内蔵の町で味わう絶品の十割蕎麦！創業から約170年を数える『林旅館』とは？

横手市増田町に創業から約170年を数える老舗旅館がある。絶品の十割蕎麦を味わえることでも有名な『林旅館』だ。そう、今日の私は蕎麦気分。まだ見ぬ手打ち蕎麦に想いを馳せながら、内蔵の町を目指し車を走らせた。

おお、立派な旅館だ。徳川の時代から続く貫禄が外観からもヒシヒシと伝わってくる。私は風情のある老舗旅館の扉を開けると、玄関でスリッパに履き替え館内へと入った。どうやら1階の大広間が食事処になっているようだ。

大広間に着くと、春の蕎麦を楽しむお客さんで賑わっていた。私が訪れたときはまだ春休み期間中だったため、若い学生の姿もあった。ヤングからシニアまで、世代を超えて愛される手打ち蕎麦。私は隣の学生さんが啜るウマそうな蕎麦をチラ見しながら、卓上の品書きに目をやった。

品書き

せいろ天婦羅蕎麦（おとうし2品付き）：1,500円、せいろ蕎麦：850円、細打ち冷がけ蕎麦：800円、細打ち温がけ蕎麦：800円、細打ち水蕎麦：850円、天婦羅：700円

『そば処はやし』は手打ち蕎麦はもちろん、その時々の季節の味が楽しめる天婦羅も注目。今回私はせいろ天婦羅蕎麦をチョイスしたが、蕎麦本来の素材の味を生かした細打ちの水蕎麦も人気のようだ。

細打ちの麺に広がるふきのとうの香り！老舗旅館のこだわり蕎麦で春をゆく！

せいろ天婦羅蕎麦が到着。おお、これは凄い。メインの蕎麦や天婦羅に加えて、小鉢や漬物、そしてデザートまで付いた贅沢御膳だ。テーブルが華やかになったところで、さっそく春の蕎麦祭りの開幕だ。

ミニ大福の隣に控えているのは、ふきのとうの葉だ。この春の使者と呼ばれる山菜を蕎麦に散らして食べるのが、はやし流。ふきのとうの心地よい香りと苦みが、ふわりと口の中で広がる。手打ちの蕎麦はまるで朝ドラのヒロインのように瑞々しく、喉ごしも抜群。この蕎麦を求めて遠方から訪れるお客さんが多いのも頷ける。

蕎麦を啜りつつ、もうひとつのお楽しみである天婦羅に箸を伸ばす。海老や舞茸といった天婦羅の代表選手はもちろん、人参やサツマイモなど野菜がとにかくウマい。そして注目は、ふきのとうの天婦羅だ。このほろ苦い春の味。子供の頃はあまり得意でなかったが、大人になった今は大好物だ。

広々とした老舗旅館の大広間で、ゆっくりと蕎麦湯を飲みながら過ごす春の昼下がり。ふと周りを見渡すと、他のお客さんたちの満足そうな顔が見えた。

この長きにわたり愛され続ける蕎麦を生み出す秘訣は、地元にある。横手市増田産の玄そばを石臼で挽き、水はお隣東成瀬村の栗駒名水を使用。地元の素材にこだわる大将の思いが絶品の蕎麦を生み、そしてそれが店を訪れる人に愛される。

さて、次回は噂の水蕎麦を食べに来よう。密かにそんなことを思いながら、老舗旅館の立派な廊下にスリッパの音を鳴らす私である。