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コミュニケーションをつなぎとめる――コロナ禍の東京で「ヨタの青空カラオケ」

柿本ケンサク映像作家/写真家


●大阪で撤去された「青空カラオケ」

木崎公隆と山脇弘道が2010年に結成した現代アートユニット「Yotta」。

派手に装飾された「デコトラ」のような焼き芋販売車「金時」で実際に焼き芋を販売したり、高さ12メートルにおよぶバルーン型こけし「花子」を設置したりするなど、日本独自の文化に着目しながら、驚きをもたらす作品を数多く制作してきた。「金時」は、岡本太郎現代芸術賞岡本太郎賞を受賞。表現の場は主に路上で、作品は創作物でもあり行為でもある。

この夏、国内外のアーティストが参加する国際展「水の波紋2021」で「ヨタの青空カラオケ」という作品を展示している。東京・青山にあるワタリウム美術館が主催する「水の波紋2021」。青山地区の複数箇所が会場となり、街の中でアート作品が見られる催しだ。

「青空カラオケ」はかつて、大阪・天王寺の公園裏を不法占拠した屋台で行われていた。木崎と山脇は小さい頃、青空カラオケを見ていた。

「小さい時、天王寺で、違法で営業されていて。たぶん20年くらい続いていたんじゃないかな? 僕らの幼少期、大阪の一つの景色だったんですけど、2004年に強制撤去された。オリンピック誘致に向けて街をきれいにするためだっていわれていたけど、名目としては隣にある動物園のコアラが眠れないからということで」(木崎)

オリンピックが開催された2021年の東京、カラオケも打撃を受けたコロナ禍。青空カラオケのことが頭をよぎった。

「オープンエアで、時間も人数も絞って、東京の街で青空カラオケをしようと思いました。お客さんに1曲ずつ歌ってもらえたら。天王寺の青空カラオケはお酒があったけど、ここでは飲めません」(山脇)

サービスドリンクは、大阪のソウルドリンク・冷やし飴だ。

「普通のカラオケですけど、背景に流れる映像は僕らが作った映像にさし変えています。天王寺の通天閣をモデルに作ったカラオケマシンを、リアカーにのせました。不法占拠していると撤去されるけど、僕らは移動式で」(木崎)

「コロナで人と会うこともリスクが高い状況。オープンエアの空間で少し、コミュニケーションをつなぎとめることができないかな、みたいなことを考えています」(山脇)

クレジット

出演:Yotta(木崎公隆/山脇弘道)
監督:柿本ケンサク
撮影:柿本ケンサク/小山麻美/関森 崇/坂本和久(スパイス)/山田桃子(DP stock)/岩川浩也/飯田修太
撮影助手:荒谷穂波/水島陽介
編集:望月あすか
プロデューサー:金川雄策/初鹿友美 
ライター:塚原沙耶  
Special Thanks:C STUDIO

映像作家/写真家

映像作家・写真家。映画、コマーシャルフィルム、ミュージックビデオを中心に、演出家、映像作家、撮影監督として多くの映像、写真作品を手がける。柿本の作品の多くは、言語化して表現することが不可能だと思われる被写体の体温や熱量、周辺に漂う空気や気温、 時間が凝縮されている。一方、写真家としての活動では、時間と変化をテーマに作品を制作。また対照的に演出することを放棄し、無意識に目の前にある世界の断片を撮り続けている。2021年トライベッカフィルムフェスティバルに正式招待作品に選出。グローバルショーツではグランプリを受賞。ロンドン国際フィルムフェスティバル、ソノマフィルムフェスティバルにて優秀賞受賞。

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