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コロナ禍でなければ、何かが作られていた場所――SIDE COREが空き地で展開するアート

柿本ケンサク映像作家/写真家


●ストリートアートによる自由な空間

新国立競技場から500メートルのところにある空き地で、世代、国籍、バックグラウンドの多様なアーティストが参加する展示「Earth, Jingu-mae, Vacant Lot」が開催されている。

キュレーションしたのは、2012年に活動を開始した「SIDE CORE」。高須咲恵、松下徹、西広太志の3人からなるアーティストチームだ。ストリートカルチャーを切り口に既存の展覧会の枠組みに捉われないプロジェクトを実施し、「風景にノイズを起こす」をテーマとして、都市における表現のあり方を拡張してきた。

今回の展示は、国内外のアーティストが参加する国際展「水の波紋2021」の企画。東京・青山にあるワタリウム美術館が主催するプロジェクトで、青山地区の複数箇所が会場となり、街の中でアート作品が見られる。

展示会場になった空き地について、SIDE COREの松下徹はこう言う。

「なぜ青山の街にぽっかり空き地があるかっていうと、オリンピックに合わせて、もともとあった建物を壊したんだと思うんです。おそらくオリンピックの拠点とか駐車場か何かを作るはずだったんじゃないかな。それがコロナの影響で用途が決まらず、今に至っている」

参加しているのは、BABU、Barry McGee、EVERYDAY HOLIDAY SQUAD、石毛健太、鯰、森田貴宏、TOKYO-ZOMBIEの7組。例えば、鯰の作品「Paradice」について、松下はこう説明する。

「その場所でみんながどう過ごすかを考えていくというような、彫刻作品を制作しているアーティストです。今回展示しているのも、遊具なんだけど遊具として使えないとか、家具のようなんだけど使用用途がないものとか。訪れた人がこの場所に置かれた植物に水をあげたり、差し入れを持ってきたら冷蔵庫に入れられたり。この辺にいる人たちがここに来るようになったらいいな、という作品です」

ストリートスケーターでビデオディレクターの森田貴宏は、「MOVEMENT」と題してスケートボードランプを展示。ここで実際にスケートボードに乗ることもできる。そのほか、サンフランシスコを拠点に活動するBarry McGeeによる秘密基地のような小屋、北九州在住のBABU が石碑のように地面に埋めた絵画、1994年生まれの石毛健太がスーツケースをプランターに仕立てた「Alien Carrier」など、さまざまのアーティストの作品群が、広大なインスタレーションを構成している。

都会の一等地にぽっかりと空いた穴のような空き地。コロナ禍でなければ何かが作られていたこの場所で、フェンスをこえれば自由な空間が広がっている。

クレジット

出演:SIDE CORE(松下徹)/BABU/Barry McGee/EVERYDAY HOLIDAY SQUAD/石毛健太/鯰/森田貴宏
監督:柿本ケンサク
撮影:柿本ケンサク/小山麻美/関森 崇/坂本和久(スパイス)/山田桃子(DP stock)/岩川浩也/飯田修太
撮影助手:荒谷穂波/水島陽介
編集:望月あすか
プロデューサー:金川雄策/初鹿友美 
ライター:塚原沙耶  
Special Thanks:C STUDIO

映像作家/写真家

映像作家・写真家。映画、コマーシャルフィルム、ミュージックビデオを中心に、演出家、映像作家、撮影監督として多くの映像、写真作品を手がける。柿本の作品の多くは、言語化して表現することが不可能だと思われる被写体の体温や熱量、周辺に漂う空気や気温、 時間が凝縮されている。一方、写真家としての活動では、時間と変化をテーマに作品を制作。また対照的に演出することを放棄し、無意識に目の前にある世界の断片を撮り続けている。2021年トライベッカフィルムフェスティバルに正式招待作品に選出。グローバルショーツではグランプリを受賞。ロンドン国際フィルムフェスティバル、ソノマフィルムフェスティバルにて優秀賞受賞。

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