有福温泉(島根県江津市)は、1350年以上の歴史を誇る山陰地方屈指の名湯。石段の坂道沿いに古い建物が密集する光景は、昭和レトロ風情たっぷり！ 関東の人気温泉地である伊香保温泉とも比較されるほどです。

今回は都会の喧騒から逃れ、心身をリフレッシュするため、有福温泉の温泉街と共同浴場(外湯)をふらりと巡ってきました。古き良き日本が凝縮し、さらには上質の美人湯を堪能できる有福温泉の魅力を、たっぷりとご紹介します！

有福温泉とは？

有福温泉は、聖徳太子の時代(西暦650年頃)に高名な僧侶が発見したとされる古湯。山の斜面を利用し、ひな壇のごとく旅館や民家が密集して立ち並ぶ独特の街並みで、“山陰の伊香保”などと呼ばれる昭和レトロな温泉地です。

温泉の泉質は「アルカリ性単純温泉」。日本各地に点在し、名湯と呼ばれることが多い泉質です。有福温泉の場合は無色透明無味無臭の清澄なお湯ですが、肌触り滑らかな“美人の湯”として古くから知られています。

訪問時の2022年5月現在で、温泉街には2軒の温泉旅館と3軒の共同浴場が営業していました。自然災害やコロナ禍の影響で、温泉地の規模は縮小傾向。しかし流行の和モダンな温泉とは異なり、古き良き日本の情景が、まるでタイムスリップしたかのごとく現存しています。

昭和の原風景に癒される温泉街

最初に、有福温泉へのアクセスを簡単にご説明します。車利用だと、山陰自動車道 江津西ICから約10分。温泉街には2ヶ所の専用無料駐車場があります。また、温泉街から徒歩数分かかりますが第3無料駐車場もあるので、満車で車が停められないという心配は無さそうです。
有福温泉が初めての方でも、駐車場に設置された看板(上写真にある地図)を見れば、道に迷うことは無いでしょう。

公共交通機関だと、JR浜田駅から石見交通バスに乗車し、有福温泉バス停で下車。乗車時間は約30分です。

温泉街は、端から端まで歩いても数分程度。木造の旅館や家屋が、山の斜面に沿って肩を寄せ合うように密集しています。

極細の階段や坂が多いのが有福温泉の特徴。それが伊香保温泉(群馬県渋川市)と比較される理由ですが、伊香保温泉の石段街の様に多くの観光客が行き来し、商店が立ち並ぶ賑やかさはありません。きらびやかに飾られた観光名所ではなく、昭和の原風景がそのまま残された有福温泉は、ふらりと歩いているだけで自然と心が癒されます。

数軒の飲食店等はありますが、特段遊べるスポットがある訳でなく、退屈と思わる方も中にはいらっしゃるかもしれません。しかし、“何もしないことが最高の贅沢”、とでもいうような不思議な魅力に包まれておりました。

3つの共同浴場を一挙紹介！

有福温泉には、誰でも気軽に入れる3つの共同浴場(外湯)があります。せっかく来たなら、山陰屈指の名湯である有福温泉のお風呂に入らないわけにはいきません。
以下、全3ヶ所の共同浴場をご紹介します。

御前湯

「御前湯」は、坂を上った途中にある共同浴場。3つの共同浴場の中では最も規模が大きく、西洋建築風のモダンな外観と相まって、まさに有福温泉のシンボル的存在。
有福温泉が初めての方で、取り合えず1ヶ所はお風呂に入ってみたいという方に、まずはおすすめしたい温泉施設です！

アーチ形の窓が印象的な浴室は、どこか大正ロマン風。湯船の中央から良質のアルカリ性単純温泉が滔々とかけ流されています。浴槽内はやや深めで、温度は3つの共同浴場の中では最も高く、やや熱め(42～45度程)に調整。余分な皮脂を落とすクレンジング効果に優れ、浴後は温もり感が長時間残り続ける良湯。有福温泉の中では最も人気の高い温泉施設です。

さつき湯

さつき湯は、温泉街入口付近にある木造の共同浴場。御前湯とは趣が異なり、どこか家庭的な雰囲気が漂います。

温度は御前湯ほど熱く無く、40度強ほどのジャスト適温。源泉かけ流しの有福温泉の名湯をじっくりと楽しめます。地元の利用者も多いので、外来者は譲り合いの気持ちで入浴を心掛けましょう！

やよい湯

やよい湯は、第2無料駐車場の脇にある共同浴場。3つの共同浴場の中では、最も簡素で地元色濃厚な入浴施設です。浴室は半地下の様に、入口から階段を下りた場所にあります。

やよい湯は、3つの共同浴場の中では最もぬるめ。40度を少し切るくらいの温度です。比較的心臓に負担をかけずにじっくりと浸かれ、ぬるめの温泉がお好みの方におすすめ。しかし、やよい湯も地元の常連客が多い施設。マナーを守って入浴しましょう。