口にして自然の面白さや大切さを伝える情報発信や体験イベントも行い、 農の楽しさを伝える『ファームインタープリター』を自称してます。 『野菜を売らない百姓』でもあり、 売らなくても良いからこそ自然農にまつわる色々な実験や研究をやって その様子をYouTubeにて発信しています。

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